Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年9月10日 No.3467  スタートアップ起点のデジタル化推進を聴く -スタートアップ委員会

経団連は8月5日、スタートアップ委員会(永野毅委員長、高橋誠委員長、出雲充委員長)をオンラインで開催し、デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)の斎藤祐馬社長と木村将之COO、TOUCH TO GOの阿久津智紀社長、SMBCクラウドサインの三嶋英城社長から、デジタル社会変革のあり方についてそれぞれ説明を聴き意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ スタートアップ型経営によるデジタル領域の新規事業開発
(DTVS・斎藤氏、木村氏)

日本経済の成長のため、またコロナ危機により急速に進化するデジタル化への対応のためにも、デジタル領域での新規事業開発が求められる。この領域では、アジャイルな開発体制、機動的な意思決定、柔軟な組織体制の変更等が必要であり、スタートアップのような組織体が適している。大企業のなかでスタートアップ型の経営を行うには、大企業のアセットを活かしながら社内ベンチャーやジョイントベンチャー(JV)を設立し、30代を中心としたデジタルリテラシーが高い人材を社長とし、決裁権を持たせることが重要である。

■ 大企業とスタートアップとのJV事例紹介
(TOUCH TO GO・阿久津氏、SMBCクラウドサイン・三嶋氏)

TOUCH TO GOは、「JR東日本スタートアッププログラム」で採択されたサインポスト社の無人AI決済店舗を事業化するためのJVである。JR東日本のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)から出資を受けたことで、それを資本金として事業投資ができるようになった。また、JVとして親会社から独立することで、人材を直接採用できるようになった。大企業にはチャンスがあれば起業したい人材も多いため、このような形態は受け皿になる。

SMBCクラウドサインは、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)と弁護士ドットコムのJVである。成功のポイントは、大企業側に事業創出する強い意志を持った人材がいるかどうかである。また、社内承認プロセスの違いをはじめとした大企業とスタートアップの文化の違いを協業開始時に共有し、認識の齟齬を減らしたことが挙げられる。弁護士ドットコムの既存事業を拡大するような、1から10への事業開発だったため成功しやすかった。0から1への新規事業開発よりもハードルが低く、大企業とスタートアップの協業方法としては王道のパターンではないかと思われる。

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意見交換では、委員間で、大企業内の新規事業推進にかかわる人材育成の難しさや、ストックオプション等の人材確保に関する制度について共有した。

【産業技術本部】