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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年9月22日 No.3560 感染症パンデミックに備えたSCARDAのワクチン研究開発支援の現状と課題 -危機管理・社会基盤強化委員会企画部会

経団連の危機管理・社会基盤強化委員会企画部会(工藤成生部会長)は、政府の内閣感染症危機管理統括庁や日本版CDC(疾病予防管理センター)設置構想に対する経済界の意見を取りまとめるべく、検討を進めている。9月5日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本医療研究開発機構(AMED)(注1)先進的研究開発戦略センター(SCARDA)(注2)の古賀淳一プロボストから、ワクチン研究開発支援の現状と課題について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ ワクチン開発・生産の課題と政府の対応

かつてわが国では、ワクチンを世界へ供給するほど感染症研究が盛んであったが、公衆衛生の向上に伴い重要性が低下し、関心も薄れていった。加えて、健康な人に接種の副反応が出る可能性があることから、ワクチン忌避なども根強く残っている。現在のワクチンの世界市場は欧米4社の寡占状態にあり、日本企業が入り込むのが難しい状況にある。

こうした背景から、研究機関の機能、人材、産学連携の不足や、戦略的な研究費配分の欠如、リスクマネー供給主体の不足など、ワクチンの研究開発・生産体制において多くの課題が生じている。

これらの解決に向け、政府が2021年6月に策定した「ワクチン開発・生産体制強化戦略」に基づき、戦略性を持った研究費のファンディング機能を強化すべく、SCARDAが設置された。

■ SCARDAによるワクチン開発支援の概要

SCARDAが実施している「ワクチン・新規モダリティ研究開発事業」では、(1)感染症ワクチンの開発(2)ワクチン開発に資する新規モダリティ(創薬手法)の研究開発――に取り組んでいる。「一般公募」は政府が指定する重点感染症等(注3)に対するワクチンの研究開発を対象として常時募集している。複数回の照会やヒアリングを経て支援すべきワクチンを選定し、開発戦略を策定する。また、「特定領域公募」は研究開発ターゲットを特定したうえで実施されている。これまでに一般公募で2件、特定領域公募で2件を採択したが、採択に至らなくても、技術転用が可能な技術、あるいはワクチンの開発を加速する可能性を秘めた技術があるかもしれない。そのような可能性が期待される場合には、個別訪問などにより新たな展開を促すこともある。

また、AMEDに設置された課題評価委員会での審査を踏まえ、フラッグシップ拠点として東京大学が、シナジー拠点・サポート機関として複数の大学や研究所が採択された。

■ 感染症ワクチン開発の現状と課題

新型コロナウイルス感染症の発生前の段階で、日本の感染症関連予算(74億円)は米国(5294億円)の70分の1にすぎない。もちろん、覇権国家米国としてバイオテロ対策や感染症対策に注力しているということはあろうが、中国(2611億円)や英国(283億円)とも大きな開きがあることには危機感を持たなければならないのではないか。

◇◇◇

講演後、ファンディングの判断基準や民間企業のワクチン開発への関わり方等について、活発に意見が交わされた。

(注1)Japan Agency for Medical Research and Development

(注2)Strategic Center of Biomedical Advanced Vaccine Research and Development for Preparedness and Response

(注3)22年7月に開催された厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会)で、「重点感染症」として開発を支援すべきワクチンを決定

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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