[ 日本経団連の概要 | 業務・財務等に関する資料 ]
2001年度事業報告

III.政策委員会


【政策全般】

1.総合政策委員会

(今井 敬委員長)

経団連活動の指針となる総会決議「構造改革を進め民主導の活力ある経済社会を実現する」を取りまとめた(2001年5月委員会開催、5月25日の定時総会で採択)。
同決議は、前文において、「企業は、自立、自助、自己責任の精神の基に、経営効率の改善に向けた不断の改革、新たな成長基盤の確立に努める」必要があると指摘した。
併せて、「経団連は、日経連との統合を進め、真の総合経済団体として、広範な課題の迅速かつ果敢な解決をはかる」旨の決意を表明した。
また、今後取り組むべき具体的重要課題として、以下を掲げた。

  1. 企業の構造改革
  2. 新たな成長基盤の確立
  3. 地球環境、エネルギー問題
  4. 財政構造改革の包括的なグランドデザインの策定
  5. 行政改革、規制改革の推進
  6. 対外経済政策の戦略的な推進
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【経済・法制関係】

2.経済政策委員会

(櫻井孝頴委員長)

当委員会では、経済構造改革のあり方に関する検討や、経済情勢の把握を中心に、以下の活動を行った。

1.経済構造改革に関する意見交換

2001年7月に、竹中平蔵経済財政政策担当大臣を招いて委員会を開催し、経済財政諮問会議がまとめた「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」をめぐって意見交換を行った。
また12月には、東京大学大学院経済学研究科の吉川洋教授(経済財政諮問会議議員)を招いて委員会を開催し、経済構造改革に向けた課題と展望について意見交換した。

2.経済情勢の把握

(1) 経済情勢に関する懇談会の開催
2001年7月、8月および2002年2月に、今井会長、櫻井委員長、摩尼企画部会長ほかによる懇談会を開催し、内閣府ならびに日本銀行の幹部、民間シンクタンクなどから、経済情勢に関する説明を聞くとともに、意見交換した。
また、2002年2月から3月にかけて、櫻井委員長、摩尼企画部会長ほかによる懇談会を3回にわたって開催し、経済産業省の経済活性化策、東京都の都市再生に向けた取組み、広告・流通業界の動向について説明を聞くとともに、意見交換した。

(2) 経済情勢専門部会の開催
経済情勢専門部会を月1回開催し、内閣府および日本銀行からマクロ経済全般にわたって説明を聞くとともに、意見交換した。また、その時々のトピックについて、会員企業および非会員企業から広く説明を聞いた。

(3) 経済運営と経済情勢に関するアンケート調査の実施
2001年8月と2002年1月に、常任理事および会長・副会長(約200名)を対象に、経済運営と経済情勢に関するアンケート調査を実施した。調査内容は、経済成長率・物価・雇用情勢・株価・為替レートなどの見通し、財政金融政策のあり方、経済構造改革の進め方などである。調査結果はそれぞれ翌月に公表した。

3.中長期的な経済財政運営に関する意見交換

企画部会(部会長:摩尼義晴第一勧銀総合研究所社長)では、2001年10月に財政制度委員会企画部会との合同会合を開催し、東京大学大学院経済学研究科の井堀利宏教授(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)より、財政構造改革の進め方についてマクロ経済との関連も含めた説明を聞くとともに、意見交換を行った。
また、11月にも、財政制度委員会企画部会との合同会合を開催し、内閣府より、経済財政諮問会議「中期経済財政展望」に関する検討状況を聞くとともに、意見交換した。


3.税制委員会

(5月25日〜 森下洋一委員長)
(〜5月25日 前田勝之助委員長)
(〜5月25日 宮部義一共同委員長)

平成14年度税制改正では連結納税制度の導入を最大の課題とし、これを実現するとともに、当面の経済再生に向け証券市場活性化のための税制措置などを実現した。
また、経済界のかねてからの主張である21世紀の経済社会を見据えた税制抜本改革の検討が政府・与党においてスタートしたことから、抜本改革論議に経済界の意見を反映させるための活動を本格化させた。

1.連結納税制度の導入

連結納税制度は、97年の持株会社解禁以来、経済界の働きかけにより進められてきた企業組織再編のための制度整備の総仕上げである。そこで当委員会では、平成14年度税制改正において同制度を確実に導入すべく、2001年4月から企画部会(部会長:関哲夫新日本製鐵副社長)およびその下部組織である連結納税制度ワーキンググループを18回にわたり開き、連結納税制度の具体的設計をめぐり検討を進めた。また、調査団を6月にフランス、7月にアメリカに派遣し、両国の連結納税制度の実態を調査した。
かかる検討を踏まえ「連結納税制度導入に係る主要論点に対する意見」(7月11日)ならびに、「平成14年度税制改正提言」(9月18日)において、わが国に導入すべき連結納税制度のあり方を具体的に示すとともに、財務省主税局と精力的な折衝を行い、企業が活用しやすい制度の構築に努めた。
制度導入に向けた年次改正論議が始まった11月には、財務省より事務作業の遅れを理由に導入延期が主張されたが、今井会長、森下副会長・税制委員長が先頭に立ち、小泉総理をはじめとする政府首脳、与党幹部等に先送り撤回を強力に働きかけ、平成14年度からの導入を確実なものとした。なお、経済界が強硬に反対した連結付加税は、平成14年度税制改正大綱では2年の時限措置として盛り込まれた。

2.平成14年度税制改正への対応

9月18日、「平成14年度税制改正提言」を公表し、経済再生に向けた税制改正として、連結納税制度の導入とともに、資産デフレ解消のための土地・不動産税制改革、商法改正に即した税制措置、法人事業税外形標準課税の導入阻止などを求めた。
平成14年度改正では、商法改正に対応した税制措置は経団連の要望通り実現し、また、外形標準課税の導入は見送られた。土地・不動産税制については、登録免許税の一部軽減が実現した。さらに、2002年2月、自民党が取りまとめた「デフレ対策」に、不動産譲渡益課税の軽減、不動産登録免許税および不動産取得税の減免が盛り込まれた。

3.証券市場の活性化

金融証券市場の活性化に向けては、既に2001年1月、提言「証券市場活性化対策について」を公表していたが、引き続き「平成14年度税制改正提言」などにおいて、株式譲渡益課税の軽減、譲渡損失の繰越控除等を求めた。これに対し、6月には長期保有株式の少額譲渡益控除制度(100万円まで非課税)、さらに、2001年秋の臨時国会で、平成15年からの申告分離課税への一本化と併せ、譲渡益課税の税率引下げ、譲渡損失の繰越、一定の株式に係る譲渡益の非課税措置等が講じられ、税制改正では異例と言える年度途中の改正が2度にわたり実現した。

4.税制抜本改革に向けた取組み

4月に発足した小泉内閣は、「聖域なき構造改革の推進」を掲げ、6月に「構造改革に関する基本方針(いわゆる骨太の方針)」を打ち出した。これを受け経団連では、7月11日、「当面の税制をめぐる課題についての提言」を公表し、税制改革と財政構造改革、社会保障制度改革の一体的推進、税制改革の具体的なスケジュールの明示等を求めた。
これに対し、2002年1月、小泉総理は「努力が報われる税制」を掲げて税制抜本改革への取組みを打ち出し、税制改革が構造改革の最も重要な柱として位置付けられた。
経団連では、政府・与党において税制抜本改革の検討が始まったことを歓迎し、抜本改革の理念、具体的内容を提言「税制抜本改革のあり方について」に取りまとめ、2月19日公表した。提言では税制を経済活性化のための重要無比の政策手段として活用するよう求めた上で、具体的課題として研究開発促進税制の大胆な拡充、減価償却制度の抜本的見直し、実効税率引下げ、連結付加税の早期撤廃をはじめとする法人税の抜本改革、個人の意欲を引き出す所得税の見直し、金融資本市場の活性化に向けた税制改革等を打ち出した。
経済活力の強化に税制を活用するという視点は、総理を議長とする経済財政諮問会議の検討に共有され、6月に予定される基本方針の取りまとめに向け、順次、諮問会議の場で具体的な検討が進められることとなった。

5.電子商取引に対する課税問題、租税条約改定問題への取組み

OECD租税委員会が電子商取引に対する課税問題について検討するために設置したTAG(テクニカル・アドバイザリー・グループ)に、経団連から委員を派遣して検討に参画するとともに、わが国経済界の意見を的確に反映させるべく、国際租税部会(部会長:島上清明東芝副社長)の下の電子商取引課税問題ワーキンググループを中心に、財務省ならびに経団連情報通信委員会とも協力しつつ、検討を進めた。
一方、日米財界人会議の日米租税条約改定論議を受けて日米当局による正式改訂交渉が開始されるため、国際租税部会において財務省より説明を聞き、内容の適否について検討した。


4.財政制度委員会

(5月25日〜 櫻井孝頴委員長)
(〜5月25日 西室泰三委員長)

当委員会では、当面の財政運営や、中長期的な財政構造改革のあり方に関する検討を中心に、以下の活動を行った。

1.当面する諸課題に関する意見交換

2001年6月に、塩川正十郎財務大臣ほか財務省首脳を招いて委員会を開催し、公共事業・社会保障・地方財政などの歳出見直し、証券税制を含めた税制のあり方全般など、当面する諸課題について説明を聞くとともに、意見交換を行った。

