1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2022年11月24日 No.3568
  5. 総合知ワークショップを内閣府と開催

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月24日 No.3568 総合知ワークショップを内閣府と開催

経団連と内閣府は11月1日、「総合知ワークショップ」をオンラインで開催した。2022年3月に政府が取りまとめた「『総合知』の基本的考え方(中間とりまとめ)」、ならびに「総合知」活用の取り組みについて関係者から説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 総合知の基本的考え方と推進方策の紹介
(樋本諭 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局参事官)

総合科学技術・イノベーション会議有識者議員懇談会における検討の結果、「総合知の基本的考え方(中間とりまとめ)」において、総合知とは「多様な『知』が集い、新たな価値を創出する『知の活力』を生むこと」とされた。その活用イメージは、複雑な課題に対して所属する組織の「矩」を超えて多様な知を持ち寄り、ビジョンを形成し、バックキャスト的に課題を整理し、異なる知の連携を取りつつ課題解決が行われ、目指す未来を実現すること、とされている。研究・技術開発の目的がウェルビーイングに移りつつあるなか、わが国の科学技術やイノベーションが世界と伍するためには、総合知の活用により「知の活力」を生むことが不可欠とも述べられている。

今後、この中間とりまとめをもとに、ワークショップやセミナーを通じて、産業界やアカデミアの皆さまと、さらに議論を深めていきたい。総合知の浸透を図るうえでは、総合知を活用した具体的な事例とともに社会に広く発信することが重要と考えている。内閣府ではポータルサイトを開設し、皆さまから広く事例を募っている。

■ 「食と健康の達人」拠点
(吉野正則 日立製作所基礎研究センターシニアプロジェクトマネージャー、
北海道大学COI〈センター・オブ・イノベーション〉拠点長)

北海道岩見沢市と企業約30社と共に、低出生体重児低減を目指して母子健康調査と腸内環境の科学的理解を通じた取り組みを行った結果、低出生体重児の割合が15年から19年にかけて約10%から約6%に改善するという効果が得られた。21年からは少子化克服へのチャレンジをテーマに、研究に取り組んでいる。社会課題と自分課題を共有・共感するコンセプトであり、市民と共に課題をデザインしていく。

■ 人がつながる「移動」イノベーション拠点
(森川高行 名古屋大学未来社会創造機構教授)

名古屋大学COIは、「高齢者が元気になるモビリティ社会」をビジョンに掲げ、大学や企業の枠を超えた人々の協力のもと、社会科学的観点を取り入れた研究開発とその社会実装を進めてきた。その結果、土地利用・交通手段の多様性、移動の能力の高さがウェルビーイングの向上につながることが明らかになった。

(大谷朋広 KDDI総合研究所執行役員副所長)

通信を用いた事業のため、KDDIとして名古屋大学COIに参画したことで、さまざまな主体と共同で研究開発する機会が増えている。

■ 意見交換

社会への総合知の展開について教えてほしいという質問に対し、樋本氏は「大規模なシンポジウムの開催、総合知に関する事例を紹介する動画の公表を検討している。まずは産業界・アカデミアの皆さまと議論を重ねたい」と述べた。

また、総合知は非常に重要であるが手段にすぎないため、手段を主語にした議論をするべきではないという意見に対して、吉野氏から賛同の旨が表明された。樋本氏は「日本では手段であるにもかかわらず目的として議論されることがよくある。この点に注意して取り組みを進めていく」と説明した。

【産業技術本部】

「2022年11月24日 No.3568」一覧はこちら