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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月24日 No.3568 衛星やロケット技術開発の動向 -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

経団連は11月4日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(山品正勝部会長)の合同会合をオンラインで開催した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の佐野久理事からJAXAの研究開発と宇宙産業基盤の強化に関する取り組みについて、衛星システム技術推進機構(ASTEC)の鈴木隆太事務局長から衛星開発や衛星利用に関する政策・市場・技術の最新動向について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ JAXA・佐野氏

佐野氏

JAXAの研究開発部門は、衛星やロケットのプロジェクトに役立つ研究開発を行っている。JAXAが保持すべき基盤技術の強化と挑戦的な課題に挑む先端的な研究、付加価値の高いミッションと競争力を生み出すシステムの実現を目指す活動から、研究成果を統合したプロジェクトに発展させている。

衛星については、革新衛星技術実証プログラムと小型技術刷新衛星研究開発プログラム(刷新プログラム)に取り組んでいる。どちらのプログラムもイプシロンロケットでの実証を計画している。刷新プログラムでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めることで衛星の開発期間を短縮する。

ロケットについては、革新的将来宇宙輸送プログラムを開始した。2030年ごろにH3ロケットの後継機である基幹ロケット初号機の打ち上げを目指す。民間主導の高頻度往還飛行型の宇宙輸送システムも官民共同で推進していく。

JAXAによる宇宙産業基盤の強化の取り組みは二つある。一つ目は、宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)である。JAXAとベンチャーを含む民間企業が協業し、新事業を創出する。18年から開始し、ロボットや衣食住などの分野で、これまで36件のプロジェクトを実施した。

二つ目は宇宙探査イノベーションハブである。宇宙産業と非宇宙産業が連携して、宇宙探査技術の獲得と地上産業への波及を同時に達成しようとするものである。30年代の月面活動に向けて、例えば建築業界と連携して月面居住施設を開発する。

■ ASTEC・鈴木氏

鈴木氏

ASTECは、衛星システムに関する国内外の技術・市場・政策の動向を調査および分析している。調査分野は、通信、観測、測位などである。

衛星通信について、わが国は10年代中盤まで欧米に対抗できる競争力を有していたが、現在は欧米の企業が商用通信衛星の市場を席巻している。今後、静止軌道、中軌道、低軌道を含むシームレスな利用、衛星と地上のネットワークの融合などの技術開発が必要になる。

衛星観測について、わが国は欧米に比肩する技術レベルを維持してきたが、現在は欧米の民間企業による衛星コンステレーションが実現している。今後、多様な観測データを取得して付加価値のある処理を行い、利用者に迅速に届けるため、情報処理やデータ伝送の高度化などの技術開発が必要である。

衛星測位について、わが国は官主導で準天頂衛星の技術を開発して欧米に比肩してきたが、現在は欧米の民間企業がGPSに依存しない測位システムを開発している。今後は準天頂衛星システムの抗たん性(宇宙システムを継続的かつ安定的に利用できる能力)の強化などの技術を継続的に開発し、民間の測位システムの動向を把握する必要がある。

【産業技術本部】

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