2.財政構造改革のあり方に関する検討

(1) 財政の現状と展望に関する意見交換
2001年6月に、櫻井委員長ほかによる懇談会を開催し、財務省主計局より、我が国財政の現状と展望について説明を聞くとともに、意見交換を行った。

(2) 中長期的な経済財政運営に関する意見交換
企画部会(部会長代行:斎藤勝利第一生命保険専務取締役)において、10月に経済政策委員会企画部会との合同会合を開催し、東京大学大学院経済学研究科の井堀利宏教授(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)より、財政構造改革の進め方についてマクロ経済との関連も含めた説明を聞くとともに、意見交換を行った。
また、11月にも経済政策委員会企画部会との合同会合を開催し、内閣府より、経済財政諮問会議「中期経済財政展望」に関する検討状況を聞くとともに、意見交換を行った。


5.社会保障制度委員会

(5月25日〜 西室泰三委員長)
(福澤 武共同委員長)
(〜5月25日 福原義春共同委員長)

当委員会は、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、主として、(1)企業年金2法の早期成立と円滑な施行、(2)公的年金制度の在り方の検討、(3)医療制度改革の実現に取り組んだ。

1.企業年金2法の早期成立と円滑な施行への対応

2001年4月、経済4団体長名で確定拠出年金法案および確定給付企業年金法案の早期成立を求める共同意見書を取りまとめ、与党幹部へ手交した。さらに、衆議院厚生労働委員会で確定給付企業年金法案に関する意見陳述を行い、企業年金2法案の早期成立を求めた。このような経緯を経て、2001年6月、両法案は第151回国会において成立した。
企業年金2法案の成立を受け、2001年7月、日経連と共同で、企業年金制度検討ワーキンググループ(座長:徳住祥蔵新日本製鐵顧問)を立ち上げ、年金改革部会(部会長:岡本康男住友化学専務取締役)との連携を図りつつ、経済界の要望が関連する政省令などの内容に反映されるよう働きかけた。
確定拠出年金制度に関しては、当面最も重要と考えられる既存制度からの円滑な移行を中心に検討、要望を行った。この結果、適格退職年金について、法人税法施行令および法人税法施行規則の改正がなされ、(1)積立不足分の一括拠出、(2)加入員への分配規定についての適用除外が認められた。
一方、確定給付企業年金制度に関しては、確定給付型と確定拠出型双方の特長を併せ持つハイブリッド型年金の導入、企業再編に対応した弾力的な年金制度の設計、既存制度からの円滑な移行などを求めた。この結果、(1)キャッシュバランスプランの導入、(2)年金と一時金の無差別化、(3)グループ企業に転籍する際のポータビリティーの確保、(4)法で1事業所1制度とされた年金制度の併存の一部容認などが認められた。

2.公的年金制度の在り方の検討

2002年1月より社会保障審議会年金金部会が設置され、次期公的年金制度改正に向けた審議が開始された。これを受けて年金改革部会では、改革に向けた公的年金制度の在り方についての検討を開始した。その皮切りとして、2002年3月に一橋大学の高山憲之教授を招き、意見交換を行った。

3.医療制度改革の実現

経団連と日経連は、2002年度医療制度改革に向けて「高齢者医療制度改革に関する基本的考え方」(2001年5月)を取りまとめ、当面70歳以上を対象とするシニア医療制度(仮称)を創設し、財源を高齢者からの保険料、自己負担ならびに公費で賄い、現行老人保健拠出金は廃止することを提言した。
さらに、政府・与党の検討状況に合わせて、2001年10月に経団連・日経連で「厚生労働省『医療制度改革試案』に関する見解」を、経済4団体で「医療制度の抜本改革を求める」を取りまとめた。これらに基づき政府・与党社会保障改革協議会ワーキングチームなどで意見陳述を行い、(1)医療費総額の実効ある抑制、(2)診療報酬のマイナス改定、(3)老人保健拠出金の廃止などを要望した。


6.金融制度委員会

(片田哲也委員長)
(橋本 徹共同委員長)

1.「私的整理に関するガイドライン研究会」への参画ならびに説明会の開催

2001年4月に閣議決定された緊急経済対策において、「私的整理における再建計画の策定に関わる調整手続などをガイドラインとして取りまとめるよう関係者に呼びかける」とされたことを受けて、全国銀行協会を事務局とする「私的整理に関するガイドライン研究会」が発足した。経団連からは、金融制度委員会の福間資本市場部会長が委員として参画、経済界の立場から適宜意見を表明し、ガイドラインの取りまとめに協力した。
ガイドラインが9月に取りまとめられたことを受けて、当委員会では、同研究会の高木新二郎座長を招いて会合を開催し、ガイドラインについての説明を聞くとともに、意見交換を行った。

2.規制改革への取組み

経団連では、2001年10月に規制改革要望を取りまとめた。金融・保険・証券分野については、不良債権処理を促進するとともに、直接金融に軸足を置いた安定的かつ効率的な金融システムの実現を図る観点から、13項目を要望した。要望項目の多くは、2002年3月末における「規制改革推進3か年計画」の改定に盛り込まれた。

3.証券市場の活性化に向けて

証券決済制度を国際レベルに引き上げ、決済リスクとコストを低下させる一環として、CP(コマーシャル・ペーパー)のペーパーレス化実現のためのいわゆる短期社債法の成立を働きかけた。この法律の成立を受け、CPの電子決済システムの構築に向けて、関係者間の協力要請を求めた。
資本市場部会(部会長:福間年勝三井物産顧問)では、証券市場活性化の観点から証券行政のあり方について、塩崎恭久自民党企業会計に関する小委員長、藤原隆金融庁審議官、宇賀克也東京大学教授、佐賀卓雄日本証券経済研究所主任研究員から、それぞれ意見聴取を行った。
また、2002年3月には委員会を開催し、田中直毅21世紀政策研究所理事長より「証券市場に期待する役割」について説明を聞き、部会の検討結果を取りまとめた。


7.経済法規委員会

(小林正夫共同委員長)
(千速 晃共同委員長)

1.商法改正への取組み

2001年4月に意見書「会社機関の見直しに関する考え方」をはじめ商法改正問題のパブリックコメントに対し6本の意見を提出した。また西川元啓経済法規専門部会長(新日本製鐵常務取締役)を中心に、与野党への働きかけと国会等の意見聴取に機動的に対応した。
その結果、2001年通常国会で金庫株の解禁などが議員立法で実現し、CPのペーパレス化も実現した。同年秋の臨時国会では、閣法でストック・オプション制度や種類株式制度の改善、会社関係書類の電子化など、議員立法で代表訴訟制度の改善などが行われた。また、2002年通常国会においては、株券失効制度の改善、株主総会の特別決議の定足数の緩和、商法会計と証券取引法会計との統合などが行われることとなった。また経団連が反対した大会社への社外取締役設置強制は見送られた。これら改正について、2001年9月、2002年1月に武井一浩弁護士を招き、委員会委員を対象とした解説セミナーを開催した。
2002年2月には森山眞弓法務大臣はじめ法務省幹部と懇談会を開催し、残された課題である利益処分権限の取締役会への委譲、単元未満株の共益権問題や金庫株取得の定款授権などについて意見交換した。
また2002年秋の臨時国会に提出予定の会社更生法の改正に向けて意見を取りまとめた。

2.司法制度改革への取組み

司法制度改革審議会の委員である山本勝企画部会長(東京電力副社長)を通じて、審議への経済界意見の反映に努めた。2001年6月に取りまとめられた審議会意見書に基づき、12月に、内閣に司法制度改革推進本部が設置され、その顧問会議に今井会長が参加した。また、同本部事務局内の司法アクセス、国際化、法曹養成、ADR(裁判外紛争解決手段)の各検討会に経済界出身委員が参加し、各分野での司法制度改革の早期実現を働きかけた。

3.会計制度の整備への取組み

民間が主体となって会計制度を策定するため、2001年7月に日本公認会計士協会はじめ市場関係者とともに企業会計基準委員会とその運営母体である(財)財務会計基準機構(理事長:小林正夫経団連経済法規委員会共同委員長)を設立した。また、国際的に通用する会計基準の開発を進める国際会計基準審議会(IASB)に対し、わが国の主張を反映させるため、評議員に福間年勝資本市場部会長(三井物産顧問)、基準諮問会議委員に八木良樹企業会計部会長(日立製作所副社長)が参画し、意見反映に努めるとともに、運営資金の支援など積極的な対応を行った。また、金融庁企業会計審議会での減損会計と企業結合会計の策定や監査基準の改訂作業において、経済界の考えの反映に努めた。

4.民法関連での取組み

法制審議会で検討中の担保・執行法制の見直しについて、経済界の意見を反映させるため、コメントを取りまとめた。
また、2001年4月に施行された消費者契約法への企業・団体の対応状況についてアンケート調査を行い、一般に結果を公表することで、経済界の消費者対応の向上に向けた取組みについて周知に努めた。さらに国民生活審議会が検討している企業の自主行動基準策定について、宮部義一消費者法部会長(三菱樹脂相談役)より市場メカニズムと国際的動向を尊重して進めるよう働きかけた。

5.独禁法・競争政策に関する取組み

新たに競争法部会(部会長:諸石光煕住友化学工業専務取締役)を設け、小林共同委員長とともに、次期独禁法改正案に対し経済実態と乖離しがちな議論の修正に努めた。今後の競争政策に関する考え方について公正取引委員会幹部から説明を聞き、意見交換した。


