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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年4月17日 No.3680 日本のスタートアップエコシステムに対する国際的な分析と課題 -スタートアップ委員会企画部会/スタートアップ・ゲノム幹部と懇談

左からペンゼル氏、齊藤部会長、西口氏、ジャクソン氏

経団連と政府は、提言「スタートアップ躍進ビジョン」で掲げた2027年までにスタートアップの数・成功のレベルを共に10倍にするという目標「10X10X」を共有している。24年6月に米国のStartup Genome(スタートアップ・ゲノム)が公表した世界のスタートアップエコシステムランキング(GSER)において、東京は前回(23年)から五つ順位を上げて10位となるなど、官民の活動が結果として表れ始めている。

同社では、前述の「都市別」のランキングのほか、G20の依頼を受けて「国別」のエコシステムに関する報告書を取りまとめている。

そこで経団連は3月19日、スタートアップ委員会企画部会(齊藤昇部会長)を東京・大手町の経団連会館で開催し、スタートアップ・ゲノムのマーク・ペンゼル創業者兼社長、マイク・ジャクソン チーフプログラムオフィサー、スタートアップ・ゲノム・ジャパンの西口尚宏代表取締役から、日本に対する分析と課題について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 国外進出の加速

グローバル化は、世界各国のエコシステムに共通する最大の課題である。自国市場での成長と国外進出は全く異なる課題であり、アジア各国やイスラエル、スウェーデン、エストニアなど、国内経済規模が比較的小さい国のスタートアップの方が国外進出のスピードが速い。

対する日本やドイツは相応の国内市場があるが故に、国内市場向けにソリューションを開発する結果、成長余地が限定的となっており、スタートアップの国外進出による成長が必要である。

スタートアップは米国をはじめ世界の投資家や顧客とつながることで成長する。そのため言語は重要であり、長期的な課題として認識すべきである。

■ ユニコーン創出の重要性

スタートアップ・ゲノムでは、スタートアップのイグジットと評価額によってエコシステムの価値を評価している。22年まで東京と韓国・ソウルは僅差だったが、韓国は、国・自治体のレベルで積極的な投資が行われたことで成長が加速し、劇的にユニコーン数が増加した。日本と韓国でスタートアップの社数や人材の質に大きな差があるわけではないが、韓国のスタートアップは日本よりもグローバル化に成功した結果である。

ユニコーンが生まれると、海外投資家だけでなくこれからエコシステムに参入する起業家の注目も集めることになる。このように次世代が育成されることの影響を過小評価すべきでない。次世代への刺激になり大躍進につながることからも、グローバル化に取り組み、ユニコーンを生み出すことは重要である。

■ エコシステム変革に必要な施策

G20各国で比較した際、日本はイノベーションの潜在力は高いにもかかわらず、エコシステム指数(競争力の高い企業をいかに生み出しているかを示すスコア)は他国よりも低い。米英はこのスコアが飛び抜けて高く、平均値付近に韓国やフランスが位置する。日本はイノベーションの潜在力が高いため、大きな社会的・経済的インパクトを生み出すポテンシャルを秘めている。

スタートアップという経済活動が世界中で活発であるため、人材の流動化も加速している。海外人材を呼び込み、国際的な文化と日本文化の融合型で世界市場を目指すなど、日本人が刺激を受け、彼らの工夫から学ぶ新しいモデルを目指すことも可能ではないか。

エコシステムにおける成功の最終目的とは、「グローバルカテゴリーリーダー」を生み出すことである。スタートアップの数を増やすことも重要だが、あくまで質を上げることにこだわることが必要である。グローバルカテゴリーリーダーになり得る企業とはユニコーンであり、目指す目標を明確にして施策を展開すべきである。

【産業技術本部】

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