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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年7月3日 No.3689 SDGsおよびビヨンドSDGsの動向と日本企業への期待 -企業行動・SDGs委員会/企画部会

蟹江氏

経団連は6月5日、東京・大手町の経団連会館で、企業行動・SDGs委員会(西澤敬二委員長、秋池玲子委員長、眞鍋淳委員長)および同企画部会(清水郁輔部会長)の合同会合を開催した。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授から、SDGsおよびビヨンドSDGsを巡る動向と日本企業への期待について、説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 危機的状況にあるSDGs達成

気候変動や戦争の影響により、SDGsのターゲットの多くが停滞または後退状態にあり、2024年時点のSDGsの目標達成度は17%にとどまっている。エネルギー消費を抑制しながら水や食料等のライフラインへのアクセスを確保するという、「狭い道」をいかに進むかが、プラネタリーバウンダリー(地球の限界)に対応するうえでの大きな課題である。

日本政府は25年、4年ぶり3回目となるSDGsに関する自発的国家レビュー(Voluntary National Review, VNR)を実施する(注)。各ステークホルダーの具体的な取り組みと評価にかなりの分量を割いており、政府による自己評価と併せて確認することにより、日本のSDGsの取り組みの全体像を理解できる。

■ 変革の必要性

SDGsは社会の変革を促すものである。国連の「持続可能な開発に関するグローバル・レポート2023」によると、「変革」には大きく萌芽期、加速期、安定期の三つの段階がある。特に加速期において、(1)ガバナンス(2)経済と資金(3)行動変容(4)科学技術(5)能力構築――をてこにどう変革を生み出していくかが重要になる。

変革を起こすうえで必要な行動は、見える化(計測)である。すでに、世界ではサステナビリティに関する情報開示が進んでいる。計測により、あるべき姿と現状とのギャップが明らかになり、取り組みが加速される。また、自らが行動するとともに、基準や認証制度の設定・活用によって仲間づくりを進めることも重要である。

■ 30年以降の議論と日本企業への期待

24年9月の国連未来サミットの報告書「未来のための協定」において、30年以降のアジェンダの議論を27年から開始することが公表された。

国際的な科学誌では、SDGsの目標年を延長すべきという意見や、都市や企業に具体的ターゲットを設定すべきという主張などが見られる。GDPを補完し、あるいは超える「ビヨンドGDP」指標の開発に関する議論も展開されている。これは、SDGsの先にある世界的な成長や開発の方針を定めるうえで非常に重要な指標になる。

SDGsの先を見据えた「ビヨンドSDGs」に関わる議論は、現在、欧州を中心に始まりつつある。SDGs誕生以降、日本は後追いで対応してきたが、30年以降は、日本が未来の世界を形づくる大きなチャンスである。経済界・企業の皆さまには、ビヨンドSDGsのビジネススタンダード構築に向けて変革を加速するとともに、国際的な議論に積極的に貢献してもらいたい。

(注)6月10日、SDGs推進本部会合で報告書を決定済み

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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