8.コーポレート・ガバナンス委員会

(御手洗冨士夫委員長)

監査役制度の強化と株主代表訴訟制度の見直しを柱とする「コーポレート・ガバナンスのあり方に関する緊急提言」(97年9月)の実現に向け、引き続き、議員立法による商法改正の実現を与野党に対し働きかけた。
法案は、2001年5月30日、第151回通常国会に提出された。その後継続審議となっていたが、第153回臨時国会において、与党3党と民主党との協議の結果、修正案が提出され、同年12月5日に参議院本会議にて成立、同月12日に公布された。
なお、代表訴訟制度については米国並みの整備を引き続き求めていくこととしている。


9.統計制度委員会

(井口武雄委員長)

当委員会では、報告者負担の軽減を中心に、統計審議会、総務省諮問への答申などの活動を行った。また、統計利用者の視点から、四半期別GDP速報を中心に経済統計のあり方を検討し、提言を行った。

1.四半期別GDP速報のあり方に関する提言取りまとめ

経済統計の利便性向上、信頼性の維持・向上、報告者負担の軽減などの観点から、四半期別GDP速報など経済統計のあり方を検討した。
2001年9月には、竹内啓統計審議会会長を招いて委員会を開催し、GDP統計の現状と改善の方向について説明を聞くとともに意見交換した。また2002年3月には、香西泰日本経済研究センター会長を招いて委員会を開催し、日本経済の現状と課題について、GDP統計への期待も含めて説明を聞くとともに、意見交換した。
具体的な検討は、企画部会(部会長:飯島英胤東レ経営研究所社長)を中心に行った。10月以降、計6回の会合を開催し、関係省庁の説明や学者の意見を聞くとともに、意見交換した。その成果を踏まえて、2002年4月に提言「経済統計の改善に向けて―四半期別GDP速報を中心に―」を公表した。

2.消費統計に関する意見交換

企画部会では、2001年6月以降、総務省、経済産業省、内閣府などから、消費関連統計の改善状況について説明を聞くとともに、さらなる見直しのあり方などをめぐって意見交換した。

3.統計審議会における対応(指定統計関連)

当委員会の飯島企画部会長は、統計審議会(総理大臣の諮問機関)に委員として参画し、経済界の視点から、適宜意見を表明している。
今年度は、財務省「法人企業統計」、総務省 「家計調査」、経済産業省「生産動態統計」、の改善策や、新規に実施予定の総務省「就業希望状況調査」のあり方、ならびに標準産業分類の改訂のあり方などについて意見表明を行った。

4.総務省諮問への答申(承認統計関連)

当委員会では、統計報告調整法に基づき官庁が実施する承認統計のうち、企業を対象とした調査について、総務省から諮問を受け、報告者および利用者の観点から個別に審査し、答申を行っている(レポート・コントロール制度)。
2001年度は、総務省より約70件の諮問を受け、関係企業や業界団体などの意見を参考に、調査の統合、調査内容の改善、項目の簡素化などについて、関係省庁と協議し、統計調査の改善を行った。

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【行革・産業・国土関係】

10.行政改革推進委員会

(大賀典雄委員長)
(9月1日〜 草刈隆郎共同委員長)
(〜5月25日 飯田 亮共同委員長)

1.規制改革への対応

当委員会では、関係各委員会と連携し、よりスピード感のある集中的な規制改革の実現を目指してきた。
2001年10月1日には、全会員企業を対象に実施したアンケートを基に「2001年度規制改革要望」を取りまとめ、小泉総理、総合規制改革会議など関係先へ建議した(全15分野、計395項目)。
2002年1月22日には、10月の要望を再点検し、高コスト構造の是正、IT革命、少子高齢化、都市再生等への対応の観点から、特に緊急度・重要度が高いと判断される54項目について、再要望を取りまとめ、石原伸晃行政改革・規制改革担当大臣、総合規制改革会議など関係先へ建議した(全14分野、計54項目)。
なお、当委員会は、内閣府総合規制改革会議の活動を全面的に支援するとともに、経済財政諮問会議等の関係機関への働きかけも適宜行ってきた。具体的には、2001年10月には、総合規制改革会議において経団連要望を説明するとともに、11月に開催された経済財政諮問会議の規制改革に関する集中審議に際して、10月要望の中から、経済活性化に資するものを中心に、その早期実現を働きかけた。その結果、2002年3月26日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画(改定)」に、経団連要望が数多く盛り込まれた。

2.更なる行政運営の公正確保・透明性向上のための課題の整理

規制の制定から運用に至る諸制度の課題を整理し、規制改革の実効性を高めるべく、2001年11月、全会員企業を対象に、行政手続法、パブリックコメント手続き、日本版ノーアクションレター制度等の運用実態を把握するためのアンケート調査を実施した。140の会員企業から199件の回答が寄せられたが、規制改革推進部会(部会長:鈴木祥弘日本電気特別顧問)において調査結果を検討し、2002年3月19日に「更なる行政運営の公正確保・透明性向上のための課題」としてアンケート調査報告を取りまとめ、関係先に建議した。

3.市町村合併等の地方分権改革推進に向けた活動

地方分権改革については、内閣府に2001年7月に設置された地方分権改革推進会議(議長:西室泰三東芝会長)の検討状況をフォローしつつ、2002年4月に行われた同会議のヒアリングにおいて、関係委員会と協力して、国と地方を通じた行財政改革の必要性、内政構造改革推進の観点からの地方自治体の再編・機能強化などを中心に意見陳述した。
また、基礎的自治体の行財政能力を高める上で不可欠な課題である市町村合併の推進については、「21世紀の市町村合併を考える国民協議会」(会長:樋口廣太郎アサヒビール相談役名誉会長)と連携しつつ、民間団体の立場から、広報活動をはじめ国民の意識醸成に取り組んだ。

4.郵便事業への民間参入推進

2001年10月に、総務大臣の私的諮問機関である「郵政公社化に関する研究会」の下部組織である「郵便民間参入政策ワーキンググループ」において、提言「郵便事業への民間参入の速やかな実現を求める」(2000年3月28日)の内容に基づき、意見陳述を行い、民間の需要の高い分野を中心に、幅広い範囲で民間参入を認めるよう求めた。


11.産業問題委員会

(瀬谷博道共同委員長)
(〜3月31日 西村正雄共同委員長)

当委員会では、経済成長の源泉である産業の競争力向上につながるテーマを取り上げ、検討を進めており、2001年度は以下の活動を行った。

1.提言「地域における産業集積戦略のあり方」の取りまとめ

昨今の経済社会情勢の中で、国だけでなく、各地域がそれぞれ「地域経営」という立場に立ち、独自の産業集積戦略を模索し、定住人口の拡大、雇用の安定を図るべきであるとの観点から、昨年度に引き続き、地域の産業集積のあり方について検討を進め、2001年5月に「地域における産業集積戦略のあり方−付加価値創造型産業の集積を目指して」を取りまとめ、政府・与党等関係方面に建議した。
同提言では、立地・事業環境の整備に向けた先進的な取組みを行っている米国やアジアの地域・都市に比べ、わが国での取組みは遅れており、地域の産業、大学、地方自治体が有機的に連携する一方で、国も地域政策の再構築などを通じて、地域の取組みを円滑にする環境整備を行う必要があることを指摘した。

2.新たな成長基盤の構築に関する検討

提言を公表した後、当委員会では、企画部会(部会長:雨宮肇旭硝子専務取締役)を中心に、委員会創設以来4年間の活動を総括するとともに、わが国が直面する産業の空洞化、デフレ・スパイラル、少子高齢化の急速な進行といった課題を克服し、新たな成長基盤を確立するための需要・供給両面からの総合的な政策を打ち出すべく検討を開始した。
企画部会において、各界の有識者とともに、国内企業からヒアリングを行い、立地戦略や研究開発体制などについての実態を調査した。また2002年2月には、中国の台頭の中で日本と同様に産業空洞化が懸念される台湾の企業・政府の取組みについて、企画部会の委員による現地調査を実施した。こうした結果を踏まえ、2002年4月、提言を取りまとめた。

3.雇用問題への対応

景気の後退に加え、生産拠点の海外移転等が進展するなか、規制改革を通じた既存産業の活性化や新産業、新事業の創出、それらに伴う雇用機会の拡大、さらには雇用のセーフティネットの整備が早急に求められるとの観点から、雇用・労働に係る規制改革要望を取りまとめた。具体的には、円滑な労働の移動の促進と雇用の多様化に対応した規制改革の実現のため、官民が協力・連携した職業紹介、再就職支援サービスの充実、求職者からの手数料規制の緩和、有期労働契約、労働者派遣法、裁量労働制に係る規制の緩和などを要望した。
わが国産業の生産性向上の観点から、新たな雇用のあり方を検討するため、2001年12月から2002年1月にかけて法人会員企業を対象に「雇用の現状と制度改革に関する緊急アンケート調査」を実施し、約300社から回答を得た。この結果は、4月に取りまとめた提言にも反映させた。また、この提言においては、台湾調査を通じて明らかとなった台湾政府の取組みを踏まえた事項を盛り込んだ。


12.新産業・新事業委員会

(出井伸之共同委員長)
(高原慶一朗共同委員長)

