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月刊 経団連 座談会・対談 アジアとの経済関係強化に向けて ―ASEANを中心に

大林剛郎
経団連経済外交委員長
大林組会長

伊藤雅俊
経団連審議員会副議長、アジア・大洋州地域委員長
味の素会長

木村福成
慶應義塾大学経済学部教授/ERIAチーフエコノミスト

飯島彰己
経団連副会長、国際協力委員長
三井物産会長

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飯島彰己(経団連副会長、国際協力委員長/三井物産会長)
ASEANを中心とするアジアは、生産拠点ならびに市場という両方の観点から日本企業にとって重要な地域である。アジアの魅力としては、多様性、FTAなど制度面での経済連携の深化、サプライチェーンを支える交通インフラの整備の3つがある。世界の一部で反グローバル化が台頭しつつあるなか、アジア地域が今後も世界経済をけん引していけるよう、日本は官民連携のもと、地域経済統合の推進、輸出を通じたインフラ整備への貢献、各国におけるビジネス環境の整備に取り組む必要がある。

木村福成(慶應義塾大学経済学部教授/ERIAチーフエコノミスト)
世界で反グローバル化の声が強まるなか、日本とASEANは、一貫して自由貿易を推進し続けている。ASEANは、グローバル化による経済成長を自国の発展につなげてきた。その意味で、日本とASEANのパートナーシップは、ますます重要になってくる。ASEAN諸国が新たなイノベーションを生み出していくには、高度人材を引きつける魅力、「都市アメニティー」が必要である。この分野は、日本企業にとって新たなビジネスチャンスとなるだろう。

伊藤雅俊(経団連審議員会副議長、アジア・大洋州地域委員長/味の素会長)
日本企業は早くから東南アジアに着目し、長期間にわたって良好な関係を築いてきた。当社も60年前から、輸出ではなく現地生産のかたちで事業を展開してきた。その際、地元の人々の生活に密着することが大切であると考え、現地スタッフが、現金で、現物を直接販売する「3現主義」を貫いてきた。現在は、ASEAN各国で調味料分野においてトップブランドの地位を確立している。今後も、地域の人々の生活の質の向上に貢献することで、当社のみならず日本全体のブランド価値を高めていきたい。

大林剛郎(経団連経済外交委員長/大林組会長)
日本国内の公共投資が減っていくなか、建設業界としては、これから成長する国々に活路を見いだしていく。なかでもアジアは、歴史的関係から培われた人脈や経験、知識があり、地理的にも近いため、大型プロジェクトを進めやすい。当社としては、最も成功しているタイをモデルケースとして、ASEAN各国に事業を展開していきたい。ODAを含む公共事業では、透明性の向上、コンプライアンスの徹底が求められる。相手国政府・企業とグローバルスタンダードに基づいた契約の締結と履行がなされるよう、日本政府の後押しを期待する。

椋田哲史(司会:経団連専務理事)

  • ● 減速する世界経済のなかで高まるアジアの重要性
  • 3つの魅力――多様性、経済連携、交通インフラの整備
  • 今後20年間で5%台後半の経済成長を続けるポテンシャル
  • アジアとの歴史的関係から培われた人脈と知識
  • 日本とASEANがグローバル化をテコに経済成長を実現してきた
  • ● アジアにおける事業展開の現状
  • 「Eat Well, Live Well」をアジアで実践する
  • タイをモデルにASEAN諸国で事業を拡大していく
  • アジアのインフラ整備に貢献し続ける
  • ASEANの「都市アメニティー」充実が日本企業のビジネスチャンス
  • ● アジアへ事業を拡大するうえで克服すべき課題
  • アジアの多様性への対応が重要課題
  • 現地企業になりきる「3現主義」の徹底で、トップブランドの地位を守る
  • ASEAN各国の経済団体を強化することが重要
  • ● 問題解決に向けて企業や経済界に求められる取り組み
  • 米国のTPP離脱も見据えた戦略の練り直しが必要
  • 生活の質の向上に貢献することが、日本のブランド力になる
  • グローバルスタンダードな契約の締結と履行のために日本政府の支援が不可欠
  • 2017年は通商政策が非常に重要になる

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