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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年6月1日 No.3592 新しい資本主義に関する講演会を開催 -新しい資本主義における経営のあり方を聴く

スズキ氏

経団連は4月25日、東京・大手町の経団連会館で新しい資本主義に関する講演会を開催した。早稲田大学商学学術院のスズキトモ教授から「新しい資本主義における経営~株主利益偏重からの脱却に向けて」と題して説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 有配率が高く配当性向も上昇する日本

1991年からの日本経済は「失われた30年」と言われながら、2000年代初めから当期純利益と株主配当が急増した。四半期開示制度や連結決算導入等の「証券・会計ビッグバン」を背景として、従業員給与や設備投資が抑制された一方、株主還元が急増し、持続的発展が阻害されてきた。

成熟経済社会の日本では成長が期待できないため、投資家が資金回収に走る結果、企業から投資家への配当が増え、投資家から企業への投資額が増えないという現象が起きている。それに対し、英国や米国は今後も人口が増え成長すると予想されており、こうした現象は起きていない。配当性向は米国の方が高いが、配当を行っている企業の割合である有配率は米国の4割に対して、日本は9割を超える。米国は成長過程の赤字企業は配当しなくてよい企業文化がある。日本に投資をする投資家の3割は外国人であり、配当利回りが高い企業の場合、外国人投資家の割合が5割を超えるところもある。日本は有配率が高く、配当性向も投資家の要求を受け入れ上昇してきているため、海外に資金が逃げている。コロナ禍において赤字の上場鉄道会社の全社が株主還元を行っていた。これは個々の会社や経営者が悪いわけではなく、それぞれが構造的にどうすることもできない状況に追い込まれているからである。

■ 適正分配経営の推進

こうした状況を打破するため、私が提案しているのが、株主、役員、従業員、事業再投資に対して付加価値を適正分配するための「付加価値分配計算書」を用いた「適正分配経営」である。まずは、自己資本に対する配当率を株主と合意する。これに基づく配当額を超える付加価値増加分は、株主ではなく現金や自社株で従業員や役員に分配すればよい。全業種を対象に、配当を1%減、従業員給与は1割、役員給与は5割増加させる適正分配経営をシミュレーションした結果、事業再投資が約5割増、資産形成を含めた従業員収入が約7割増、政府収入が3割増となることがわかった。企業は適正分配経営を宣言し、ステークホルダーを巻き込んだ協力体制を構築してほしい。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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