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月刊 経団連 巻頭言 若者の声を活かそう

矢野 薫 (やの かおる) 経団連審議員会副議長/日本電気会長

確実に訪れる超高齢社会を目前にして、国民の生活や社会の安心を担保する社会保障制度に対する信頼が低下してきている。

安心で安全な社会の構築に向けて、社会保障と税の一体改革の議論を深めなければならないが、その議論の中心に若者、すなわち現役世代がいることが重要だ。若者は現在の制度の支え手であると同時に将来の受給者であり、これからの社会の担い手である若者の声を聞かずに議論を進めるわけにはいかない。

しかし、今、若者の声は政治に届きにくくなっている。国政選挙での20歳代の投票率は、70%を超える高年齢者に比べ、30%台と極めて低い。そもそも20歳代の投票者数は全体の8%にすぎず(2010年参議院通常選挙)、政治家の目が高年齢者層に向きがちになるのもうなずける。

今後、若者人口はさらに減少し、高年齢者はさらに増える。若者の政治参加については、これまでも選挙年齢の引き下げ、インターネット選挙の導入など、さまざまな改革の議論が行われてきた。最近では、世代ごとに代表を選ぶ「年齢別選挙区制度」などの新たな提案もみられる。若者参加のもとで社会保障制度の改革を行うために、こうした議論を前に進めることが求められる。

福祉先進国である北欧諸国では、子育てや雇用など現役世代への支援も厚い。それに対して、日本の社会保障給付は、年金や医療・介護など引退世代に偏っており、社会保障改革は、自分とは縁遠い議論だと感じている若者が多いのではないか。制度が複雑になっていることもその背景にあるが、若者にとっても身近な議論であるということを知ってもらうことが何よりも大切だ。

「社会保障・税一体改革関連八法」の成立によって、財源確保に向けては一歩を踏み出したが、給付の効率化・重点化、世代間の公平性確保など、社会保障改革自体の議論はこれからだ。日本をどのような国にしたいのか、どのような社会で暮らしたいのか、若者たちには将来に向かってもっと夢や希望を語ってもらいたい。そして、私たちの世代はその声に耳を傾け、共に新たな日本をつくっていかなければならない。

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