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月刊 経団連 巻頭言 世界に誇る健康増進・予防先進国を目指して

斎藤勝利 (さいとう かつとし) 経団連副会長/第一生命保険会長

安倍政権は、三本目の矢となる「成長戦略」の具現化に向けた重点課題の一つとして、「健康長寿社会の実現」を取り上げた。こうした社会の実現には、革新的な医療技術の開発といったハード面の戦略が重要であるが、同時に「セルフメディケーション」、つまり自らが健康増進や予防に取り組むといったソフト面での身近な対応も欠かせない。

わが国では、今年4月より新たな国民健康づくり運動として「健康日本21(第二次)」がスタートした。このような国をあげた対策は、実のところ1970年代から展開されてきたが、この間、生活習慣の変化等に伴って、生活習慣病が国民医療費(医科診療医療費)の約3割、死因の約6割を占めるに至っている。世界保健機関によると、非感染性疾患(生活習慣病)の患者が一割増加すればGDPを0.5%低下させるという試算もあり、経済成長にもマイナスの影響を及ぼす。

今後は、「健康日本21(第二次)」の目標に掲げられている、健康で生活できる期間、いわゆる健康寿命をいかに延伸させるかが肝要となる。平均寿命と健康寿命の差は、不健康な期間であり、その差は約10年となっている。健康増進や予防の推進によって、この差を短縮できれば、国民の生活の質(QOL)を高めるとともに、結果として医療や介護費用の軽減も期待できる。

企業にとっても、健康な従業員が収益性の高い企業をつくるという「ヘルシーカンパニー」(ロバート・ローゼン)の考え方に通じる。つまり、従業員の生活の質を高めるだけではなく、生産性の低下を防ぎ、医療費を軽減することで、収益性の向上にも寄与するというわけだ。

わが国が、世界に先駆けて、「経済社会の活力を維持しつつ生産性向上を図ることができる健康長寿社会」を実現するためには、健康増進や予防を国民的課題として、すべての主体が積極的に取り組む必要がある。その際には、何らかのインセンティブを設けたり、自助努力に対する支援を行ったりするなど、国が具体的な施策を検討・実施することが求められよう。

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