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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年1月23日 No.3439 第30回「経団連 Power Up カレッジ」 -「サステナブルな企業経営」/住友商事の中村会長が講演

経団連事業サービス(中西宏明会長)は12月18日、東京・大手町の経団連会館で第30回「経団連 Power Up カレッジ」を開催し、住友商事の中村邦晴会長から講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ 住友・住友商事の歴史

住友の起源は約400年前の初代・住友政友にさかのぼる。その後、住友は四国の別子銅山を中核事業として約300年にわたって経営し、明治期にはいち早く西洋の技術を取り入れて近代化を進めた。その過程で、銅山の周辺事業および課題解決のなかから、林業・化学・重機械・電工など多くの事業を生み出し、現在のグループ19社まで広がっている。その長い歴史のなかで「自利利他公私一如」(自らを利するとともに国家・社会を利する)に代表される住友の事業精神は脈々とグループ各社に受け継がれている。荒廃した別子銅山に植林を続け、元の緑あふれる山に戻したこともその表れといえる。

住友商事はその前身が1919年に設立され、この12月で創立100周年を迎える。現在、当社では、住友の事業精神を踏まえ、優先的に取り組むべき課題を、社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)として特定した。

■ 経営改革と成長戦略の推進

私が社長に就いた2012年当時は基礎収益力の伸びが横ばいであったことから、資源ビジネスを成長ドライバーとして掲げ、米国のシェールガス開発プロジェクトに参画した。ところが、中国経済の減速による資源価格下落などもあり、同プロジェクトから撤退、大きな損失が発生した。さらに、オイルマネーの縮小により鋼管、建機、自動車などの需要も減少し、2014年度には多額の損失を計上した。

そのような背景から、15年から3年間、より高度な経営・組織体制を構築するため、2つの改革に取り組んだ。一つは「ガバナンスと意思決定プロセスの見直し」である。従来の経営会議は各部門のトップが社長に対して活動内容を報告する情報交換の場だったが、これをすべての部門長が議論に参加し、経営上の重要事項についての意思決定を行う機関に改めた。

もう一つは「リスク管理の抜本的見直し・強化」である。まず、部門長の決裁権限額を引き上げることで、決裁の迅速化を図った。それを超える案件は、部門で審議した後、全社レベルの委員会で議論するなど階層を増やし多面的な視点で審議を行うようにした。

あわせて成長戦略も推進し、投資実行後のモニタリング体制見直しなどの収益基盤強化策とキャッシュフロー重視・有利子負債削減などの財務健全性改善策を実施した。

これらの改革により、17年度には連結ベースで過去最高益を更新することができた。

■ サステナブルな経営とは

私は、当社が「永続的に社会から必要とされ、尊敬される企業でありたい」と常々考えている。かつて、私は担当したイタリア車の輸入販売会社を閉鎖せざるを得ず、夢を持って集まった仲間の雇用を守れなかったことがある。全員に再就職先を確保したが、必ずしも幸せそうではなかった。この時、「企業が存続すること」と「仕事に夢を持てること」が表裏一体であり、それがいかに重要であるかを痛感した。

最後に、私がこれまでの経験から学んだ考え方を述べ、講演を締めたい。(1)組織が変化できるか否かは経営者がカギを握っている(2)よい仕事をするには「夢」が必要である(3)正々堂々と向き合えば、仕事は人を幸せにする(4)事業活動を通じてすべてのステークホルダーを「幸せ」にできる企業でありたい(5)だからこそ、企業はサステナブルでなくてはならない――ということである。

【経団連事業サービス】

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