
渡辺氏
経団連は3月26日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会企画部会(大内政太部会長)を開催した。法務省民事局の渡辺諭参事官(当時)から、会社法改正に向けた検討状況について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
会社法は、2019年に改正されてから5年が経過し、国内外の情勢変化に伴い、課題の検討が必要な時期に来ている。政府の「規制改革実施計画」(24年6月)等においても、具体的な検討課題が指摘されている。
そこで、法務省が参加する商事法務研究会「会社法制研究会」において、24年9月~25年2月の間、会社法改正に向けた論点整理が行われた。近日中に同研究会の報告書が公表される予定である(注)。
25年2月には、法務大臣から法制審議会に対し、会社法改正に係る諮問がなされた。4月以降、会社法制(株式・株主総会等関係)部会において審議が行われる。
同部会で検討される事項(諮問事項)は次の三つであり、これらに関連する論点についての会社法制研究会における検討状況は次のとおりである。
■ 株式の発行のあり方
19年改正で創設された取締役等への株式無償交付の制度について、対象を従業員等に拡大することが検討されている。主な論点は、(1)いかに既存の株主の利益を保護するか(2)対象者に子会社の役職員を含めるか――である。
また、19年改正で株式対価M&Aの手法として創設された株式交付制度についても、子会社株式の追加取得、外国会社の子会社化などへの適用範囲の拡大が検討されている。反対株主の株式買取請求権を認めないものとすることや債権者保護手続の廃止も論点となっている。
現物出資規制については、検査役調査を要する範囲の見直しや、引受人などの不足額塡補責任の緩和が検討されている。
■ 株主総会のあり方
現行会社法上はバーチャルオンリー株主総会の開催は認められていないが、21年産業競争力強化法改正により、一定の要件を満たした上場会社に、バーチャルオンリー株主総会の開催を認める特例が設けられた。現在の実務のニーズを踏まえ、非上場会社も含めて、会社法にバーチャル株主総会に関する規律を設けることが検討されている。具体的には、通信障害が生じた場合の株主総会決議の取り消しの訴えの特則(例えば、故意または重過失によって通信障害が発生したときに限り株主総会決議取消事由になるものとすること)が検討されている。また、社債権者集会についても、バーチャル株主総会に関する規律と同様の規律を設けることが検討されている。
株式会社がいわゆる実質株主(株主名簿上の株主に対する議決権指図権限等を有する者)を確認するための制度の創設も検討されている。主な論点は、回答を怠った者に対する制裁(例えば、過料にとどまらず議決権の停止まで認められるかなど)である。関連して、制度の趣旨、実質株主の範囲なども論点となっている。
さらに、株主総会の合理化を図る観点から、事前の議決権行使によって株主総会の決議があったものと見なす制度の創設や、株主提案権の議決権数要件の見直しなども論点に挙がっている。
■ 企業統治のあり方
指名委員会等設置会社において、取締役の一部のみで構成される指名委員会のみが取締役の選任に関する議案の内容を決定する権限を有することは、特に取締役の過半数が社外取締役である場合には合理性が乏しいとの指摘を踏まえ、指名委員会等設置会社制度を見直すことについて、検討されている。
(注)報告書は4月10日に公表された
【経済基盤本部】