2026年の財政年度が始まった10月1日、米国連邦政府は閉鎖した。
連邦政府予算の成立には、連邦議会の上下両院の可決と大統領の署名が必要である。
議会の上下院とも共和党が多数派であるが、上院ではフィリバスター(議事妨害)解除に60票の賛成票が必要であり、上院共和党議員は53人であるため、7人以上の民主党議員を加えた超党派支持が必要となる。
下院では、7週間の「クリーンなつなぎ予算」(純粋な現状維持予算)が可決されたが、上院では一部(3人)の民主党議員は賛成したものの、民主党の大多数の反対により、予算案可決には至らない状況が続いた。
民主党側は年末に切れる医療保険補助金(コロナ禍で一時的に対象を拡大したもの)の延長などを政府再開の条件とした。
連邦議会では「Must Pass」といわれる大型最優先法案の交渉条件として党の優先政策課題を結び付けることはよくあることで、過去にも政府閉鎖の原因となった。
政府閉鎖がどちらの党の責任と見なされるかが政治的には重要となる。近年発生した実質的な(1日以上の)政府閉鎖では、いずれも別の問題の交渉材料として政府閉鎖を利用しようとしていると見なされた側が世論から責任を問われる結果となった。
13年の閉鎖では共和党のテッド・クルーズ上院議員らがオバマケアの廃止を求めて、19年にはトランプ大統領(第1次)が国境の壁の建設のための予算の追加を求めて、それぞれつなぎ予算を妨害した。
今回の閉鎖では、共和党のクリーンなつなぎ予算を上院民主党が妨害しているという意味では民主党にとって苦しい立場に見える。しかし、民主党のベース支持者の間では依然としてトランプ大統領憎しの感情が強く、トランプ政権と共和党に屈せずに戦う姿勢を求める声に引きずられて閉鎖に突入せざるを得なかった事情もある。
連邦政府予算の成立は政府にとって根源的な役割であるにもかかわらず、それですら超党派の合意を形成できずに政府閉鎖に突入するという異常事態が近年増えていることは、米国政治の機能不全の表れといえよう。
【米国事務所】
