Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年10月17日 No.3427  「投資関連協定に関する提言」を公表 -海外直接投資の推進に向けて質量両面で投資関連協定の充実が必要

経団連は10月15日、「投資関連協定に関する提言」を公表した。世界経済の先行きが不透明ないま、制度面から海外直接投資を促進する環境の整備が喫緊の課題であるとの認識のもと、投資関連協定に盛り込むべき内容、協定を締結すべき相手国・地域等について提言した。

■ はじめに~なぜ投資関連協定が必要か

海外直接投資は、世界経済の健全な発展に貢献している。しかし、2015年以降、世界の海外直接投資フローは減少傾向にあり、昨今の国際情勢の混迷に鑑みれば、この傾向に拍車がかかることが懸念される。海外直接投資を再活性化するためには、投資関連協定を通じ、投資自由化と投資資産保護の両面でレベルの高いルールを形成することが重要である。

■ わが国にとっての投資関連協定の重要性

国際投資によるリターンがわが国における国際収支黒字の大きな源泉であることから、政府は、20年までに100の国・地域を対象とする投資関連協定の署名・発効を目標に交渉を進めており、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)や日EU EPA等、多数成果を上げている。

他方、日中韓投資協定、日露投資協定は、いずれも投資の自由化について定めておらず、TPP(環太平洋パートナーシップ)から離脱した米国やブラジル、南アフリカといったビジネス上の関心が高い国との間に投資関連協定が不在であるなど、質量両面で協定を一層充実させる必要がある。

■ 投資関連協定に盛り込むべき内容

提言の取りまとめにあたり、会員企業を対象に実施したアンケート結果を踏まえ、投資関連協定に盛り込むべき要素を列記した。そのなかでも、とりわけ投資紛争解決は、投資関連協定の実効性を担保するうえで最後の砦となる重要な規定であり、現在、投資家対国家の紛争解決(ISDS)が世界的に活用されている(図表参照)。他方、国連の委員会において、国家の規制権限を重視する方向でのISDS見直しも主張されているほか、EUは、裁判官があらかじめ指定され、かつ二審制の投資裁判所制度(ICS)を推進するなど、新しい動きもある。

ICSIDに付託されたISDSの件数の推移

こうしたなかで海外直接投資を推進する観点から最も重要なことは、投資家が投資受入国を直接相手取り仲裁に訴えることができる制度の堅持であり、紛争解決手段を国家対国家に限定したり、紛争解決の仕組みそのものを否定する動きにくみしてはならない。投資紛争解決の制度が有効に機能するためには、(1)国家のみならず投資家も仲裁人を選定することで、公平性・中立性・独立性を確保すること(2)迅速な仲裁を実現すること(3)公共政策を理由に紛争の付託を排除しないこと(4)判決を確実に執行できること――の4点が必要である。

■ 投資関連協定を締結すべき相手国・地域

提言では、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の早期実現、メルコスール(南米南部共同市場)や南アフリカとのEPA等、ビジネスニーズの高い国・地域との協定を求めている。あわせて、Brexit後の英国との協定や、米国のTPP復帰についても言及している。

【国際経済本部】