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月刊 経団連

月刊 経団連2016年11月号

特集 生産性向上に向けた社会資本整備のあり方

巻頭言

地方創生に思う!

岡本圀衞 (経団連副会長/日本生命保険会長)

大好きな熊本。その熊本が予想だにしない大震災に見舞われた。それも、揺れが2000回以上もあったとのこと。どれだけ大変だったことだろう。知人も多いだけに口惜しく、身につまされる思いがする。 好きな熊本には何度も行っている。 熊本城は、さすが“オラが城”として誇りを持たれる最高の城だ。けれど、熊本には、ほかにも素晴らしい所がたくさんある。

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特集

生産性向上に向けた社会資本整備のあり方

近年、社会インフラの老朽化・陳腐化が急速に進み、維持管理や更新にかかるコストが増加している。引き続き豊かな国民生活を実現していくためには、厳しい財政事情のなかで、社会資本のストック効果を高める取り組みを強化し、ICT、ロボット技術やビッグデータ等の利活用などを通じ、既存インフラの効率的な維持管理や戦略的な整備を進める必要がある。人口減少社会を迎え、労働力不足が深刻化するなか、日本全体の生産性向上に資する、戦略的な社会資本整備のあり方について議論する。

座談会:生産性向上に向けた社会資本整備のあり方

  • 下村節宏 (経団連審議員会副議長・産業競争力強化委員長/三菱電機相談役)
  • 川合正矩 (経団連社会基盤強化委員長/日本通運会長)
  • 菰田正信 (経団連都市・住宅政策委員長/三井不動産社長)
  • 毛利信二 (国土交通審議官)

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下村節宏 (経団連審議員会副議長・産業競争力強化委員長/三菱電機相談役)
日本は、社会インフラが一斉に老朽化するという初めての経験に直面している。科学技術、社会工学、ICT、ファイナンス等、異分野が連携して対策を講じなければならない。特に、ICT等の活用により、既存の社会インフラの生産性を最大限に引き出すことが求められている。企業の生産性向上に向けては、社会インフラを通じて得られるデータの利活用が今後の課題である。行政が保有するデータのフォーマットを統一・標準化し、オープン化することで、産業界にその利活用を促せば、社会インフラの効率的な維持管理も可能となる。

毛利信二 (国土交通審議官)
人口減少に直面している日本にとって、経済成長の鍵は「生産性向上」である。国土交通省は、今年を「生産性革命元年」と位置付け、石井大臣のリーダーシップのもと、社会全体の生産性向上につながる、ストック効果の高い社会資本の効果的整備・活用に取り組んでいる。社会資本整備にあたっては、「予防保全」による戦略的メンテナンスや有効活用(賢く使う取り組み)、目的・役割に応じた選択と集中の徹底等が不可欠である。民間との対話を重視し、プロダクトアウトではなく、マーケットインの考え方により社会資本整備を進めていきたい。

川合正矩 (経団連社会基盤強化委員長/日本通運会長)
物流業は、道路・港湾・空港・鉄道などの社会資本を利用して事業を営んでいるため、社会資本の整備状況から大きな影響を受ける。物流業界としては、共同配送やモーダルシフトなど、企業・業界が連携して生産性向上に取り組む一方、政府には市場のニーズに応える物流を実現するための社会資本整備を望む。その意味では、首都圏3環状道路のミッシングリンク解消や、新たな高速道路料金導入による渋滞緩和などを高く評価する。「生産性革命プロジェクト」のさらなる推進を期待している。

菰田正信 (経団連都市・住宅政策委員長/三井不動産社長)
経済の成熟に伴い、社会資本の利用方法の見直しや、公共投資によって都市機能を向上させることが必要である。PPPやPFIの手法を用いて既存の公共施設を高度化、多機能化することで、社会資本に新たな価値を加えることも求められる。また、ハード面だけでなく、マスタープランや法制度といったソフト面の整備も生産性向上にかかわってくる。とりわけ、街ぐるみで地域価値の向上を図るエリアマネジメントの取り組みが重要になるだろう。さらには、都市において新たなビジネスを継続的に生み出していくため、優秀な人材の相互作用によるオープンイノベーションの場をつくり出していく必要がある。

根本勝則 (司会:経団連常務理事)

  • ● 社会資本と生産性の関係
  • 「生産性革命元年」と位置付け、取り組みを強化
  • ユーザーである企業の視点を踏まえたインフラ整備を
  • ハード・ソフト両面の整備で、都市の国際競争力を高める
  • 稼働率の向上と長寿命化が鍵
  • ● 既存の社会インフラの有効活用
  • 「予防保全」と「賢く使う取り組み」で既存インフラを最大限活用
  • 「ミッシングリンク」解消と「賢い料金設定」によるストック効果
  • PPP・PFIの手法を用いて既存の公共施設を高度化・多機能化する
  • ICTの利活用で既存インフラの効果を最大限に引き出す
  • ● 今後の社会インフラへの投資の方向性
  • 維持管理の省力・省人化に向けたICTの利活用
  • 低廉かつ高効率な輸配送を実現するための道路整備を
  • ストック効果を最大化させる「戦略的インフラマネジメント」
  • ● 企業の生産性向上に向けた社会インフラへの期待と課題
  • 社会課題の解決に挑戦する「都市づくり」
  • 行政が保有する社会インフラのデータをオープン化するべき
  • モーダルシフトの推進と自動隊列走行の実現
  • 社会資本整備もプロダクトアウトからマーケットインへ

