
フォン・デア・ライエン氏(左)と筒井会長
経団連(筒井義信会長)は7月23日、東京・大手町の経団連会館で、欧州委員会のウァズラ・フォン・デア・ライエン委員長との懇談会を開催した。経団連からは筒井会長をはじめ副会長、ヨーロッパ地域委員長ら12人が出席。現下の国際情勢への対応や日EU間で協力を深化させる方策等について意見交換した。概要は次のとおり。
冒頭、筒井会長は、「自由で開かれた国際秩序が大きく揺らいでいる。今こそ、自由、民主主義や法の支配を重視する日本とEUが協力を深めるべきとき」と指摘。そのうえで「経団連として、その一翼を担っていく決意」と表明した。
加えて、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)の拡大・深化や世界貿易機関(WTO)改革の重要性を訴えた。重要鉱物等のサプライチェーンの強靭化等で日EUが協力を深めることにも期待を示した。
続いてフォン・デア・ライエン氏は、地政学的な緊張や貿易に対する圧力が高まるなかにおいてこそ、日本とEUが協力を深めることが重要と述べた。
2019年に日EU経済連携協定(EPA)が発効してから貿易量が2割増加したものの、衛生植物検疫措置(SPS)や公開入札等でさらなる協力の余地があるとも指摘。日EU競争力アライアンスのもとでの研究開発を含む戦略的分野で協力を進め、重要鉱物のサプライチェーンの強靭化およびデジタル技術、クリーン技術分野で協力したいと発言した。
意見交換では、経団連側から、CPTPPとEUとの連携強化を大いに歓迎する、重要鉱物のサプライチェーンについて価格以外の要素も評価されるよう日EUが協調することが必要、との意見が出された。
これに対しフォン・デア・ライエン氏は、EUはCPTPPに関して構造的な協力を進めることでルールに基づく自由貿易が機能することを示したい、と言及した。
経団連側からは、EUが進める競争力強化や規制の簡素化に期待が表明されるとともに、ホライゾン・ヨーロッパ(注1)への日本の準参加に関する交渉が行われていることを歓迎する意見が出された。
フォン・デア・ライエン氏は、50年カーボンニュートラル(CN)という目標は維持しつつも企業の予見可能性と競争力を確保するために主要な産業と意見交換を実施しており規制の簡素化を進めている、欧州委員会は次期多年次財政枠組み(注2)ではホライゾン・ヨーロッパの予算を1750億ユーロに倍増することを提案しており、日本の準参加を期待している、と回答した。
経団連側から、25年の訪欧ミッションでベルギー・ブリュッセルを訪問する予定であり、再び意見交換したいと要請。フォン・デア・ライエン氏は、都合が付けばまた意見交換したいと回答した。
(注1)EUの研究・イノベーションプログラム
(注2)7年間の財政計画。期間は28~34年
【国際経済本部】