1.新産業・新事業創出に関する提言の取りまとめ

企画部会(部会長:鳴戸道郎富士通特命顧問)では、従来のベンチャー企業支援策を見直し、新産業・新事業を取り巻く問題点や課題などについて、有識者からヒアリングするとともに、各地域の起業家やインキュベーションセンターの実状調査、経団連全法人会員企業を対象にしたアンケート結果を踏まえて、2002年4月に「新産業・新事業創出に関する提言−誰もが起業家精神を発揮できる社会へ」を取りまとめた。
提言では、エンジェル税制の拡充など起業税制の整備、大学発ベンチャー企業の創出、コーポレートベンチャーの推進など当面の課題への対応とともに、中長期的な課題として初等中等教育での起業家教育の必要性を訴えた。また、経団連として、ベンチャー企業経営者と経団連会員企業経営者が交流する場を設ける方針を打ち出した。

2.新産業フォーラムの開催

新産業・新事業の創出と育成を図るべく、モノづくりに広い裾野を持つ大阪において、2001年12月、関西財界の協力を得て、「新産業フォーラム―起業家精神と日本再生」を開催した。450名近くが参加した当日は、ITとバイオという切り口から、出井共同委員長ならびに青木初夫藤沢薬品工業社長より基調講演があり、起業家精神がつくる新産業・新事業について、古田武鐘淵化学工業会長、松原謙一DNAチップ研究所社長、伊藤穰一ネオテニー社長、進藤晶弘メガチップス会長、鳴戸企画部会長によるパネルディスカッションを行った。

3.起業家懇談会の開催

実績を挙げている様々な分野の起業家と経団連トップが、新規事業創出や経済活性化のための方策などをめぐって意見交換を行う「起業家懇談会」を2000年度に引き続き3回開催した。2001年4月の第3回会合では、10〜20歳代の若手経営者である宮城治男NPO法人ETIC.代表理事、石田宏樹フリービット・ドットコム社長、本間毅イエルネット社長、長谷川岳YOSAKOIソーラン祭り組織委員会専務理事、木下斉商店街ネットワーク社長、9月の第4回会合では、特徴ある技術を軸に成長している高取直鷹山社長、杉山尚志リアルビジョン社長、荒川亨ACCESS社長、2002年1月の第5回会合では、子供を持つ女性経営者であり、働く女性の支援活動などを行っている田子みどりコスモピア社長、水澤佳寿子コティ社長、佐々木かをりユニカルインターナショナル社長、をそれぞれ招き、懇談した。


13.情報通信委員会

(岸  曉委員長)

ITを最大限に活用できるよう、需要・供給両面の環境整備に取り組むとともに、内閣のIT戦略本部会合、総務大臣との懇談会などを通じて政府の施策に経済界の見解を反映すべく、働きかけた。

1.情報通信法制の再構築の推進

世界最先端のIT国家を実現するには、ITの基盤を成す通信分野における競争を促進するための制度枠組みの整備が急務である。そこで、通信・放送政策部会(部会長:潮田寿彌味の素専務取締役)を中心に、現行制度に手直しを加えるというアプローチではなく、競争促進的な制度を新たに構築するとした場合の基本的な枠組みについて、利用者の立場から検討し、2001年12月、提言「IT分野の競争政策と『新通信法(競争促進法)』の骨子」を取りまとめ、建議した。同提言では、「自由かつ公正な競争の促進による利用者利益の最大化」を新通信法の目的に位置づけた上で、(1)通信サービスの再定義、(2)市場支配力を有する事業者に対する競争ルールの策定、(3)独立規制機関の設置などを求めている。
これと並行して、「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針(原案)」電波の利用状況に関する情報提供などについて関係省庁に意見を提出した。また、欧州委員会関係者などを招き通信制度改革に関するセミナーを開催した。

2.メディア制度をめぐる課題の整理

細分化された制度の下では、メディアに係る新事業の発展が制約される惧れがある。そこで、通信・放送政策部会を中心に、デジタル化など環境変化に対応したメディア制度のあり方を検討し、2001年9月に部会として中間報告「今後のメディア制度の課題」を取りまとめた。同報告では、基本的な枠組みとして、情報伝送設備とコンテンツの自由な組合せの実現、基幹放送たる地上放送の制度改革などについて課題を整理している。

3.電子政府に関する検討

2002年春に予定されている政府の「e-Japan重点計画」の見直しに経済界の意見を反映すべく、2002年1月より、情報化部会(部会長:〜2001年9月島田精一日本ユニシス社長、2001年9月〜三吉暹トヨタ自動車副社長)で電子政府に関する検討を進めた。電子化に並行して業務改革を推進することで行政の効率化、国民・企業の利便性向上につなげるべく、2002年度早々にも部会としての見解を取りまとめる予定である。

4.高度道路交通システムに関する検討

同じく「e-Japan重点計画」の見直しを控え、渋滞の解消や環境問題の解決などに資する、公共分野の情報化の施策として高度道路交通システム(ITS)の効率的な推進に関して、関係省庁との懇談会を開催するなど検討を進めた。

5.ブロードバンド関連ビジネスの発展方策に関する検討

ネットワークインフラのブロードバンド化の進展に鑑み、電子商取引の推進に関するワーキング・グループ(座長:村上輝康野村総合研究所専務取締役)を中心に、ブロードバンド関連ビジネスの発展方策について検討を進めた。
また、コンテンツの円滑な流通に向け、著作権などの権利処理を迅速に行なえる仕組み作りに資するべく、主要な権利者団体・利用者団体に呼びかけ、2002年2月より「ブロードバンドコンテンツ流通研究会」を組織し、検討を開始した。

6.国際化への対応

GBDe(Global Business Dialogue on E-commerce)、ICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)など国際組織関係者と意見交換の機会を持ち、国際的な動向の把握などに努めた。


14.流通委員会

(5月25日〜 平井克彦委員長)
(〜5月25日 鈴木敏文委員長)

1.流通業の再活性化への対応

IT革命の進展、景気低迷に伴う消費不振、デフレの進行等、大きく変わりつつあるわが国流通業界の現状を踏まえ、業界の再活性化に向けた今後の課題について、以下の有識者を招き、意見交換を行った。

2.規制改革要望の取りまとめ

大店立地法関連に加え、医薬品販売の規制緩和など、流通分野における規制改革要望、計26項目を取りまとめ、2001年10月に政府・与党に建議するとともに、その実現を関係方面に働きかけた。
なお、2002年1月には、特に重要度の高い4項目について再要望を行った。


15.農政問題委員会

(大國昌彦共同委員長)
(丹羽宇一郎共同委員長)

1.農政改革への対応

当委員会では、わが国農業の構造改革に向け、産業界の意見を総合的に取りまとめる観点から、従来置かれていた農政・食品工業部会および森林部会を統合し、2001年7月、新たに企画部会(部会長:松崎昭雄森永製菓相談役)を設置した。
同部会では、農政改革に向けた検討の皮切りとして、農林水産省大臣官房企画評価課の武本俊彦課長を招き、政府の農業経営政策に関する研究会で2001年8月に取りまとめられた「農業構造改革推進のための経営政策」について説明を聞いた(10月)。
また、森林・林業基本法の規定に基づき「森林・林業基本計画」が策定されたことを受け、林野庁の高橋徹企画課長より同計画について説明を聞き、今後5年間の森林および林業に関する施策などに関して意見交換を行った(12月)。
一方、農業生産法人化の推進は、農業の多様な担い手の確保や農業生産の活発化という観点から、今後ますます重要になっていくものと考えられている。こうしたことから、(社)日本農業法人協会の坂本多旦会長より、農業生産法人の現状および課題について説明を聞くとともに、わが国農業・農村が目指すべき方向性などについて意見交換を行った(2002年2月)。
さらに、各地の生産者の経営状況や特色ある取組みなど、農業生産の実態を把握することが重要であることから、秋田県十文字町認定農業者会の金沢隆志会長を招き、農業・農村の現状および課題などについて説明を聞き、種々懇談した(2月)。
加えて、こうした農業・農村の現状把握の一環として、滋賀県の特定農業法人(株)グリーンちゅうずならびに農事組合法人新免(しんめ)営農組合を訪問する現地視察会を開催し、現地の担当者より農業法人の現状および今後の課題などにつき説明を聞き、意見交換を行った(2月)。
なお、食糧庁では、コメや水田農業をめぐる現下の状況を踏まえ、従来のコメ政策を見直すとともに、当面の需給安定のための取組みを推進する観点から、2002年1月より「生産調整に関する研究会」のもと、生産調整のあり方などに関して検討を進めている。経団連からも、具体的な制度設計の検討に際し、生産調整の今後のあり方、公平性の確保を図るための措置などの諸点について、産業界の考え方を適宜伝えていくこととしている。
他方、農産物の価格支持政策に関しては、2001年度規制改革要望を通じ、小麦の価格支持制度(コストプール方式)や砂糖の価格制度(調整金徴収)など、既存制度の見直しを訴えた。

2.国際化への対応

第4回世界貿易機関(WTO)閣僚会議(2001年11月 於:ドーハ)やシンガポールとの自由貿易協定(FTA)締結などの国際的な貿易自由化の流れのなかで農業の取扱いが大きな争点となっている。こうしたなか、豪州外務・貿易省よりアラン・マッキノン特別農業交渉担当官が来日したのを機に、WTO農業交渉などに関して、意見交換を行った(2002年1月)。
また、食糧庁の山下一仁総務課長を招き、WTO農業交渉と農政改革について説明を聞くとともに、意見交換を行った(3月)。


