中込大使
経団連は3月17日、東京・大手町の経団連会館でウクライナ経済復興特別委員会(國分文也委員長)の第5回会合を開催した。中込正志駐ウクライナ特命全権大使から、最新のウクライナ情勢について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 戦争の現状
ロシアがウクライナへ全面侵攻を開始してから4年が経過し、今や太平洋戦争より長くなっている。この1年でも前線に大きな変化はなく、厳しい消耗戦が続いている。
ウクライナ側はドローンの活用により兵力不足を補っている。ロシア側はこれまでは契約兵により十分な兵力を維持できていたが、最近は兵士の募集が困難になってきており、外国人兵士が増加している。
ウクライナ側もロシア側も公式には戦死者数を公表していないが、ある民間機関の推計では2026年1月時点で民間人を除く戦死者数は双方合計で50万人近くとされている。これは日本の自衛官の現員数(約22万人)を大きく超えている。
一方、この1年間でウクライナを巡る国際的な構図は、大きく変化した。全面侵攻開始以来、米国と欧州が協力して行ってきた対ウクライナ支援は、トランプ政権成立以降、軍事支援も非軍事支援も(それぞれ合計毎年約300億~400億ユーロ規模)、米国による支援の大宗を欧州が肩代わりした。
財政面では、EUが26~27年に900億ユーロの支援を行う予定だが、現時点では、ハンガリーなどの反対で供与が実現していない。
■ 世論と国民生活
厳しい状況にあるウクライナだが、世論調査でも国民の約5~6割程度が大統領を信頼するなど、依然としてゼレンスキー大統領の人気は高く、現政権は求心力を保っている。
25年秋、大規模な汚職事件により複数の閣僚が辞任に追い込まれたが、その後ゼレンスキー大統領が実施した人事刷新は国民からの評判も良く、大統領は求心力を取り戻した。
26年1~2月は、ウクライナにとって数十年振りの厳冬となり、キーウでマイナス24℃を記録した。
厳しい冬を利用したロシアのエネルギー施設攻撃により、ウクライナは深刻なエネルギー危機に陥り、厳冬のなか、キーウでも1日数時間しか通電しないこともあった。しかし、3月になって気温が上がり始め、ウクライナはこの危機を乗り越えることができた。
■ 和平交渉の動向
ウクライナ、ロシア、米国による3者協議はこれまで3回開催され、一定の進捗はあったものの、双方の隔たりはなお大きい。現在の主な論点は、対外的には、領土やザポリージャ原発の扱いだとされているが、これに加え、安全の保証や、プーチン大統領がこだわっている「根本原因」も大きな論点となる可能性があろう。
現下の中東情勢は、ウクライナにも大きな影響を与えており、この問題が長引くほどロシアには有利に働くだろう。次回の3者協議は3月初旬に開催される予定だったが延期となり、現時点まで実施のめどが立っていない状況だ。
■ 日本の支援
24年2月に「日・ウクライナ経済復興推進会議」を経団連の協力を得て東京で開催し、以来、政府は官民連携によるウクライナ復興支援を推進するため、さまざまなプロジェクトを実施してきた。この結果、復興に向けた官民連携は「種まき」の段階から「育成」のステージに進んだと言っても過言ではない。
25年、日本政府はウクライナへの官民ミッションを6回実施し、現在は約80社が政府(経済産業省、国土交通省、農林水産省、国際協力機構〈JICA〉)が支援する各種事業に参加し、ウクライナでのビジネスに挑戦している。
毎月数社以上の日本企業がウクライナを訪れており、現地に事務所を設置する企業も現れてきた。事業分野は、農業、住宅、インフラ、車両、エネルギー、保健・医療、ITなど幅広い。
大使として、引き続き復興に向けた官民連携を推進していきたい。
【国際経済本部】
