未来を創る人材育成
一段と加速する企業活動のグローバル化やIoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能などの技術革新を通じた「Society 5.0」(超スマート社会)の実現により、社会や産業構造が劇的に変化すると予想されている。来春、小学校に入学する児童が成人を迎える2030年ごろには、今ある仕事の半分がなくなるといった衝撃的な試算もあるほどだ。
一段と加速する企業活動のグローバル化やIoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能などの技術革新を通じた「Society 5.0」(超スマート社会)の実現により、社会や産業構造が劇的に変化すると予想されている。来春、小学校に入学する児童が成人を迎える2030年ごろには、今ある仕事の半分がなくなるといった衝撃的な試算もあるほどだ。
ICTの急速な進化を背景としたIoTやAI、ロボット等の技術革新が産業・社会構造を劇的に変化させるといわれ、すでに諸外国や企業の間で競争が激化しつつある。こうしたなか日本政府は、昨年よりSociety 5.0、第4次産業革命といったコンセプトを打ち出し、さまざまな取り組みを開始している。経団連では、Society 5.0を日本発のコンセプトとして、普及・推進の後押しをすべく、今年4月に提言「新たな経済社会の実現に向けて」を公表した。この提言の内容を踏まえ、Society 5.0実現に向けた現状と課題について議論する。
内山田竹志 (経団連副会長、未来産業・技術委員長/トヨタ自動車会長)
経団連の未来産業・技術委員長として、また総合科学技術・イノベーション会議の民間議員として、政府の「第5期科学技術基本計画」の策定に積極的にコミットしてきた。基本計画では、Society 5.0をコンセプトとして掲げ、その実現に向けて、政府、産業界、アカデミアそれぞれの果たすべき役割を明確に示すことができたと思う。Society 5.0の実現には、省庁・法制度・技術・人材・社会受容という5つの壁がある。産学官の連携を進め、これらの解消に取り組んでいきたい。
中西宏明 (経団連副会長、情報通信委員長/日立製作所会長)
日立グループとして、インフラ技術と先進的なITを組み合わせてトータルソリューションを提供する「社会イノベーション事業」に取り組むなかで、第4次産業革命、Society 5.0を推進する必要性を痛感した。デジタライゼーションの流れのなかで、日本の産業構造自体が劇的に変わること、また変われなければ日本の競争力が失われてしまうことを、産学官各分野のリーダーは認識する必要がある。研究者には、自らの知的欲求や関心を追求するだけでなく、社会的課題と向き合い、研究を通じて解決を目指す姿勢が求められる。
新井紀子 (国立情報学研究所社会共有知研究センター長)
2030年までにホワイトカラーの仕事の半分が機械に代替されると予測し、日本社会で危機感を共有してもらうためにあえて「ロボットは東大に入れるか」という刺激的なプロジェクトに取り組んできた。プロジェクトを通して、これまでの教育改革が十分に機能していないということが見えてきた。エビデンスに基づいた教育改革は急務といえる。日本の強みは、科学技術と「人」である。2030年にソフトランディングするためにも、人材育成に尽力していきたい。
橋本和仁 (物質・材料研究機構理事長)
総合科学技術・イノベーション会議では、「第5期科学技術基本計画」の策定にあたり経済界のコミットメントを強く求めてきた。産業競争力会議では「日本再興戦略2016」の最重要項目として「第4次産業革命の実現」を位置付けることができた。物質・材料研究機構理事長としては、当機構を材料に関するオープンイノベーションの「場」とするために、各企業トップに協力をお願いしている。総論賛成・各論反対とならないように、オープンイノベーションを実現しなければ生き残れないという意識を現場レベルまで浸透させていくべきだ。
江間有沙 (司会:東京大学教養学部附属教養教育高度化機構特任講師)
夏季フォーラム2016第1分科会「Society 5.0の創出」の模様
(経団連産業技術本部)
【提言】
データ利活用推進のための環境整備を求める
― Society 5.0の実現に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/054.html
内山田竹志 (経団連副会長、情報通信委員長/トヨタ自動車会長)
中西宏明 (経団連副会長、情報通信委員長/日立製作所会長)
近藤史朗 (経団連情報通信委員長/リコー会長)
【寄稿】
「日本再興戦略2016」の概要および第4次産業革命の実現に向けた取り組み
内閣官房日本経済再生総合事務局
製造業の未来
―第4次産業革命に向けたドイツ・日本の進路
ウルリッヒ・グリロ (ドイツ産業連盟(BDI)会長)
エストニア
―スーパースマート国家
ラウル・アリキヴィ (日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会理事)
IoTで拓く日本の未来と課題
坂村 健 (東京大学大学院情報学環教授)
オープンリサーチデータとデータプラットフォーム
喜連川 優 (国立情報学研究所所長)
期待を実現し、不安に備える
―第2次機械時代の経済社会構想
若田部昌澄 (早稲田大学政治経済学術院教授)
人工知能をめぐる技術動向とわが国産業への適用可能性
松尾 豊 (東京大学大学院工学系研究科准教授)
中央銀行とフィンテック
小早川周司 (日本銀行決済機構局参事役)
高精度な3次元地図情報によるSociety 5.0の実現
岡村将光 (三菱電機常務執行役)
人工知能の研究から実用化へ
― Preferred Networksの取り組み
岡野原大輔 (Preferred Networks 取締役副社長)
アジアの持続的成長に向け、アジアの経済界首脳が意見交換
―第7回アジア・ビジネス・サミット
http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/052.html(共同声明)
榊原定征 (経団連会長)
【提言】
同一労働同一賃金の実現に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/053.html
鵜浦博夫 (経団連副会長・労働法規委員長/日本電信電話社長)
岡本 毅 (経団連副会長・雇用政策委員長/東京ガス会長)
進藤清貴 (経団連雇用政策委員長/王子ホールディングス会長)
アジア・欧州関係の次の10年に向けて
―第15回アジア欧州ビジネス・フォーラムに参加して
伊藤雅俊 (経団連審議員会副議長、アジア・大洋州地域委員長/味の素会長)
地球は持続可能か? 生物多様性、資源、環境問題
―ディッチリー財団主催の国際会議報告
手塚宏之 (経団連環境安全委員会地球環境部会国際環境戦略ワーキンググループ座長/JFEスチール技術企画部理事)
超早期発見と先端医療社会の構築
―「がん撲滅サミット2016」へのご支援のお願い
鈴木義行 (福島県立医科大学医学部放射線腫瘍学講座主任教授・先端がん免疫治療学講座教授)
地域と企業の連携が未来を生み出す
海と生きる
―宮城県気仙沼市の選択
あの時、あの言葉
新しい価値の創造
峰岸真澄(リクルートホールディングス社長兼CEO)
Essay「時の調べ」
ラグビー日本代表チームへのメンタルトレーニング
荒木香織(園田学園女子大学人間健康学部教授)
カナダの首都オタワで考えた!
山越厚志(経団連米国事務所長)