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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年7月9日 No.3460 「コロナ対策を通して見えた日本の医療」について聴く -がんプレシジョン医療研究センターの中村所長が講演/イノベーション委員会企画部会

経団連は6月16日、イノベーション委員会企画部会(江村克己部会長)をオンラインで開催し、がん研究会がんプレシジョン医療研究センターの中村祐輔所長から、「コロナ対策を通して見えた日本の医療」をテーマに説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ AIホスピタルの実装を目指して

コロナ禍で医療の課題が浮き彫りになった。東日本大震災当時、内閣官房の医療イノベーション推進室長として感じた医療の課題はいまも変わっていない。現在は、「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」のプログラムディレクターとして、先端的な医療サービスの提供と医療従事者の負担軽減等を目指している。

プロジェクトでは、大規模な医療データベースをつくりながら、最先端技術を取り入れ、病院のAI化・デジタル化を進めている。例えば、持病を持つ高齢者が新型コロナウイルスの感染を恐れて病院に行かなくなるなか、スマートウオッチによる病状のモニタリングを実施する。また、AIで診断を補助し、病院間でばらつきのある診断の質の維持を目指す。

さらに、看護師は勤務時間の3割をカルテ入力にかけていることから、専門用語も含め口述をテキスト化する技術を開発している。AIアバターによる感染症相談補助システムも開発し、コロナ禍に対応している。ロボットを使えば、医療従事者の被ばく軽減、病棟への薬剤配送もできる。

■ 日本のコロナ対策と今後

日本は新型コロナウイルス感染症による死亡者の数は少ないが、死亡率は比較的高い。また、中東諸国とヨーロッパでは最大100倍近い死亡率の差がある。こうした違いを科学的に知ることが、経済活動の再開を考えるうえで重要となる。

PCR検査が増えなかったのは、大規模解析を行うゲノム医療分野の遅れのツケが回ってきたためである。国内外との人の往来を増やすには、検査体制を充実させなくてはならない。

感染者の検体のウイルスの遺伝子を調べると、多くのことがわかる。例えば、EUにおけるウイルスと遺伝的に近いウイルスが蔓延している地域の死亡率が高い。患者の年代によって死亡率が大きく変わるため、年代別に対策を考えることも大事である。さまざまな要因を総合的に調べる必要がある。

■ 医療用AIプラットフォーム

日本医師会や企業と連携し、画像診断支援等を行う医療用AIプラットフォームの開発を進めている。多くの医師が活用できるようにしていきたい。

多くの人は、AI医療というと、冷淡で機械的なイメージを思い浮かべる。そうではなく、むしろ、AIを使うことで医療従事者が時間のゆとりを確保し、心と心が通い合う医療現場を実現することを目指している。

【産業技術本部】

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