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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年11月19日 No.3476 コロナ禍における産業の動向について聴く -経済財政委員会企画部会

経団連は10月23日、経済財政委員会企画部会(中島達部会長)をオンラインで開催し、野村證券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストから、コロナ禍におけるわが国の産業動向と今後の見通し等について説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 企業活動「V字回復」の実態

マクロ統計上、コロナショックによる影響は、4-6月期が最悪期で、7-9月期はV字回復の傾向を示しているが、産業によって濃淡がある。自動車やその関連業種は、中国経済の早期回復を背景に、輸出の戻りも早く、急速に回復している。

一方、対個人サービス業や宿泊・飲食サービス業は、感染拡大を避けるため、引き続き人々の行動が抑制されており、依然として厳しい状況にある。

■ 二極化する設備投資

リーマンショック以前は、BRICsをはじめとする新興国の資源を活用した建設需要が旺盛であり、日本でも素材産業を中心に恩恵を受けていた。リーマンショックを境に、新興国の成長は鈍化し、ハイテク産業が成長の牽引役に代わり、さらにコロナ禍によって、この変化は加速している。コロナ禍は、経済・社会を一変させたのではなく、これまで進んできた構造改革を急速に推し進めているととらえるべきである。

企業の投資行動も構造改革の加速を反映している。日銀短観の9月調査では、2020年度のソフトウエアを含む設備投資計画の額(除く土地投資額、全規模・全産業)は前年度比マイナスとなった。しかし、ソフトウエア投資は、例年並みかそれ以上の水準を維持し、研究開発投資も底堅い。厳しい事業環境のなかでも、企業が、DX(デジタルトランスフォーメーション)による事業革新に向けて、積極的に投資する姿勢がうかがえる。

■ 人の動きの変容

携帯電話の位置情報から、コロナ禍で人の動きがどう変化したか考察する。新宿等の都市部の人出は、5月25日に緊急事態宣言が解除された後も、コロナショック前の水準まで回復せず、前年比3割減の状況が続いている。これが都市部の新常態となる可能性がある。一方、箱根や江の島等の関東近郊の観光エリアの人出は、9月の4連休には前年比プラスに転じている。また、東京や大阪での高速道路の利用台数もコロナ前に近い水準に戻っている。感染リスクを避けて自動車による移動が増えており、鉄道や航空等の利用が戻るまでにはさらに時間を要すると見込まれる。

働き方に関して、勤務地の日次データをみると、日本は欧米主要国よりも少ないものの、1割程度は在宅勤務が定着しているとみられる。東京都の調査によると、企業のテレワークの継続・拡大意向は8割を超えているが、テレワークの定着・拡大のために最も必要なこととして、決裁の社内手続きの簡素化を挙げている。政府の進めるペーパーレス、はんこレスの取り組みは、テレワークの定着・拡大に寄与することが期待される。

【経済政策本部】

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