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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年12月15日 No.3571 メキシコの政治経済情勢 -福嶌駐メキシコ大使と懇談/第32回日本メキシコ経済協議会結団式

福嶌大使

経団連の日本メキシコ経済委員会(片野坂真哉委員長、倉石誠司委員長)は11月15日、東京・大手町の経団連会館で、11月21日の日本メキシコ経済協議会に先立ち結団式を開催した。在メキシコ日本国大使館の福嶌教輝特命全権大使から、メキシコの政治経済情勢について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 大統領は高い支持率を維持。
ニアショアリングの拡大に期待も

ロペス・オブラドール大統領は2018年7月の大統領選挙で圧勝し、同年12月に左派政権が誕生した。22年に4年目を迎え、大統領支持率は56%と、依然として高水準である。その理由としてメキシコの報道機関は、大統領の誠実さ、リーダーシップ、結果を出す力、人柄等を挙げている。

大統領は内政を優先し、外交は内政不干渉等の原則を掲げつつ、隣国米国や左派政権の中南米諸国との関係を重視している。多くの国際会議等はマルセロ・エブラル外相に任せている。

経済政策については、ペソの為替レートの安定やインフレ抑制に重きを置いており、マクロ的には安定している。就任当初は左派政権への不安感や、トランプ前米国大統領との亀裂によりペソ安になったが、現在は1ドル20ペソ程度で安定している。21年のメキシコの経済成長率は、米国経済の回復に牽引され4.8%であったが、22年は2.1%程度、23年は米国の景気悪化に伴い1.2%に鈍化すると予想される(22年10月時点)。対メキシコ直接投資について、約5割を占める米国が首位、日本は4位である。全体としても堅調であり、電気自動車関連、デジタル関連含めさまざまな投資が発表されている。近年、中国からの投資が増加しており、今後の動向を注視する必要がある。

現在1272社の日系企業がメキシコに進出している。メキシコで事業を展開する利点として、米国との近接性、賃金の安さ、労働力の質の高さが挙げられる。進出数など横ばい状態とはいえ投資先としての魅力は堅持されている。

■ USMCAの紛争解決事案の動向を注視

20年7月に発効した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)はメキシコにおける企業活動に影響を及ぼすものである。USMCAに基づく個別の紛争解決事案の動向を注視する必要がある。

特に日本企業の活動との関わりが大きいものとして、USMCAの自動車原産地規則の解釈が挙げられる。域内貿易で完成車にUSMCAに基づく協定関税を適用する条件をめぐり、メキシコとカナダが米国に対して紛争解決パネルの設置を要請し、8月に公聴会が開催された。最終報告書は近く公開される見込みである。

エネルギー政策についても、米国とカナダの要請により、USMCAに基づく紛争解決に向けた協議が実施されている。ロペス・オブラドール大統領は、ペニャ・ニエト前大統領のもとで進められた電力自由化を批判し、電力公社(CFE)を優遇するべく、CFEの発電割合の増加と民間事業者の発電量の上限設定などを内容とする憲法改正を試みた。この改正案は下院において必要な得票数(3分の2)を得られず否決されたものの、CFEの優遇を認める21年制定の電力産業法(LIE)は存続している。本協議の推移を注視している。

■ 現下の課題および大統領選挙の展望

現政権の今後2年間の優先課題は、選挙制度改革、エネルギー政策、マヤ鉄道等主要インフラプロジェクトの完工等である。メキシコでは24年6月に大統領選挙が実施される予定であり、現時点の世論調査では、約半数が国家再生運動(MORENA)を中心とする与党連合を支持するとの結果が出ている。野党の制度的革命党(PRI)は、長年、地方において牙城を築いてきたが、すでに知事数を大きく減らしている。国内で最も人口が多いメキシコ州の知事選は23年に実施される予定で、大統領選挙の前哨戦として注目される。

【国際協力本部】

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