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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年1月1日 No.3619 選択的夫婦別姓をめぐる動向と経済的損失 -ダイバーシティ推進委員会企画部会

経団連は12月5日、東京・大手町の経団連会館でダイバーシティ推進委員会企画部会(工藤禎子部会長)を開催した。一般社団法人あすにはの井田奈穂代表理事ならびに青野慶久理事(サイボウズ社長)から、女性活躍を阻害する社会制度の一つとして見直しの機運が高まっている「夫婦同氏制度」をテーマに、「選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓)」をめぐる動向や、旧姓の通称使用にとどまることによる経済的損失等について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。同団体は、当事者団体として選択的夫婦別姓制度の法制化をはじめ、多様性社会の実現を目指して活動を展開している。概要は次のとおり。

■ 選択的夫婦別姓に関する法改正の現在地(井田氏)

井田氏

現行の法律では、日本人同士が婚姻する際には夫婦どちらかの姓に統一する「夫婦同姓」が求められている。選択的夫婦別姓は、そこに「結婚前のそれぞれの姓」という選択肢を追加し、夫婦同姓・別姓を本人の意思で選べる制度である。日本では婚姻後も生まれの姓を名乗ることが伝統だったものの、明治期に「家制度」を法制化したのと同時に、西欧の結婚制度を範とした夫婦同姓を導入した。

選択的夫婦別姓の法制化をめぐっては、市川房江氏の運動を皮切りに、当事者が約50年にわたり声を上げ続けている。1996年には法制審議会が法改正案を答申したが、政治的理由からいまだに国会に法案を上程できずにいる。その間、女性の地位向上の一環として、夫婦同姓としていた国が次々と法改正を行い、夫婦同姓のみしか選択できない国は今や日本だけとなった。国連からも、人権侵害やジェンダー平等といった観点から夫婦同姓の強制を廃止するようたびたび勧告されている。

日本の約95%の夫婦は女性が改姓している。改姓によって過去の研究や成果が同一人物によるものとして認知されない、過去の実績の本人証明が難しく、転職活動時に圧倒的な不利益を被った等、仕事や生活において改姓による不利益に苦しんでいるケースは多い。また、改姓がハードルとなり結婚を諦める人、事実婚や海外での別姓婚を選択する人もいるため、婚姻数の減少、ひいては少子化にもつながっている。こうした課題の解決のためにも、一日も早い法整備が望まれる。

■ 企業経営の足かせとなる旧姓使用問題と経済的損失(青野氏)

青野氏

婚姻後も旧姓を使い続ける「旧姓の通称使用」はすでに多くの企業で浸透している。しかし、例えば多くの金融機関において旧姓が併記された証明書を提示しても、旧姓名義で口座を作ることは認められていない、旧姓の使用者が災害時に新姓で被災者名簿に載っても同一人物と認識されない等、通称では限界がある。

また、旧姓の通称使用は国際社会では通用しない。他国では旧姓使用の概念はなく、国際規格に準拠して作成されているパスポートのICチップには旧姓が記録されない。そのため、パスポートに旧姓が記載されているからといって査証や航空券を旧姓で取得することは難しい。出入国時やホテルのチェックイン時に、予約名とパスポート名が異なるといった理由からトラブルとなるケースもあるなど、旧姓使用はグローバルに活動する人にとって大きな足かせとなっている。

企業や行政にとっても、旧姓・新姓の両方を適切に管理するためのシステム改修と業務体制が別途必要になっており、非効率である。

このように、旧姓の通称使用は、社会・個人に莫大なコストとリスクを背負わせている。姓を変えずに婚姻できる選択肢を作ることで、発生しているコストを大きく低減できるだけでなく、女性活躍のさらなる促進、日本企業の生産性を高めることにつながる。

◇◇◇

説明後、出席者の旧姓使用による実体験に基づいた具体的な不利益や企業が果たすべき役割などについて、活発に意見が交わされた。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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