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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年12月18日 No.3710 タイの政治経済の現状と展望 -日タイ貿易経済委員会

経団連は11月12日、東京・大手町の経団連会館で日タイ貿易経済委員会(石井敬太委員長、鈴木純委員長)を開催した。筑波大学人文社会系の外山文子准教授、タイのチャイワット・サタウォーンウィジット下院議員(国民党)から、タイの政治経済の現状と展望についてそれぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 政権交代の背景と今後の行方(外山氏)

タイでは2019年の下院総選挙以降、第1党主導による政権の樹立ができない状況が続いている。背景には、17年憲法による首相選出過程のゆがみが指摘できる。

第一に、政治倫理規定や刑法112条の不敬罪など、政治家を縛る法規定があいまいななかで、首相候補者が失職する事態となっている点が挙げられる。

第二に、首相選出過程の複雑さが挙げられる。

憲法の規定によると、総選挙実施前に各政党は3人まで首相候補者の氏名を選挙委員会に通知する。総選挙実施後に首相として選出されるためには、下院議席の5%以上を持つ政党の名簿に記載されており、下院議員の現有議員総数の10分の1以上で了承され、下院議員の現有議員総数の過半数以上の得票を得なければならない。

しかし、決選投票の制度は規定されておらず、過半数に到達しない場合は首相が選出されない事態となる。

23年に実施された総選挙で民主派の国民党が最多議席数を獲得したが、同党の首相候補者名簿に1人しか記載されていないなかで、首相が選出できず、軍部によるクーデターも懸念された。

そこで国民党は、首相選出投票の際にのみ第3党の「タイ誇り党」に協力することとした結果、25年9月にアヌティン・チャーンウィーラクン首相が選出された。

今後、総選挙では民主派の勝利が予想されるが、憲法が改正されない限り、予測できない形で連立政権が続く公算が大きい。

■ 経済改革と日本との経済連携の未来(チャイワット議員)

日本とは70年以上にわたり信頼と協力に基づく重要なパートナーとして関係を構築してきた。日本企業はタイで自動車・電子産業の基盤を構築し、共に産業や人材を育て、アジアの成長を支えてきた。

世界の経済環境が大きく変化するなか、サプライチェーンの再編が進んでいる。生産拠点・パートナーの選定がこれまで以上に重要性を増すなかで、世界の成長センターであるASEANの結節点に位置するタイの重要性は増している。

タイ経済は約3%の成長と財政の健全性を維持するなど安定的な成長を遂げている。高齢化に伴う労働力の減少、生産性の伸び悩みに直面しているが、金融・資本市場の透明化などの改革に取り組んでいる。「Thailand 4.0」構想のもと、規制のサンドボックス、医療・バイオの実証、電気自動車(EV)・バッテリー産業の育成などの次世代モビリティ共創、デジタルを活用したグリーン経済の実現なども推進している。

今後、日本が持つ技術力とタイの成長力を掛け合わせ、アジアの未来を共創していくことを期待している。

【国際協力本部】

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