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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月10日 No.3532 人口減少下でも持続的に成長できる社会の構築 -人口問題委員会企画部会

経団連は1月19日、人口問題委員会企画部会(手島恒明部会長)をオンラインで開催した。京都大学大学院経済学研究科の諸富徹教授から、「人口減少下でも持続的に成長できる社会の構築」と題し、人口減少に伴う影響および今後必要な施策について、都市経営の観点から説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 人口減少都市の将来

わが国の人口は今後減少し続け、2050年ごろには1億人を下回る。地方自治体の財政は、現役世代が減少するなかで住民税・固定資産税などの歳入が減少する一方、高齢化に伴う社会保障関係費が増加し続けるため、年々厳しくなる見通しである。

■ 「成熟型都市経営」への戦略

人口減少による影響はすでに地方の県庁所在地で表れている。例えば、宮崎市では中心市街地の面積の約13%が空地となり、ビルの空きフロアも増加している。人口が減ると、行政サービスだけでなく、小売等の民間サービスの提供も難しくなり、住みにくくなっていく。

人口減少による都市のスポンジ化や財政悪化などへの対応が必要とされるなか、コンパクトシティーは、こうした諸課題に対応する「成熟型都市経営」の手法として推進されており、近年は環境保全の観点からも重要となっている。しかし、郊外に居住する住民が、郊外の地価下落や公共施設へのアクセス悪化などを懸念し、都市のコンパクト化に反対する場合が多く、合意形成が難しい。

■ コンパクトシティーの成功事例~富山市から学ぶ

富山市は、コンパクトシティー化に向けて、中心市街地に都市の諸機能を集約しつつ、複数の拠点を設けて、公共交通機関で連結する街づくりを行っている。

その推進にあたって、中心市街地に移住する住民や事業者には助成金を交付した。一方、郊外に住み続ける人向けに、路面電車やバスの乗り継ぎを改善して、中心市街地にアクセスしやすいダイヤを設定した。市長が住民と対話しつつ、これらの施策を講じることで、合意形成を図っている。

その結果、富山市の中心市街地は転入超過となり、住宅建設や百貨店の建て替えなどの民間投資も活発化している。さらに中心市街地の地価が維持され、固定資産税などの税収も確保している。

■ 地方分散・地方創生

東京、大阪などの大都市圏への人口流入が続いている。特に東京・首都圏への一極集中は、災害・パンデミックのリスクが高く、日本経済の多様性の喪失をもたらす。そのうえ出生率が低いため、さらなる人口減少を招いているとの指摘もある。ビジネス等を行ううえでの地理的な多様性を確保し、日本経済の強靱化につなげるため、政府による地方分散政策と、複数の地方拠点経済圏の育成策が必要である。その際、「連携中枢都市圏」のように、都市単独ではなく都市圏域全体で連携し、地域の発展を図るべきである。

【経済政策本部】

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