16.国土・住宅政策委員会

(香西昭夫委員長)
(今村治輔共同委員長)
(田中順一郎共同委員長)

1.都市再生問題への取組み

都市再生問題に積極的に取り組むべきという内外の声に応えて、政府は、2001年5月、内閣総理大臣を本部長とする都市再生本部を発足させた。これに対応するため、経団連では「都市再生ワーキング・グループ」を立ち上げ、アンケート調査を実施するなど検討を行い、都市再生本部事務局において経団連の考え方を説明した(6月)。また、梅澤忠雄都市開発プロデューサー(6月)や都市基盤整備公団(8月)と、都市再生の具体的な姿や進め方などについて意見交換を行った。さらに、7月の会長・副会長会議では、グランドデザインの策定と「都市再生戦略地域」などからなる10ヵ年計画の策定などについて議論した。
加えて、10月の経団連の規制改革要望の取りまとめにあたっては、都市再生関連の要望を重点的に盛り込み、同月16日、政府の総合規制改革会議都市再生WGにおいて、規制改革要望の実現を働きかけた。
都市再生本部と意見交換を行うため、山本繁太郎事務局次長を招き、土地・住宅部会(部会長:田中順一郎三井不動産会長)などを開催した(2001年9月、2002年1月、2月)。こうした働きかけもあって、都市再生本部では、重点的に取り組むべき「都市再生プロジェクト」を選定したほか、総理指示に基づき、10年間の時限立法により「都市再生特別措置法」を成立させた(2002年3月)。
なお、OECD「わが国の都市政策に関する勧告」の日本語版出版を機に、わが国の都市再生について、ベルナール・ウゴニエOECD地域開発部長などとの懇談会を開催した(2001年11月)。

2.土地・住宅税制改正

平成14年度税制改正に向け、土地・住宅政策に関する打合せ会を開催し(2001年8月)、具体的な考え方を取りまとめ、経団連税制改正要望に盛り込んだ。自民党国土交通部会住宅(建築)・土地ワーキングチームにおいて、不動産市場活性化のための税制改正要望につき香西副会長が意見を述べた(10月)。

3.PFI事業の推進

地方自治体のPFI事業について検証作業を行うため、アンケート調査を実施し、11月のPFI推進部会(部会長:鈴木誠之清水建設常務執行役員)において中間的な報告を行った。また事業者選定手続の見直しについて、随時打合せ会を開催して議論を深めた。

4.「21世紀のわが国観光のあり方に関する提言」(2000年10月)のフォローアップ

堂本暁子千葉県知事との懇談会(2001年7月)、ヘルシンキ市長との懇談会(9月)、山形観光アカデミー講演会(11月)などにおいて、経団連の観光振興に関する提言の趣旨を説明した。
また、日比谷公会堂において東京都、JAPICと「大交流時代における観光を考える」シンポジウムを共催した(9月)。

5.その他

国土交通大臣、都道府県知事、政令市長、経済界が集う国土交通南関東地方懇談会において、辻副会長(当時)から、当該地方の社会資本整備のあり方につき意見を述べた(2001年4月)。また、国土交通省大石久和道路局長等を招き、「転換期の社会資本整備」について説明を聞くとともに意見交換を行った(5月)。さらに、名護市の担当者と沖縄金融特別区に関する打合せ会を開催した(11月)。加えて、委員会を開催し、防災・危機管理体制の現状につき、内閣府の高橋健文政策統括官から説明を聞いた(2002年2月)。


17.首都機能移転推進委員会

(濱中昭一郎委員長)

首都機能移転については、政府の国会等移転審議会が首都機能移転先候補地を3ヶ所(栃木・福島地域、岐阜・愛知地域、三重・畿央地域)選定する旨の答申を行った(99年12月)。その後、「国会等の移転に関する決議」(衆議院国会等移転特別委員会、2000年5月採択)に基づき、衆参両議院において移転先候補地を1ヶ所に絞り込み、2002年半ばを目途に結論が得られるよう検討が進められている。
当委員会では、これら答申および決議を踏まえ、引き続き国会における審議の状況を注視するとともに、首都機能移転に関する世論喚起につき、政府の諸活動に協力した。

1.首都機能移転のあり方に関する検討

国土交通省国土計画局の相澤徹首都機能移転企画課長より、首都機能移転に関する国会での審議状況などについて説明を聞くとともに、意見交換を行った(2002年3月)。

2.首都機能移転に向けた気運の醸成

首都機能移転に対する国民的な関心を喚起するため、国土交通省国土計画局作成のポスターやパンフレットを会員企業などに配布した。


18.輸送委員会

(常盤文克共同委員長)
(三浦 昭共同委員長)

1.輸出入・港湾諸手続のワンストップサービス実現に向けた取組み

産業界のかねてからの要望であった輸出入・港湾諸手続のワンストップサービスについて、当委員会では、民間の実務担当者により構成される「輸出入・港湾諸手続のワンストップサービス打合せ会」を設置し、4回にわたる検討(2001年4月、5月、6月(2回))を通じて、産業界としての要望「輸出入・港湾諸手続のワンストップサービスの実現に向けた提案」を取りまとめた。そして2001年6月、政府のIT戦略本部において、同本部の本部員でもある岸副会長より、「輸出入・港湾諸手続にかかる時間を短縮するため、全ての手続を電子的に統合して、1回の入力・送信で複数の申請を可能とするシングルウィンドウ・システムを構築する」よう提案した。
この提案を受け、財務省が「国際物流改革プラン」、いわゆる「塩川イニシアティブ」を公表(8月)、2001年度補正予算においてシングルウィンドウ・システムの整備に係る予算が計上(財務省:約17億円、国土交通省:約1.8億円)されるとともに、総合規制改革会議においても、運輸分野の重要課題として第一次答申(12月)にシングルウィンドウ・システムの整備が盛り込まれるなど、着実な進展が見られた。
その間、「輸出入・港湾諸手続のワンストップサービス打合せ会」では、政府における協議に民間事業者の意見が最大限反映されるよう、関係府省(内閣官房、財務省、国土交通省、厚生労働省、農林水産省、法務省、経済産業省)と民間事業者との意見交換会(2001年9月、11月、2002年1月、3月)を適宜開催した。とりわけ、システム構築に向けた利用者の意見を集約した結果を、経団連提案「輸出入・港湾諸手続のワンストップサービスの実現に向けて」(2002年1月)として取りまとめ、関係府省に提示した結果、1月に開催されたIT戦略本部において、経団連提案を十二分に反映した形で政府の対応が取りまとめられた。
なお、こうした検討の一環として、国土交通省の川島毅港湾局長より、港湾整備の課題と2001年度の施策の展開について説明を聞いた(2001年5月)。また、わが国の港湾整備をハード・ソフト両面においていかに進めるかという観点から、国土交通省の鬼頭平三港湾局計画課長より、今後の港湾行政の展開などについて説明を聞くとともに、意見交換を行った(9月)。

2.首都圏第3空港問題への対応

現在、政府においては、将来予想される首都圏の航空需要の増加に対応すべく、「首都圏第3空港調査検討会」(座長:中村英夫武蔵工業大学教授)のもと、首都圏第3空港の候補地を検討している。経団連では、立花常務理事が同検討会の委員として参加し、産業競争力の維持・強化という観点から、適宜意見を表明している。

3.規制改革への対応

運輸分野の規制改革については、需給調整規制の原則廃止、価格規制の弾力化等の観点から、各輸送モードにおいて諸施策が実施されてきたものの、残された課題も少なくない。
そこで、国際競争力の強化ならびに地球環境問題への対応等の観点から、車両諸元に係る規制をはじめ、合計20項目に及ぶ規制改革要望を取りまとめ、政府に建議した。

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【技術・環境・エネルギー関係】

19.産業技術委員会

(5月25日〜 庄山悦彦共同委員長)
(北城恪太郎共同委員長)
(〜5月25日 金井 務委員長)

1.戦略的かつ総合的な科学技術政策の推進

2001年1月の省庁再編により、内閣府の下に設置された総合科学技術会議が、わが国の科学技術政策の司令塔としての役割を十分に果たすよう、経団連としても積極的な協力を行った。
2001年4月には、笹川尭科学技術政策担当大臣(当時)、総合科学技術会議議員との懇談会を開催した。また、6月には、産学官連携の推進、重点4分野への重点投資など、2002年度科学技術関係予算編成への考え方を示すべく、提言「科学技術戦略の変革に向けて」を取りまとめるとともに、尾身幸次科学技術政策担当大臣との懇談会を開催し、同提言を説明した。さらには、11月に、尾身大臣との懇談会を開催し、産学官連携の推進、宇宙開発の推進、バイオの振興などについて意見交換を行った。
また、政策部会(部会長:千葉正人日本電気副社長)では、8月に、産業技術力の強化に向けた経済産業省の取組みやNEDOの民間基盤技術研究促進制度について、濱田隆道経済産業省大臣官房審議官ほか経済産業省産業技術環境局との意見交換を行った。
政策部会の下部組織である、産業技術懇談会では、4月に、NEDOの研究委託契約にかかわる制度改善などについて経済産業省と、また5月には、ナノテクノロジーおよびインターネットに関する米国の政策などについて、ジョージメイソン大学のクリストファーヒル教授、ウースター・ポリテクニク・インスティテュートのジョージヒートン教授と、さらに12月には、第7回技術予測調査について、科学技術政策研究所と意見交換を行った。

