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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年2月8日 No.3624 上月 前駐ロシア大使との懇談会を開催 -日本ロシア経済委員会

上月大使

経団連の日本ロシア経済委員会(國分文也委員長)は1月17日、東京・大手町の経団連会館で上月豊久前駐ロシア特命全権大使との懇談会を開催した。ロシアの政治・経済・社会の実情などについて説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ ロシアの内政

今回のウクライナ侵攻についてロシア国内では、西側諸国がロシアに攻めてきたという、ロシア国民の危機感をあおるプロパガンダが行われた。同時に、外国エージェント法を用いて西側メディアを排除するなど、強い言論統制を実施した。結果、ウクライナ侵攻は、ウラジーミル・プーチン大統領の支持を高める格好の手段となった。現在は教育における歴史の歪曲も顕著であり、ロシアでは長期的・根本的な意味での社会の変化が見られる。

■ ロシアの経済

2022年の侵攻後に欧米が実施した経済制裁では、ロシアが国外に有する外貨準備の凍結が最も効果を発揮し、一時的に通貨ルーブルの価値が下落した。しかし、原油価格の上昇やロシアのオリガルヒ(新興財閥)の外国資産がロシア国内に戻った影響もあり、23年のGDPが21年の水準に戻ったように、結果的に、ロシア経済は早期に回復した。一例として、自動車の生産台数は、制裁が導入された22年は前年比60%減となり、制裁の効果があったと思われたものの、23年には元の水準に戻っている。

制裁の結果、ロシアと中国およびグローバル・サウスとの経済関係が強化された。侵攻開始前は外貨取引のうち、米ドルの割合が86%を占めていたが、23年には米ドルが41%、人民元が44%となった。この人民元の割合は、今後さらに高まると考えている。

■ ロシアの外政

ウクライナ侵攻によって西側諸国との関係がより悪化した結果、経済面のみならず、ロシアの外政も東方転換が行われた。侵攻後にセルゲイ・ラブロフ外務大臣が行った366回の会談(オンライン含む)のうち、西側諸国との会談は20回(5%)にすぎない。ロシアは特に、グローバル・サウスへ積極的にアプローチしており、日本や西側諸国も同様の働きかけが重要であると考える。日ASEAN友好協力50周年事業が成功を収めたことは、アプローチとしても大変有効だったと思われる。

■ 今後日本に求められること

今の状態で戦争を終わらせるわけにはいかない。ウクライナが領土を取り戻す方向に戦況を進めるためにも、西側諸国の支援の継続が求められる。

加えて、ロシア政権の「内向き化」は国家レベルで定着しつつあり、外国と付き合わずとも問題ないという世論を作り上げようとしている。しかし、ロシア国内の日本に対する関心は依然高いと考えている。ロシアを内向きにさせないためにも、関与し続けることが非常に重要である。

【国際経済本部】

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