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月刊 経団連 巻頭言 ミャンマーと日本企業のこれから

鈴木茂晴 (すずき しげはる) 経団連審議員会副議長/大和証券グループ本社会長

昨年11月に総選挙が実施され、4月からアウン・サン・スー・チー氏を党首とするNLD(国民民主連盟)を中心とした新政権が誕生する。思えば、テイン・セイン政権の誕生した2011年以降の4年間、日本では毎日のようにミャンマー関連記事が新聞をにぎわしていた。

大和証券グループも20年に及ぶミャンマーとの関係、そして日本の官民のイニシアティブのもと、昨年12月に開設されたヤンゴン証券取引所立ち上げのお手伝いをすることができた。新政権発足など民主化が進むミャンマーで、資本市場の発展が経済成長を後押しする枠組みが整う。

しかし、欧米による経済制裁下、日本はアドバンテージを本当に享受していたのだろうか。外資開放の流れのなか、ミャンマーで日本の存在感は維持できるのだろうか。

NLDには、欧米に留学した経験のある知識層が数多く在籍するという。ミャンマー政府の奨学金制度で派遣される留学生の多くは欧米のブランド大学への留学を志向しており、欧米の企業もまた、ひそかに留学生の誘致を積極的に行ってきたという。ミャンマーの次の時代を担う若者は、こうして着実に欧米勢に囲い込まれてきた。NLD政権により今後さらなる民主化、外資開放の流れが加速するであろうが、そうしたなか、欧米シフトは鮮明になると思われる。

日本政府は、ミャンマーの優秀な人材を確保することの重要性を意識しており、獲得競争の問題意識のもと、経済産業省・文部科学省が産学官でミャンマー人材の日本への留学機会を増やし、日本企業の就職につなげる枠組みを立ち上げている。当社も大和日緬基金を通じて金融・資本市場分野におけるミャンマーの中核的人材育成の支援を行っている。

日本企業がミャンマーの地でビジネスを発展させていくためには、現地で収益を上げることだけでなく、ヒトとのつながりを築き、人材育成や社会・地域貢献を継続していくという姿勢がより大事なのではないだろうか。今後は産学官で協力して、ミャンマーと日本との間の“ヒト”と“ヒト”のつながりをさらに深めるよう努めていきたい。

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