1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2025年11月13日 No.3705
  5. HR分野におけるAI活用

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年11月13日 No.3705 HR分野におけるAI活用 -労働法規委員会国際労働部会

野澤氏

小荷田氏

経団連は10月2日、東京・大手町の経団連会館で労働法規委員会国際労働部会(市村彰浩部会長)を開催した。ZENKIGENの野澤比日樹代表取締役CEO、小荷田成尭執行役員harutaka事業本部長から、HR(人材)分野におけるAI活用について、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 熟達面接官の特長をAIで分析

近年、生成AIが急速に発達するなか、膨大な文章データをAIに読み込ませて傾向を分析することが可能になってきた。

当社は、採用選考の応募者と企業双方の同意を取得したうえで、採用DX(デジタルトランスフォーメーション)サービス「harutaka」を通じて面接の録画データを分析し、面接官の言動や振る舞いをフィードバックするサービスを提供している。

例えば、ある企業では、新卒採用の内定承諾率の高い「熟達面接官」の特長をAIで分析し、その他の面接官と比較したところ、面接のなかで、応募者の行動特性(コンピテンシー)の良い部分を探すために深掘りして質問する姿勢が見られた。他にも、笑顔で面接する、会話にアイスブレイクを挟む、傾聴してうなずくといった特徴があった。

別の企業では、熟達面接官は面接中の話題の数が多く、さまざまな評価基準から応募者を見極めていることが分かった。

数多くの面接データを解析したところ、会社の報酬や職場環境の魅力を多く伝えても選考辞退率に影響しなかったが、事業や職務の魅力を伝えた回数が多いほど選考辞退率が改善するという結果が得られた。

会社によって活躍する人材や効果的な面接は異なるため、各社に応じた分析結果をフィードバックしている。

研修等を通じて面接官のスキルが向上することで、選考辞退率の改善など具体的な効果も表れている。

■ AIが面接官を支援

新卒採用において、選考の時間帯や担当面接官によって判断基準がぶれやすいため、AIによるさまざまなサポート機能を実装している。面接官が面接のやり取りに一層注力できるよう、AIが採用面接に特化した文字起こしや要約を行い、面接後に面接官が数行の所感を記載するだけで、次の面接に必要な書類が完成するサービスはその一例である。

面接官が一方的に話し過ぎることのないよう参加者の発話比率を面接中に画面に表示したり、AIがリアルタイムで面接官にフィードバックしたり、面接後に改善レポートを提供する機能もある。

2025年からは、面接において就活ハラスメントの疑いがあった場合、人事部に連絡が行き、その部分の文字起こしと録画を確認できるサービスも開始した。

「自社のカルチャーに合う人材を採用したい」という声がよく聞かれる。この時、過去の合否傾向を深層学習でAIに読み込ませて合否モデルを作成するだけでは、過去の面接官のバイアスを再現したAIになり、合否の判定過程もブラックボックスになってしまう。

そこで当社は、AIを活用する前提として、客観的・具体的・明確な採用基準を設計し、AIによる判定理由を踏まえつつ、最終的に人間が判断することをクライアントに求めている。

■ 採用DXの将来に向けて

採用DXを推進するカギは「公平性」「透明性と説明可能性」「人間中心の判断」である。

当社は、国のAI事業者ガイドラインに沿ってAI利用指針を策定するとともに、神戸大学との共同研究を進め、同大学のエントリー・マネジメント研究教育センターを通じて、採用に関するアカデミックな知見を発信している。

今後もさまざまなステークホルダーと共に採用における正しいAI活用に取り組んでいく。

【労働法制本部】

「2025年11月13日 No.3705」一覧はこちら