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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年12月8日 No.3570 医療データ利活用に関する法制度の必要性 -イノベーション委員会ヘルステック戦略検討会

経団連は11月14日、イノベーション委員会ヘルステック戦略検討会をオンラインで開催した。次世代基盤政策研究所の森田朗代表理事から、医療情報に関する法制度の必要性について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ デジタル時代における医療データの利活用の重要性

医療データは非常に重要な情報資源である。医療データを利活用することによって国民の医療と健康管理の質を高めることができる。そのためには、すべての国民について、生まれる前や誕生から死亡までの健康状態のデータを蓄積することが重要である。データを利活用することで最善の治療や健康管理が可能となる。

■ わが国の現状

医療データは利用目的として、患者の治療(1次利用)と、治療の際に生成されたデータを研究等に使うこと(2次利用)が考えられる。両者は密接に関連しており、共通した基盤の上に、それぞれの目的に沿った利用の仕組みを構築すべきである。現状では診療記録と研究データの作成は直結していないほか、母子手帳、学校・職場の健診データ等がつながっていない。

また、共通基盤であるデータとその管理をどのように体系立てるかの議論が非常に少ないなど、データシステムについての総合的、体系的な構想がない。

データをネットワーク等で結合させることによって、非常に大きな価値が生み出される。しかし、わが国では、医療機関の多くが民間であるため、患者情報が医療機関ごとに蓄積されている。加えてデータの保管形式も標準化されていないため、データベース相互の結合が困難となっている。

さらに、データ・ガバナンスに関する制度が未整備という課題もある。データ取得時に本人の同意を過度に重視するがあまり、結果としてデータ利活用が進んでいない。

■ 利活用のための新たな制度の提案

まず、医療データに全国のどこからでもアクセスできる安全で信頼性の高いネットワークの構築とデータ管理の制度が必要である。

また、データ利活用が進まない要因として、医療データの取得や取り扱い等について、さまざまな法律やガイドライン等で定められていることが挙げられる。データ・ガバナンスに関する考え方を整理したうえで、国民の権利を侵害しない限り、医療データの利活用の推進に資する体系的でわかりやすい法制度を制定すべきである。

新たな法制度では、現状のデータ取得時における規制から、利活用時におけるアクセス規制への転換を基本とすべきである。また、1次利用では、治療に必要な場合に本人の同意を基本的に不要とする。一方、2次利用では、具体的な権利侵害のリスクがない限り、原則として、本人の同意なしにその利活用と第三者への提供を認めるべきである。これにより、国民の権利を侵害しないかたちでデータを研究開発や政策立案のために利活用できる仕組みが構築される。

さらに、個人の権利を保護するために、個人情報へのアクセスを厳格に管理する必要がある。そのため、中立的な公的機関を新たに設置し、同機関において、医療データの利活用に関する基準を定めるとともに、データ利用の審査、適正な利用の担保等、各データ管理主体を規制することとすべきである。

【産業技術本部】

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