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月刊 経団連  座談会・対談 成長産業としての農業 ―抜本的な競争力強化に向けて

生源寺眞一
名古屋大学大学院生命農学研究科教授

高橋はるみ
北海道知事

萬歳 章
全国農業協同組合中央会会長

十倉雅和
経団連審議員会副議長・農政問題委員会共同委員長
住友化学社長

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十倉雅和 (経団連審議員会副議長・農政問題委員会共同委員長/住友化学社長)
高齢化や後継者不足に悩む日本の農業の成長産業化・競争力強化を進めるためには、企業も含め、経営感覚溢れる新たな担い手を確保していくことが急務である。経団連としても、JAや日本農業法人協会との連携等を進めている。住友化学では、農業経営、農業者を総合的にサポートする「トータル・ソリューション・プロバイダー」というビジネスを全国に展開し、実際に農業法人も運営している。政府には、イノベーションを促すような経済界と農業界の連携の取り組みを支援してほしい。

萬歳 章 (全国農業協同組合中央会会長)
農業者の所得増大、農業の競争力強化を図るには、経済界と農業界が連携して、国産農畜産物のバリューチェーンを構築する必要がある。経済界と農業界で認識を共有しつつ、具体的な「提携」を生み出していかなければならない。現在検討を進めているJAグループの自己改革にあたっては、外部有識者の意見を取り入れつつ、組合員目線で検討を進め、その考えを早急に取りまとめたい。JAグループは、農業者の所得増大や地域の活性化等に向け、引き続き役割を果たしていく。政府には、農業者・農業団体の取り組みの後押しをお願いしたい。

高橋はるみ (北海道知事)
北海道は、食料自給率が200%で、カロリーベースでは日本全体の約二割を生産している。耕地面積においても都府県平均の15倍を誇り、EU並みの大規模化が進んでいる。一方で、農産物の付加価値を上げることが課題であり、たゆまぬ技術開発や企業との連携強化、独自の表示制度「ヘルシーDO」の導入等によって克服の努力をしている。政府の農政改革においては、全国一律に議論されることで、北海道の農業が伸びなくなることを危惧する。地域の違いが反映された政策を望む。

生源寺眞一 (名古屋大学大学院生命農学研究科教授)
日本の農業全体が縮小しているように語られているが、施設園芸や畜産など成長している部門もある。土地利用型農業で生計を立てるには、規模拡大を進めつつ、品目の多角化や食品産業の要素の導入などによって「経営の厚みを増す」ことが求められる。また、輸出拡大には、プロダクトアウトではなく、マーケットインの発想を持たなければならない。これからの農業政策は、納税者・消費者の立場から納得できるものであるか、次世代の農業の担い手を支えるものになっているかが問われる。

根本勝則 (司会:経団連常務理事)

  • ●日本の農業の現状・課題
  • 農業が直面している課題に取り組むことは日本の将来にとって重要である
  • 農業が果たす多様な機能を評価してほしい
  • 北海道農業の四つの課題とその対策
  • ●農業の成長産業化・競争力強化に向けて必要な取り組み・施策
  • 多角化、六次産業化で経営の厚みを増す
  • 経済界との連携で国産農畜産物のバリューチェーンを構築する
  • 企業の技術・ノウハウを活かして地域農業を活性化する
  • 成長産業化の成功事例を積み上げる
  • 輸出拡大に向けて経済界、政府との連携を強化する
  • マーケットインの発想を持って輸出拡大を目指せ
  • ●農協改革に向けた取り組み
  • 徹底した議論のなかでJAグループの自己改革を進める
  • ●政府の農政改革に対する期待
  • 地域ごとの違いを反映できる政策を求める
  • 地域ごとに多様な経営体モデルを示す
  • イノベーション創出を促す取り組みに支援を
  • 次世代の農業の担い手を支える農政を

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