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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年2月22日 No.3626 国土強靱化に関するシンポジウムを開催

経団連は1月31日、東京・大手町の経団連会館で「国土強靱化に関するシンポジウム」を開催した。わが国はさまざまな災害リスクを抱え、災害に関する知識や経験を多く有している。同シンポジウムでは、こうした知見を、国民一人ひとりが「災害を自分事化」し、実効性のある備えにつなげるための示唆を得た。

冒頭、渡邉健二危機管理・社会基盤強化委員長があいさつ。1月1日に発生した能登半島地震で亡くなった方へ哀悼の誠を捧げ、被災者へのお見舞いを述べた。また、幹線道路の寸断などにより被災地への支援物資の輸送に時間がかかっている状況に鑑み、半島における物流の難しさに触れつつ、海からのアプローチを本格的に検討することが重要であること、今回の災害から得た教訓を生かすべきことを訴えた。

■ 講演

続いて、名古屋大学の福和伸夫名誉教授、防災コンソーシアムCORE事務局の川谷篤史氏、内閣府の杉田牧子政策統括官(防災担当)付参事官(調査・企画担当)付参事官補佐および田中寿彦同(防災計画担当)付参事官補佐が、それぞれ講演した。各講演の概要は次のとおり。

1.「国難級災害に備える~防災対策の意識改革」(福和氏)

日本がこれまで経験してきた戦争などの社会的史実と、地震、津波、火山噴火などの過去の大きな自然災害は密接に関わり合っている。歴史的な観点からわれわれが直面している状況を大局的にとらえると、社会を守るうえで、自然災害への備えが重要であることが分かる。また、地震の種類によって発災時の危険度が違う。実は能登半島地震では、関東平野、濃尾平野、大阪平野といった地域において、高層ビルが苦手とする長周期地震動が大きくなっている。また、安定した地盤の江戸城や大阪城よりも外側の沖積低地にある市街地では、一般の耐震基準以上の建物の耐震対策をすることが国難級災害における被害を減らすことにつながる。

能登半島地震で浮き彫りになった課題は、現在南海トラフ巨大地震対策として検討している内容と重複も多い。災害時の被害を少しでも減らすために、いかに事前に準備をしておくことが重要かがあらためて実証された災害である。

2.「防災コンソーシアム『CORE』の目指すもの」(川谷氏)

防災コンソーシアムCOREは、防災4要素((1)現状把握(2)対策実行(3)避難〈被害軽減〉(4)生活再建)において、各参加法人が有するケイパビリティ(capability、組織的な能力)を生かし、強靱な社会の構築を目指している。活動を通じて、被害の低減のみならず、防災分野における新しいビジネスモデルやビジネス機会を創出し、防災ビジネスの海外展開を目指している。

3.「大規模地震に伴う帰宅困難者対策の意義」「事業継続ガイドラインの改定と企業BCPの普及・啓発」(杉田氏、田中氏)

能登半島地震では、初動支援の弊害の多くは自然環境的要因であった。これに対し、首都直下地震などの都市型災害において、初動対応を阻害する一因は群衆であるが、人為的要因である限り防ぐことはできる。これが帰宅困難者対策である。企業等はわが国の経済機能維持の担い手であるが、従業員等が一斉帰宅をすれば、初動応急を妨げる立場にもなり得る。発災時の従業員等の適切な行動を、指針として各企業のBCPのなかに定めてほしい。

内閣府では企業を取り巻く環境変化を踏まえ、2023年3月に「事業継続ガイドライン」を改定。この「事業継続ガイドライン」を起点に、企業の防災対策・事業継続強化に向けた簡易パンフレット等を活用しながら、企業、組織へのBCP普及促進に取り組んでいく。

■ パネルディスカッション「事前復興の推進」

講演後のパネルディスカッションでは、経団連の永野毅副会長/危機管理・社会基盤強化委員長、東京都立大学の中林一樹名誉教授(明治大学研究推進員)、日建設計総合研究所の川除隆広執行役員が登壇。危機管理・社会基盤強化委員会の工藤成生企画部会長の司会のもと活発な議論が交わされた。主な発言は次のとおり。

(永野副会長)

人口減少時代・災害多発時代において、保険会社は、保険の引き受けにとどまらず、災害リスクの高いエリアを周知し、移動を促すといったリスクコミュニケーションを通じて、災害リスクの総量を減らす仕掛け作りに取り組む。政府には、自然災害から国民の命と暮らしを守る「国家ビジョン」を求める。

(中林氏)

国難級災害に対する事前復興として、政府は首都機能問題など復興ビジョンの検討と公開を行うことが重要である。三大都市圏では、都府県境を越えた広域大都市圏としての防災・災害対応の連携と復興ビジョンの共有、復興マニュアルの調整を図る必要がある。

(川除氏)

官民が連携しながら、交通ネットワークやライフライン老朽化への対策などのハード対策、互助の視点での自治体のデータのバックアップ支援体制の構築などのソフト対策の両面に取り組むことが重要である。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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