建設業における生産性向上とi-Constructionへの期待
 宮本洋一 (清水建設会長)

  • IoTやICTにより建設業におけるイノベーションは本格化
  • 建設生産プロセス全体の最適化を目指す「i‐Construction」
  • 「i‐Construction」への転換とその実現に向けて

建設技能者一人ひとりの技能・経歴等の“見える化”
―「建設キャリアアップシステム」構築に向けた官民の取り組み
 山内隆司 (大成建設会長)

  • 建設業の生産プロセスの特殊性
  • 「建設キャリアアップシステム」の構築
  • 生産性向上への期待

既存住宅市場の活性化に向けた条件
 浅見泰司 (東京大学大学院工学系研究科教授)

  • 既存住宅市場活性化の条件
    ~消費者からの視点
  • 既存住宅市場活性化の条件
    ~社会からの視点

物流(トラック輸送)の生産性向上に向けて
 野尻俊明 (流通経済大学学長)

  • 物流の課題
    ~深刻な労働力不足
  • キーワードは「生産性向上」
  • トラック運送業の労働環境や取引慣行改善に向けた動き
  • 課題克服には危機認識の共有と相互連携が不可欠

市場規律に基づく資金分配と生産性向上
―不動産証券化による社会資本整備
 内藤伸浩 (不動産証券化協会専務理事)

  • 不動産証券化の発展
  • Jリートを中心とする資金循環
  • 成長産業への施設提供と民間資金・ノウハウの投入
  • 市場規律に基づく資金分配

東北と世界を空で結び、人・モノの活発な交流を
 岩井卓也 (仙台国際空港社長)

  • コンセッション制度の活用
  • 国管理空港の民営化第1号案件「仙台空港」
  • 「プライマリー・グローバル・ゲートウェイ」の実現を目指して

クルーズ時代に対応したにぎわいのある新しいかたちのみなとづくり
 高島宗一郎 (福岡市長)

  • 福岡市と博多港・クルーズ船寄港の現状
  • 福岡市の供給力不足
  • クルーズ需要の増加と福岡のポテンシャル
  • ウォーターフロントネクスト
    ~海のゲートウエー機能・MICE機能の強化に向けた新しいかたちのみなとづくり

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一般記事

【提言】
独占禁止法の審査手続・課徴金制度に関する意見

http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/080.html
 永易克典 (経団連副会長・経済法規委員長/三菱東京UFJ銀行相談役)

  • 基本的な視点・考え方
  • 適正手続の確保、協力型事件処理体制の構築
  • 課徴金制度の見直し

【提言】
輸出・海外展開の加速化に向けて

― 農業の国際競争力強化に関する提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/077.html
 十倉雅和 (経団連副会長・農業活性化委員長/住友化学社長)
 佐藤康博 (経団連審議員会副議長・農業活性化委員長/みずほフィナンシャルグループ社長)

  • 今こそ先端・成長産業への変革の好機
  • アグリ・フードビジネス全体で稼ぐ視点を
  • ビジネスとして持続的な輸出・海外展開の実現へ~具体的施策
  • 「経済界と農業界との連携プラットフォーム」を活用

日越経済関係の強化を目指しベトナムミッションを派遣
― 政府要人との懇談および日越共同イニシアティブ第6フェーズのキックオフ会合を開催
 高橋恭平 (経団連審議員会副議長・日本ベトナム経済委員長/昭和電工会長)
 中村邦晴 (経団連審議員会副議長・日本ベトナム経済委員長/住友商事社長)

  • ハノイ(8月22~23日)
  • ホーチミン、バリアブンタウ省(8月24日)

2020年に向けて、196カ国のKIMONOで世界をひとつに
 髙倉慶応 (イマジン・ワンワールド代表理事)

  • 196カ国の美をKIMONOで表現
  • ANA 成田=プノンペン線初便就航式典で大反響
  • ミャンマー、ヤンゴン地域政府首相による賛辞
  • 国の財産となり得る美や技巧の創出を

連載

  • 地域と企業の連携が未来を生み出す
    歴史・文化に根差した集中と選択
    ―北陸の産業戦略

    • ライフサイエンス・高機能新素材の2分野に重点化
    • 北陸新幹線開通で「地の利」を得る
    • 重点2分野をけん引する澁谷工業
    • 偶然を必然に、失敗を成功に変える「社風」
  • 経営者のひととき
    事実を見極めること
    V・スリラム(インフォシス リミテッド日本最高顧問)

  • Essay「時の調べ」
    接続詞は論理的か
    石黒 圭(国立国語研究所日本語教育研究領域代表・教授)

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