小野大使
経団連は3月11日、東京・大手町の経団連会館で南アジア地域委員会(安永竜夫委員長、平野信行委員長、深澤祐二委員長)を開催した。小野啓一駐インド特命全権大使から、インドの政治・外交・経済情勢や日印関係等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 政治・外交情勢
モディ政権は3期目に入り、政権運営は安定している。2025年には地方選挙に連勝し、求心力を高めた。
外交面では、25年にパキスタンとの軍事衝突の影響が長期化したほか、バングラデシュ暫定政権との関係が悪化するなど、誤算があったのではないか。26年はリスク低減と安定を掲げて、各方面との関係強化に取り組んでいる。
対米関係は、25年以来、相互関税やロシア産原油輸入に係る追加関税、査証制限などを原因として悪化した。26年2月に暫定的な貿易協定の枠組みに合意し、関係は底を打ったとみられるものの、インドの議会や有識者の間で対米不信が強まったと指摘されている。
対中関係は、国境衝突事案以来初めての、5年ぶりとなる中印首脳会談が24年に開催され、改善基調にある。直行便の再開など、人的交流は復調しつつあるが、中間財・資本財への依存や慢性的な対中貿易赤字に加えて、中国側の輸出管理措置等を背景に経済面での不満は依然大きいとみられている。
■ 経済情勢
インドは高水準の経済成長を続けており、26年には名目GDPが日本を抜いて世界第4位になる見通しだ。
47年の先進国入りを目指して製造業の振興を進めているが、期待ほどの成果が上がっていない。現状、資本集約的・スキル集約的産業を中心に成長しており、人口増加に対して雇用創出が追い付かず、若年層の失業率が高止まりしている。このため政府は海外への労働者派遣にも注力している。
昨今、強靭なサプライチェーンの構築をはじめ、経済安全保障への関心が急速に高まっている。とりわけ、半導体製造、重要鉱物確保、電気自動車(EV)用バッテリーや永久磁石の生産等の分野で、日本企業との協力に対する期待が大きい。
大使館としては、個別の投資案件の具体化に向けて、日印企業のマッチングを促進するとともに、知的財産保護などビジネス環境の改善やインセンティブ措置のあり方などをインド政府に働きかけている。
■ 日印関係
25年、ナレンドラ・モディ首相が訪日し、今後10年間の日印協力の方向性について、首脳間で広範な合意が形成された。
足元では半導体、EV、再生可能エネルギー、IT等の分野で、日本企業のインドへの進出が進んでいる。インドはトップダウン型の意思決定が特徴であり、企業トップの訪印とスピード感のあるコミットメントが事業推進に有効と考えられる。
他方、日本企業にとって、インドの煩雑かつ不透明な行政手続きや税制は引き続き課題だ。必要があればいつでも大使館に相談いただきたい。
両国の人的交流には、さらなる活性化の余地がある。27年に日印国交樹立75周年を迎えることを踏まえ、官民で日印関係のさらなる強化に取り組みたい。
【国際協力本部】
