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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年2月29日 No.3627 文科省の宇宙分野における研究開発への取り組み -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

上田氏

経団連は2月7日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会の企画部会(佐藤智典部会長)と宇宙利用部会(山品正勝部会長)の合同会合を開催した。文部科学省研究開発局の上田光幸宇宙開発利用課長から、同省の宇宙分野における研究開発への取り組みについて説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ JAXA基金の創設

2023年11月に閣議決定した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」で宇宙航空研究開発機構(JAXA)に10年間の基金を設置することが明記された。これを受けて、23年度補正予算4609億円から、同基金の当面の事業開始に必要な経費として3000億円を手当てするとともに、24年度の宇宙関係予算に8945億円を計上している。基金は24年度から開始し、総額1兆円規模の支援を行う予定である。

基金の支援分野は、(1)輸送(2)軌道上サービスを含む衛星等(3)ポストISS(国際宇宙ステーション)を含む探査等――の三つである。技術開発としては、商業化や社会課題解決の支援、革新的な将来技術の創出に向けたフロンティア支援がある。現在、政府で検討中の宇宙技術戦略に記載される技術を参照しつつ、基金の支援を受けるテーマを検討すると予想される。

従来の宇宙プロジェクトは主にJAXAが主導権と責任を持って進めてきた。一方、基金では、受託者となる企業や大学、ベンチャー等が基本設計審査等を自ら実施するなど、主体性を発揮してもらうことになる。JAXAは伴走役としてアドバイスを行うなど手厚くフォローするので、非宇宙分野の企業を含めて多くのプレーヤーに宇宙事業へ参画してもらいたい。

■ ロケット開発

23年10月にH3ロケット打ち上げ失敗の原因究明結果がまとめられ、生じた可能性のある三つの失敗シナリオそれぞれに対策を講じている。また、失敗の原因に直接は関わらないが、原因究明の途上で信頼性向上に資する改善点も三つほど見つかった。イプシロンSロケットについても打ち上げ失敗の直接的な原因究明が終わったことから、次回の打ち上げに向けた開発が進められている。

■ 宇宙科学・探査

24年1月、小型月着陸実証機SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)が無事に月面着陸した。降下時の高度50メートル時点で目標地点からの精度は10メートル以下、恐らく3~4メートル程度と非常に良好な結果が得られている。SLIMは三菱電機が全体のシステム開発を担当しており、日本初の月面探査ロボットであるLEV-1とLEV-2(SORA-Q)が搭載されていた。タカラトミーやソニーグループ等が製作したLEV-2は、着陸したSLIMを撮影し、その写真をLEV-1を介して地球に送信することにも成功している。また、SLIMは、クレーターが生じた時に四方八方に飛び散ったとされるかんらん石の可能性がある対象をマルチバンド分光カメラで撮影しており、取得した科学データをもとに研究が進んでいる。

■ 契約制度の見直し

衛星開発プロジェクト等において、基本設計以降の契約はこれまで請負を原則としてきた。官民の適切なリスク分担の観点から、プロジェクトの難易度やリスク等に応じた契約へと見直す。これまで民間企業等がJAXAから受託する新規の衛星プロジェクト等の契約では、物価・部材の著しい高騰、為替変動などを勘案してきた。今後の新しい契約制度では防衛産業の取り組みを参考に、契約の履行期間に応じて1~5%の「コスト変動調整率」をさらに計上することとなった。今夏の概算要求に向け、引き続き契約制度の見直しを検討していく。

【産業技術本部】

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