2.産学官連携の推進

2001年8月に、国際的な産業競争力の強化のためには産学官の連携が不可欠であるとの認識の下、産業技術委員会の下部組織であった政策部会大学問題ワーキンググループを改組した産学官連携推進部会(部会長:山野井昭雄味の素技術特別顧問)において、産学官が一体となって産業技術力を強化できるシステムを構築できるよう産業界の立場から検討を行い、10月に提言「国際競争力強化に向けた産学官連携の推進」を取りまとめ、閣僚・国会議員・大学などの関係者へ建議した。また、提言をテーマに主要大学の産学官連携担当者との意見交換の場を設定し、今後の具体策について検討した。
さらに、産学官連携を実際に推進するためには、産・学・官の代表者が一堂に会し、相互理解の増進を図る場が必要であるとの観点から、11月に、内閣府、日本学術会議の共催で第1回産学官連携サミットを開催した。

3.重点4分野の推進戦略への対応

第2期科学技術基本計画(2001年度〜2005年度)において取り上げられた、バイオテクノロジー、情報通信、ナノテクノロジー・材料の重点研究開発分野の振興策について、各部会で検討を進めた。

(1) ナノテクノロジー
2001年3月に策定した提言「ナノテクが創る未来社会」のフォローアップを行うべく、総合科学技術会議ナノテクノロジー・材料プロジェクトや自民党ナノテクノロジー推進議員連盟総会などの場で、意見陳述を行った。
さらに、ナノテクノロジー専門部会(部会長:中村道治日立製作所常務)では、10月に、鈴木信邦総合科学技術会議主任科学技術官より、ナノテクノロジー・材料分野の推進戦略について、また谷重男経済産業省産業技術環境局研究開発課長、藤嶋信夫文部科学省研究振興局基礎基盤研究課長より、2002年度ナノテクノロジー分野の概算要求について、説明を聞いた。2002年3月には、JEITA(電子情報技術産業協会)におけるハイエンドコンピューティングに関する検討について、懇談を行った。

(2) 情報通信
今後の情報通信技術開発のあり方について、産業界の関係者が意見交換を行う場として、2001年7月、産業技術委員会の下に、情報通信技術専門部会(部会長:吉川誠一富士通研究所取締役)を設置した。同月、桑原洋総合科学技術会議議員より、総合科学技術会議における情報通信技術分野の検討について、8月に、河内正孝総務省情報通信政策局技術政策課長ならびに岩田悟志経済産業省商務情報政策局情報通信機器課長より、また10月には、吉田大輔文部科学省研究振興局情報課長より、情報通信分野の研究開発に関する各省の取組みについて話を聞き、意見交換を行った。
また、総合科学技術会議における情報通信分野の推進戦略の策定(9月)に対応して、同戦略に対するコメントを取りまとめ、総合科学技術会議に提出した。

(3) バイオテクノロジー
バイオテクノロジー分野の重点化推進戦略策定のため、5月、9月に内閣府と意見交換し、2002年度予算、今後5年間の推進戦略の策定について、それぞれ意見交換を行った。
また、カルタヘナ議定書やバイオ分野における特許政策について、経済産業省、特許庁との意見交換を行った。

4.知的財産政策に関する取組み

経済産業省経済産業政策局および特許庁では、産業競争力強化のための知的財産権の価値最大化やアジア諸国に対する知的財産政策・通商政策等の戦略研究について検討を進めるため、10月、産業競争力と知的財産を考える研究会を設置した。
これに対応し、知的財産問題部会(部会長:丸島儀一キヤノン顧問)では、知的財産に関する諸課題のうち特に企業経営に影響の大きい事項について、提言「知的財産を核にした産業競争力の強化に関する考え方について」(2002年1月)を取りまとめ、関係方面に建議した。
その他、同部会では、グローバル化の進展ならびに司法制度改革の議論などに対応し、以下の取組みを行った。

  1. 「民事及び商事に関する国際裁判管轄権及び外国判決に関する条約準備草案」の知的財産権に関する条項について検討し、2001年11月、知的財産研究所にて意見陳述を行った。
  2. 専門訴訟への対応強化および知的財産訴訟の専属管轄化の実現に向けて、2001年12月および2002年3月、法制審議会民事・人事訴訟法部会に意見を伝えた。
  3. ライセンス契約の第三者への対抗について、2001年6月、法制審議会倒産法部会破産法分科会に意見を提出した。
  4. 2001年6月、著作権法改正に関する部会としての要望事項として、ADRや工業所有権の審査への著作権の制限条項の適用を文化庁に提出した。
  5. 技術標準と競争政策について、2001年11月、公正取引委員会と意見交換を行った。

20.海洋開発推進委員会

(5月25日〜 武井俊文委員長)
(〜5月25日 大庭 浩委員長)

1.中長期的な海洋開発戦略策定への対応

旧総理府の下に設置されていた旧海洋開発審議会では、ほぼ10年毎にわが国の中長期的な海洋開発の方向性について、答申を行ってきたが、2001年1月の省庁再編に伴い、わが国海洋開発の総合的な検討の場が文部科学省科学技術・学術審議会海洋開発分科会に移行し、同分科会において、今後のわが国の中長期的な海洋開発に関する戦略の策定に向けた検討が進められた。
それに対応して、総合部会(部会長:橋口寛信川崎重工業常務取締役)において、2001年11月に、文部科学省の大塚洋一郎海洋地球課長より、海洋開発分科会の活動状況について説明を聞くとともに、わが国の中長期的な海洋開発戦略の策定に産業界の考え方を反映させるべく、検討を進め、12月には、「わが国の今後の海洋利用のあり方に関する意見」を部会長名で海洋開発分科会に提出した。

2.提言「21世紀の海洋のグランドデザイン」のフォローアップ

2000年6月に、わが国200海里水域の海洋開発ネットワークの構築などを盛り込んだ、提言「21世紀の海洋のグランドデザイン」を取りまとめたが、同提言のフォローアップの観点から、(社)海洋産業研究会が中心となり検討を行っている「わが国200海里水域の海洋管理ネットワーク構築に関する研究」委員会の委員長である、酒匂敏次東海大学教授より、2001年12月に同委員会の活動状況について、説明を聞き、意見交換を行った。
なお、わが国の海洋科学技術開発の中心的機関である海洋科学技術センターの運営にも協力を行った。


21.環境安全委員会

(秋草直之共同委員長)
(山本一元共同委員長)

1.地球温暖化問題への対応

(1) 経団連環境自主行動計画フォローアップ
第4回経団連環境自主行動計画フォローアップを実施し、2001年10月に結果を発表した。第4回フォローアップには、昨年の34業種から新たに2業種が加わり、合計36業種が参加した。2000年度の産業・エネルギー転換部門からのCO2 排出量は、約4億8,609万t-CO2 で、90年度比1.2%増と微増であったことが明らかとなった。昨年に引き続き要因分析を実施したところ、電力原単位の改善分が−2.2%、各業種における努力分が−4.1%となった。参加業種による省エネをはじめとする温暖化対策は着実に進んでいるが、製品の高度化等による増加分+7.5%がその効果を上回ったと推察される。

(2) COP7への参加
国連気候変動枠組条約第7回締約国会議(COP7、2001年10月28日〜11月10日、於:マラケシュ)期間中、ワークショップを開催し、海外の関係者に第4回フォローアップ結果を中心に日本の産業界の取組みを説明した。

(3) 環境大臣との懇談会の開催
2001年7月に川口順子環境大臣(当時)、2002年2月に大木浩環境大臣との懇談会を開催し、今井会長、山本共同委員長から、わが国における今後の温暖化対策のあり方などについて産業界の意見を述べるとともに懇談した。

(4) 国内温暖化対策のあり方についての検討
京都議定書の批准に向けて、政府部内で国内温暖化対策の検討が進められた。経団連は、関係審議会への産業界代表委員の参加に加え、政府・与野党の関係者との緊密な意見交換を通じ、自主的取組みを中心とし、環境と経済の両立を図るべきであるという産業界の考え方が、この検討に反映されるよう努めた。

2.廃棄物・リサイクル対策

  1. 環境自主行動計画第4回フォローアップを実施し、38業種の協力を得て、業種毎の廃棄物対策ならびに産業廃棄物最終処分量の削減目標の達成状況を調査し取りまとめた。
  2. 2001年5月に内閣に設置された都市再生本部に対し、東京湾臨海部にリサイクル施設を集中的に整備するよう働きかけた。その際、アンケートを行い、東京湾臨海部でのリサイクル施設運営に関する具体的ニーズの調査を行った。
  3. 政府中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会において、廃棄物の定義・区分の見直し、業許可・施設許可のあり方、排出者責任・拡大生産者責任などについて検討が行われたことに伴い、廃棄物・リサイクル部会(部会長:庄子幹雄鹿島建設副社長)において経団連の考え方をとりまとめ、その反映を働きかけた。
  4. なお、7月、廃棄物部会を「廃棄物・リサイクル部会」と改称した。

