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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年1月11日 No.3620 日本のコンテンツのさらなる海外展開強化に向けて -クリエイティブエコノミー委員会

シルデ氏

経団連は12月12日、東京・大手町の経団連会館でクリエイティブエコノミー委員会(南場智子委員長、村松俊亮委員長)を開催した。フランスで開催されている日本文化の祭典「Japan Expo」の共同創業者であるトマ・シルデ氏から、主催者として23年にわたりコンテンツ市場の変遷を目の当たりにしてきた経験をもとに、海外からみた日本コンテンツの魅力と現状、今後日本が取り得る海外展開強化のあり方について説明を聴くとともに懇談した。概要は次のとおり。

■ 海外からみた日本コンテンツの魅力と現状

日本のアニメや漫画は、日本文化への憧憬と日本への好奇心を増幅させ、世界的な人気やファンの形成に大きく貢献してきた。しかし近年は、他国の台頭も顕著である。とりわけ日本コンテンツの弱点や抜け穴においてその存在感を示している。さらに、フランスや欧州市場における日本コンテンツの継続的な取り組みが希薄な分野もある。一時的な海外展開の例はあっても、それは国内市場向けのプロモーションであり、海外展開のための長期的な戦略とは言い難い。日本は今でもコンテンツビジネスのグローバルリーダーであることは間違いないが、消費者の関心を引き付け続け、さらなる収益増加と市場拡大につなげるため、岐路に立たされている今こそ、具体的な行動を起こす絶好のチャンスである。

■ 建言~日本が取り組むべき海外展開強化のあり方

日本のコンテンツ産業の強みは、海外で40年来受容されてきた先行性と優位性にある。その強みを発揮し、グローバルリーダーとしての役割を果たすためには三つの施策が重要となる。

一つ目は競合を認め国際的なコラボレーションを積極的に図ることである。他国のさまざまなコンテンツプロデューサーと協働することは、戦略と流行の中心に身を置くことになり、新たなターゲット層へのリーチも可能になる。日本はイニシアチブを発揮し、あらゆる機会に参画することで、世界市場におけるプレゼンスを発揮し続けなければならない。

二つ目はクリエイターやアーティスト、そして流通チャンネルに対して積極的に投資することである。日本の人材と作品のクオリティは非常に高いが、残念ながら、流通の過程を海外のプラットフォーマーに掌握されてしまっている。コンテンツを生み出す「人への投資」と、その流通を自国でコントロールしてこそ、日本企業の収益は最大化され、国際競争力も維持できる。

三つ目はターゲット国の現地ネットワークを信頼し活用することである。現地の企業は、消費者の嗜好や販売・普及方法について知見とネットワークを有しており、高い魅力を持つ日本コンテンツとの関係構築に前向きである。

これら三つの施策が連動すると、好循環が形成される。製品やコンテンツの流通経路をコントロールできれば、憂慮することなくグローバルな協働を促進しやすくなり、海外現地企業の力を頼ることができる。

なお、こうした海外展開には相応の資金が必要となる。日本政府による補助金等の支援制度は積極的に活用すべきであるが、そもそもコンテンツ関連の中小企業は制度自体を知らない、または複雑な手続きに時間を費やせないなどの事情を耳にすることが多々ある。数ある支援制度の窓口の一元化に加え、官民から資金を調達し、民間の取り組みへの各種支援を提供する団体を創設してはどうか。

◇◇◇

「Japan Expo」は2000年から開催されており、近年では25万人以上が訪れる世界最大規模のコンテンツ関連イベントとなっている。それを実現したのは、シルデ氏を含む共同創業者らと世界中のファンの日本文化への強い愛情と情熱のおかげにほかならない。シルデ氏は「私たちはいつでも日本コンテンツをサポートする、そしてコンテンツ市場とフェスティバル活性化のためにも皆さんを必要としている」と心強い言葉で講演を締めくくった。

経団連は、日本コンテンツの海外における潜在的な競争力の高さを実感するとともに、これまで築き上げた地位が脅かされている危機感を改めて認識しつつ、引き続き、23年4月の提言に示した施策の実現に取り組んでいく。

【産業政策本部】

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