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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年12月15日 No.3571 「過重労働防止対策セミナー」を開催

経団連は11月14日、「過重労働防止対策セミナー」をオンラインで開催した。同セミナーは政府が定める「過労死等防止啓発月間」にあたる毎年11月に実施しており、今回で5回目を迎える。企業の人事・労務担当者など約240人が参加した。

冒頭、小路明善副会長・労働法規委員長があいさつ。10月26日の「産業殉職者合祀慰霊式」に参列したことに触れ、社員の安全と健康の確保は企業の責務であり、「過労死や過労自殺は絶対にあってはならない」と強調した。

続いて、有識者から問題提起がなされた。政府の「過労死等防止対策推進協議会」の委員である川人博弁護士(川人法律事務所)は、具体的な事案をもとに過重労働とハラスメントの発生要因を解説。そのうえで、経営層の役割として、(1)全社的な長時間労働の是正と並行した個別職場への対策(2)日常的な人員等の余裕の確保(3)ハラスメント行為の背景の究明――等を挙げた。同委員の木下潮音弁護士(第一芙蓉法律事務所)は、労働安全衛生法の規定等から過重労働防止対策の意義や重要性を明らかにするとともに、2021年9月に厚生労働省が改正した「脳・心臓疾患の労災認定基準」を踏まえた対策のポイントとして、長時間労働を必要としない効率的な業務遂行と勤務間インターバルの確保など労働からの解放の重要性を指摘した。「労働政策審議会安全衛生分科会」の委員である増田将史イオングループ総括産業医(イオン)は、同社における労働時間の把握や残業時間の削減、長時間労働者の健康管理に関する取り組みを紹介。過重労働の防止に向けた今後の展望として、(1)時間外労働の削減への注力(2)長時間労働の前段階での面接指導(3)健康診断実施後の事後措置の工夫(労働時間を加味した産業医判定、脳・心臓疾患のリスク評価)――を挙げた。

続いて、労働法規委員会労働法企画部会労働時間制度等検討ワーキング・グループの池田祐一座長の司会のもと、有識者3氏によるパネルディスカッションを行った。過重労働に関する三つのテーマについて、企業に求められる取り組みを中心に、示唆に富んだ議論が展開された。

1点目の「長時間労働」では、顧客や取引先を巻き込んだ組織的な業務量の調整(川人氏)、上司によるマネジメントの徹底と非効率な業務の廃止(木下氏)、時間外労働の実施前に健康を確認する仕組みの導入(増田氏)。2点目の「ハラスメント」では、リーダーシップ研修や階層別のハラスメント防止研修の実施(川人氏、木下氏)、法令に基づくハラスメント防止措置の徹底や加害者も含めた事後対応(増田氏)。3点目の「海外出張者・赴任者」では、治安や気候、文化の違い等の海外勤務者に特有な負担の把握と対策の実施(川人氏)、オンライン面接も活用した海外勤務者への安心できる産業保健サービスの提供(木下氏)、労働者の心身の状況や現地医療事情を踏まえた適正配置の徹底(増田氏)。

その後、3氏は企業の経営層や産業保健スタッフに対して過重労働防止対策の一層の推進を求めた。

最後に、国土交通省の山王一郎建設業適正取引推進指導室長が「建設業の働き方改革に向けた商慣行の是正」をテーマに説明。建設業の持続的な発展に向け、民間工事の受発注者を念頭に、適正な工期の確保と適切な価格転嫁を呼びかけ、セミナーを締めくくった。

【労働法制本部】

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