3.土壌汚染対策法案をめぐる議論への対応

中央環境審議会で土壌汚染対策の法制化に向け検討が行われたことに対応し、大気・水質等タスクフォース(座長:河内哲住友化学工業常務取締役)を中心に産業界の意見を適宜取りまとめ、意見の反映に努めた。2000年12月から検討を開始した「土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会」(環境省水環境部長の諮問機関)は2001年9月に「土壌環境保全対策の制度の在り方について(中間取りまとめ)」を公表したが、同検討会に委員として参加した河内座長が、産業界としての考えを中間取りまとめに反映させた。中間取りまとめに関し産業界として特に主張しておくべきことについては、11月19日に「土壌環境保全の制度に関する意見」として取りまとめた。
2001年11月から検討を開始した中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会は、2002年1月に答申を取りまとめたが、河内座長をはじめとする産業界の委員から同立場の意見を出すとともに、1月11日にはパブリックコメントを提出し意見の反映に努めた。土壌汚染対策法案に盛り込まれた、対策の推進を図るために造成する基金については、汚染と因果連関のない第三者に負担を負わせることは不合理であることから、経団連としては拠出に反対であることを重ねて表明している。

4.規制改革要望の取りまとめ

廃棄物・環境保全分野危険物・防災・保安分野について産業界の規制改革要望を取りまとめ、2001年10月に政府に建議した。昨年度の経団連の要望と政府の3ヵ年計画の進捗状況を踏まえ、本年度の要望は、従来からの保安4法の性能規定化・国際整合性の推進に加え、政府が重点的に取り組んでいる石油化学コンビナート関係と産業廃棄物の3分野を重点的に取り上げ、関係方面への働きかけを行った。


22.資源・エネルギー対策委員会

(秋元勇巳委員長)

1.「エネルギー政策の重点課題に関する見解―安定供給の確保と環境・経済との調和―」の取りまとめ

当委員会では、2000年7月よりエネルギー政策のあり方について総合的な観点から検討を行ってきたが、2001年4月に資源エネルギー庁の河野博文長官を招いて、わが国のエネルギー政策に関して説明を聞くとともに、「エネルギー政策の重点課題に関する見解―安定供給の確保と環境・経済との調和―」を取りまとめた。同見解は、5月の理事会後、政府・与党他、関係各方面に建議された。
同見解の骨子は、エネルギーの安定供給(Energy Security)、環境保全(Environment Protection)、経済合理性の確保(Economic Growth)の3Eの課題を一体的に実現することを政策の基本とし、中長期的な国家戦略に基づき、その推進を図ることを政府に求めたものである。経団連の主張は、自民党で検討されている「エネルギー基本法案」に取り入れられている。

2.企画部会の設置

「エネルギー政策の重点課題に関する見解」において指摘された問題について、専門的な見地からさらに検討するため、委員会の下部組織として企画部会(部会長:石井保三菱マテリアル常務執行役員)を設置した。企画部会では月に1回程度の頻度で開催し、各方面の専門家から説明を聴取しつつ、議論を深めた。

3.規制改革への取組み

毎年実施している経団連規制改革要望に関しては、エネルギー分野について35項目の要望を取りまとめ、10月、政府に建議した。
重点要望として取り上げた原子力発電所における安全規制の高度化のうち定格熱出力一定運転については、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子炉安全小委員会での審議を経て政令が改正され、経団連の要望が実現した。

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【社会関係】

23.広報委員会

(荒木 浩委員長)

当委員会では、経済広報センターと連携し、経済界および経団連が取り組むべき重要課題を戦略的かつ効率的に広報する方策や広報体制について検討している。
2001年度は、2000年度に引き続き、2002年5月の日経連との統合を視野に入れて、経済広報センターを含めた経団連グループの広報活動のあり方について検討した。企画部会(部会長:桝本晃章東京電力副社長)では、経済広報センターとの連携強化のために、経済広報センターが行う広報内容につき審議すべく、下部組織として経済広報ワーキング・グループ(座長:桝本晃章東京電力副社長)を設け、それぞれが行うべき、また両団体が連携して行うべき広報内容を検討した。
会員広報強化の観点からは、月刊Keidanren経団連くりっぷ(月2回刊)、経団連インフォメーション(毎週金曜日刊)などの出版物の改善・拡販に、引き続き取り組んだ
経団連ホームページの改善にも取り組み、会長・副会長などの記者会見録(日英)やコメントの掲載迅速化、新団体の発足に伴うホームページ改定に向けた検討などを行った。


24.企業行動委員会

(荒木 浩委員長)

当委員会では、企業倫理確立の重要性の高まり、企業不祥事の発生、企業を取り巻く内外の環境変化などを踏まえ、96年12月、「経団連企業行動憲章」を全面的に改訂するとともに、同憲章を各企業が実践していく上での参考となる「同憲章の実行の手引き」を作成し、以降、同憲章の普及のための活動を続けている。
2001年度においても、経団連の広報誌などを通じ、会員企業・団体に対し同憲章の周知徹底を図るとともに、企業行動のあり方に関する国際会議である「コー円卓会議」や業界団体が開催するシンポジウム・講演会などに協力した。


25.社会貢献推進委員会

(武田國男委員長)

当委員会では、企業の社会貢献活動の推進と環境整備のために以下の活動を行った。

1.新しい企業の経営課題に対応した社会貢献活動のあり方の検討

社会貢献担当者懇談会の「変化する企業と社会貢献」懇談会(座長:島田京子日産自動車コミュニティ・リレーションズ担当部長)では、『この発想が会社を変える〜新しい企業価値の創造』を2001年7月に出版するとともに、社会貢献活動の評価のあり方について検討した。
また、2002年2月15日、16日に開催した社会貢献フォーラムでは、「リアクティブからプロアクティブへ〜今だからこそ、打って出る社会貢献活動を!」をテーマに、近年、企業経営において重要視されている「コーポレート・ブランド」の形成、社会的責任ある企業行動の観点から、社会貢献活動が果たす役割について討議した。

2.NPO支援税制等の社会基盤整備の推進

「社会基盤整備」懇談会(共同座長:加藤種男アサヒビール環境社会貢献部副理事、瀬尾隆史安田火災海上保険地球環境部長)では、社会貢献活動の有力なパートナーであるNPOの人的、資金的基盤強化の方策を探るとともに、企業と企業財団の連携強化について検討した。

3.2000年度社会貢献活動実績調査

2000年度の社会貢献活動の実績について調査し、339社(回答率:32.6%)から回答を得た。社会貢献活動支出額は、総額で1,345億円、1社あたり平均額は対前年度比3.2%増の4億1,600万円であった。2001年12月に調査結果要約版を公表するとともに、2002年3月末には経団連資料として出版した。


26.政治・企業委員会

(古川昌彦委員長)
(前田又兵衞共同委員長)

当委員会では、政策本位の政治を実現し、国民の政治参加を促進するための方策について検討を重ね、その具体策として96年7月、政治家と企業人との対話を深め、企業人の政治参加を促すために「企業人政治フォーラム」を設立した。
2001年度においては、政党幹部との会合などに関する同フォーラムの活動に協力した。


27.人材育成委員会

(浜田 広委員長)

1.教育改革の推進

日本の経済社会のグローバル化、国際化等が急激に進む中で、人材の育成が一段と重要度を増している。文部科学省では、教育改革国民会議報告を踏まえて「21世紀教育新生プラン」を策定してこれを推進するとともに、国際競争力のある大学づくりを目指した「大学の構造改革の方針」や、学力低下の懸念を受けた「確かな学力向上のための2002アピール(学びのすすめ)」を打ち出した。
これに対して、当委員会では、2000年3月に取りまとめた提言「グローバル化時代の人材育成について」に基づき、産業界の意見の反映に努めた。

  1. 当委員会企画部会(部会長:森尾稔ソニー副会長)では、「21世紀教育新生プラン」の取組み状況について、(1)大学改革(2001年10月)、(2)教育の情報化(11月)、(3)初等中等教育改革(12月)について、文部科学省の各担当課長から説明を聞くとともに意見交換した。経団連側からは、さらに子どもの意欲と上昇志向を高めること、伸びる人をどんどん伸ばすこと、新しい大学から送り出される学生の姿を明確にすること、などを要望した。
  2. 経団連常任理事会(2002年3月)において、遠山敦子文部科学大臣、岸田文雄副大臣より「教育改革の推進」について説明を聞いた。
  3. 新たにインターナショナルスクール問題に関するワーキンググループを設け、インターナショナルスクールと教育の多様化促進について検討した。インターナショナルスクールの現状と要望について、西町インターナショナルスクールの松本三朗名誉校長(2002年2月)、セントメリーズインターナショナルスクールの白雲龍マネージャー(3月)より説明を聞くとともに、意見交換した。
  4. 大学評価・学位授与機構より「大学評価事業」について、産業技術委員会大学問題ワーキンググループと合同で説明を聞くとともに、意見交換した(2001年5月)。さらに、産業界から同評価事業に参加している方々の意見を基に改善点を伝えた(12月)。
  5. 教育への協力事業の一環として、千葉県新任教頭研修会(2001年4月)、東京都立芝商業高等学校(11月)、インターンシップ推進全国フォーラム(12月)に対して、関係者を講師として派遣した。

2.その他

新たな環境変化に柔軟に対応した教育改革を一層推進するという観点から、教育分野における規制改革要望を取りまとめ、経団連の規制改革要望(2001年10月)の一環として、政府・与党、総合規制改革会議等に建議し、その実現を働きかけた。

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【国際関係】

28.貿易投資委員会

(槙原 稔委員長)

