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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年12月15日 No.3571 「開発協力大綱の改定に関する意見」を公表

開発協力大綱は、わが国の開発協力の理念や重点政策などを定めたものであり、現在、外務省において改定に向けた検討が進められている。そこで、経団連は12月13日、提言「開発協力大綱の改定に関する意見」を公表した。概要は次のとおり。

■ 改定にあたっての基本的考え方

現行大綱が策定された2015年以降、わが国を取り巻く環境は大きく変化した。気候変動、感染症といった地球規模課題の深刻化に加え、各国・地域の格差拡大、経済社会のデジタル化の加速がみられる。また、安全保障環境が厳しさを増し、経済活動にまで影響が拡大している。

これらに対処するためには、サステイナブルな社会の実現を目指すことが重要である。開発協力についても、特にグリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を優先すべきである。また、開発協力を有効活用することによって、わが国の外交力を強化し、国際的な存在感を向上させるとともに、経済安全保障を確保する必要がある。さらに、公的資金を触媒として活用することによって、新しい市場の開拓など、わが国の経済力の強化につなげることが重要である。

わが国の開発協力の現状をみると、新興国の台頭などによって価格面等における優位性は失われつつある。また、厳しい財政状況などを反映して、ODA予算は、ピーク時(1997年)の半分弱にまで減少している。実績でみても対GNI比で0.34%(2021年暫定値)であり、国際的にみても決して高い水準にはない。

■ 改革の方向性=重点課題・地域、実施上の原則・体制など

ODA予算を国際目標である対GNI比0.7%に近づけると同時に、限られた資源を有効に活用するため、明確な戦略に基づき、対象となる分野および国・地域の選択と集中が肝要である。現行大綱の見直しにあたり、「重点課題」「地域別重点方針」「実施上の原則」および「実施体制」について、以下の項目に留意する必要がある。

<重点課題>

第1に、GX・DXの推進、災害への対応、安心・安全の確保、保健・医療・教育等の充実などが必要であり、これらを適切に組み合わせることで相乗効果も期待できる。現行大綱では、これらの課題を分けて記述されているが、「ホスト国・地域の社会課題の解決を通じた持続可能な発展」という観点も加えて再整理する必要がある。

第2に、インフラシステムの海外展開の推進、水素・アンモニアなどのサプライチェーンの構築、資源・エネルギー・食糧の安定供給の確保、サプライチェーンの強靱化などに取り組むことが重要である。こうした課題は現行大綱に十分に盛り込まれていない。また、わが国の外交力・経済力の強化という視点が希薄である。これらについて、改定にあたり十分に留意すべきである。

<地域別重点方針>

自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の理念の具体化に加え、グローバルサウスなどを支援することも不可欠である。権威主義国家が、途上国・地域へ影響力を拡大しようとするなか、わが国が同志国とも連携し、ODAを通じて関係を強化していくことはますます重要になっている。

<実施上の原則>

開発協力のアウトカムの明確化、人材育成やガバナンス支援などソフトインフラの整備、ホスト国や地域に真に必要とされるサステイナブルな開発協力の推進、平和で安全な社会の実現と有事への対応が求められる。

<実施体制>

官民が連携して、プロジェクト横断的に法制度やルールを提案するといったアプローチが効果的である。わが国企業が有する優れた技術を実装に結び付けるには国際標準化を推進する必要がある。

【国際協力本部】

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