1.通商政策のグランドデザイン

経済のグローバル化が進展するなか、わが国としての明確な通商政策を構築すべきとの問題意識に基づき、総合政策部会(部会長:團野廣一三菱総合研究所常勤顧問)を中心として、学識経験者や政府関係者との意見交換やアンケート調査の実施などを通じて、検討を行った。
その結果、提言「戦略的な通商政策の策定と実施を求める〜「通商立国」日本のグランドデザイン〜」(2001年6月)を取りまとめた。同提言では、WTOにおける自由化およびルールの強化を目指すとともに二国間・地域による自由貿易協定を積極的に推進すること、および農政改革の推進や国内の通商法制の整備を含む国内体制の整備を行うことを求め、政府に建議した。特に、WTOに関しては新ラウンド交渉立ち上げを強く求めた他、二国間・地域に関しては長期的にASEAN、韓国、中国との市場統合および日米自由貿易協定の推進を主張した。
引き続き、二国間・地域委員会を含む関連委員会と連携を取りつつ、二国間、地域、多国間による多層的な通商政策のあり方について検討を行った。

2.WTO新ラウンドに関する取組み

  1. WTO新ラウンド立ち上げにあたってのわが国経済界の立場を取りまとめるため、総合政策部会を中心に検討を行った。その結果、「WTO新ラウンド交渉立ち上げにあたっての基本的立場」(2001年7月)を取りまとめ、7つの優先項目((1)ビルトインアジェンダの統合、(2)鉱工業品の関税引き下げ、(3)国際投資ルールの構築、(4)アンチダンピング協定の見直し、(5)電子商取引の発展促進、(6)貿易円滑化の促進、(7)知的財産権の保護強化)を設定、政府に建議するとともに、WTO本部、主要国政府、民間産業団体等に公表した。
  2. さらに、「WTO新ラウンドに向けた訪ジュネーヴ・ミッション」(2001年9月30日〜10月4日)を派遣し、ムーアWTO事務局長、ハービンソン一般理事会議長ならびに主要国政府代表等と懇談を行うとともに、わが国経済界の立場を表明した。
  3. WTO新ラウンドの立ち上がりを受け、投資ルール等、各交渉項目毎に専門家グループによる検討を開始した。
  4. その他、スパチャイ次期WTO事務局長、WTO事務局幹部、各国政府要人等とWTOの新ラウンド交渉をめぐる対話を重ねた。

3.WTOサービス貿易自由化交渉の推進

  1. 「サービス貿易自由化交渉に関する懇談会」などの会合を開催し、サービス交渉をフォローするとともに、政府関係者にわが国経済界の意見を伝えた。さらに、今後、本格化する分野別交渉のために「サービス貿易関連事業を行う上での具体障害事例」(2001年)を改訂し、2002年2月に政府に提出した。
  2. 「サービス貿易自由化協議会(JSN)」(議長:槙原稔貿易投資委員長)では、「世界サービス会議」(9月19日〜21日、於:香港)に代表団を派遣し、サービス交渉における立場を表明した。

4.通商分野の規制改革

わが国企業による円滑な通商活動を確保し、国際競争力の強化を図る目的で、政府に対する規制改革要望の一環として、(1)電器用品等に係る規格・基準・認証の規制緩和および国際的な整合化、(2)税関における通関業務の合理化・簡素化、(3)安全保障輸出管理制度の規制緩和および透明化・簡素化等の実現を働きかけた。特に安全保障輸出管理に関しては、経済産業省が抜本的な規制の見直しに着手したことから、懇談会を開催し意見交換を行った。


29.国際協力委員会

(上島重二委員長)
(日枝 久共同委員長)

1.「ODA改革に関する提言」を建議

2001年5月に外務省に「第2次ODA改革懇談会」が発足したことを踏まえ、政策部会(部会長:佐藤和夫三井物産顧問)を中心にODA(政府開発援助)のあり方について議論し、2001年10月、「ODA改革に関する提言」として、政府関係機関に建議した。同提言では、(1)ODA理念の明確化、(2)ODA予算の戦略的配分、(3)司令塔「ODA戦略会議」の設置などの組織改革、(4)開発ニーズにあった援助の実行、(5)官民連携の推進、(6)情報公開の推進、(7)内外広報活動の強化、などを主張した。

2.世界銀行グループとの交流

(1) ウォルフェンソン総裁との懇談(2001年10月)
同総裁は、席上、貧困と不平等の撲滅なくして世界平和の実現は困難である、民間セクターとの協調について共に考えていきたい旨発言した。

(2) ジャブレ国際金融公社(IFC)副総裁との懇談(2002年1月)
席上、同副総裁からは、IFCにとって日本企業は重要なパートナーであり、今後は、IT分野についても、協力関係を深めていきたい旨の発言があった。

(3) 人事交流プログラム会議への参加
対世銀タスクフォース(座長:吉田進住友化学技術・経営企画室部長)は、5月9日〜10日に開催された、世銀主催のスタッフ・エクスチェンジ・プログラム会議に参加し、世銀と日本企業のパートナーシップのあり方についてプレゼンテーションを行った。また、世銀との今後の交流のあり方について意見交換した。

3.国際貢献・人材派遣の推進

国際貢献・人材派遣部会(部会長:篠原巌日本電気執行役員専務)において、途上国に対してわが国民間企業の経験、知識、ノウハウを移転することを通じた知的支援を推進した。具体的には、ODA技術協力予算を活用した民間セクターアドバイザー専門家派遣スキームによって、経団連会員企業の人材(短期1名、長期4名)の派遣を行った。

4.国際文化交流の促進

(1) シンガポール日本語選択高校生支援事業(参加企業懇談会座長:岩谷徹郎岩谷産業会長)
シンガポール日本人商工会議所、国内高等学校5校の協力を得て、ラッフルズ・ジュニア・カレッジで日本語を選択する高校生に奨学金を支給するとともに、8名を2001年6月4日から20日にかけて日本に招聘した。

(2) マレーシアISIS日本研究センター支援事業(参加企業懇談会座長:日枝久フジテレビジョン社長)
91年より行っている同センターへの資金援助を本年度も継続した。


30.OECD諮問委員会

(生田正治委員長)

1.概要

  1. OECD(経済協力開発機構)は、先進30カ国が参加する国際機関として、60年の設立以来、マクロ経済政策、貿易・投資、環境、科学技術、規制改革、情報通信などの分野を中心として研究・分析し、加盟国政府に対して政策提言を行っている。
  2. BIAC(The Business and Industry Advisory Committee to the OECD)は、OECD各加盟国を代表する経済団体で構成される公式の諮問機関である。OECDの活動に産業界の意見を反映させるべく、11の専門委員会(化学物質、経済政策、雇用・労働・社会問題、環境、情報・コンピュータ・通信政策、国際投資・多国籍企業、海運、原料、税制・財政、産業技術、貿易)および5のエキスパート・グループ(競争法・政策、教育、規制制度改革、移行経済・開発問題、バイオテクノロジー)において、専門的な検討を行い、様々な提言をしている。
    なお、2001年9月より、教育エキスパート・グループは教育委員会に、2001年11月より、規制制度改革エキスパート・グループはガバナンス委員会にそれぞれ改組された。
  3. わが国は、OECD諮問委員会を通じてBIACの活動に参加している。

2.主な活動

(1) BIAC総会・企画会議への参加
2001年11月のBIAC企画会議(於:パリ)に生田委員長他が参加しBIACの今後の活動について日本の経済界の立場から意見を述べた他、2001年5月のBIAC総会(於:パリ)にも代表を派遣した。
なお、生田委員長は、2000年4月以来、BIAC副会長を務めている。

(2) BIAC本部会合への委員の派遣
日本企業の代表を、BIACの各委員会やOECDの開催する会合に派遣した(2001年度は、情報通信、産業技術、経済政策、税制などの分野を中心に、25会合に延べ17名が出席した)。
こうした活動に関する記事を、機関紙「BIAC NEWS」に随時掲載するとともに、2001年12月には「BIAC産業技術委員会報告会」を開催し、関係企業に広く紹介した。

(3) 総会等の会合開催
2001年5月31日に、2001年度(第27回)総会を開催し、外務省の小田部陽一経済局参事官より、閣僚理事会の模様を中心に、最近のOECDの活動状況について説明を聞いた。
また、2001年9月に根津利三郎前OECD科学技術産業局長およびワースBIAC事務総長との懇談会を開催し、OECDやBIACの活動をめぐり意見交換した。
以上の他、貿易局や科学技術産業局等のOECD事務局幹部と懇談した。

(4) 改訂多国籍企業ガイドラインに関する活動
OECDは、2000年6月の閣僚理事会において多国籍企業の進出先国における行動のあり方を示した多国籍企業ガイドラインの改訂版を採択した。2001年6月には、各加盟国においてガイドラインの普及および円滑な実施を行うナショナル・コンタクト・ポイント(わが国は外務省経済局国際機関第二課)の年次総会が開催されたのを受けて、外務省経済局の川村泰久国際機関第二課長を招き、「ナショナル・コンタクト・ポイント年次会合をめぐる懇談会」(10月)を開催した。

(5) 広報活動
機関紙「BIAC NEWS」を定期的に(年6回)発行し、BIACやOECDの活動を紹介したほか、「BIACの組織と活動」(2001年6月)を改訂し、発行した。

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