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月刊 経団連

月刊 経団連2017年5月号

特集 成長戦略を支えるジャパン・ブランドの発信力強化に向けて

巻頭言

さようなら、ワークシェアリング

工藤泰三 (経団連副会長/日本郵船会長)

ワークシェアリングは、1980年代のオランダでの事例が知られている。失業率が高まるなかで、パートタイムとフルタイム労働者の均等処遇を導入しつつ、柔軟な短時間勤務を実現することについて政労使で合意し(ワッセナー合意)、失業率の低下と景気回復を両立した。しかし、雇用の維持・拡大を優先したため実質賃金は低下し、生産性の向上には結び付かなかった。

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特集

成長戦略を支えるジャパン・ブランドの発信力強化に向けて

日本の魅力を世界に向けて展開し、国家ブランドとして構築・確立する取り組みは、製品・サービスの魅力を高め、世界市場での競争力を強化していくうえで非常に重要である。なかでもコンテンツ、衣食住、地域産品などにスポットを当てたクールジャパン政策は、海外需要の獲得、訪日客の増加や消費額の拡大など、成長戦略の側面支援としての期待が高い。日本のソフトパワーや文化に関する発信力をどのように強化すべきか、その課題と具体策について、多様な観点から議論する。

座談会:成長戦略を支えるジャパン・ブランドの発信力強化に向けて

  • 中村邦晴 (経団連審議員会副議長/住友商事社長)
  • 依田 巽 (経団連産業競争力強化委員会エンターテイメント・コンテンツ産業部会長/ギャガ会長)
  • ピーター・バラカン (ブロードキャスター)
  • 高藤悦弘 (経団連産業競争力強化委員会ジャパン・ブランド部会長/味の素取締役専務執行役員)

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中村邦晴(経団連審議員会副議長/住友商事社長)
国内外に幅広いネットワークを持ち、多様な産業分野に進出している総合商社は、ジャパン・ブランドの強化にさまざまな面で貢献できる。例えば、当社ではタイでテレビ通販事業に参画しており、台湾でもドラッグストアなどで日本製品を積極的に取り扱っている。また、日本のコンテンツの海外展開も手がけており、日本を紹介するテレビ番組はシンガポール25年の歴史を持つ。民間主導でここまできたが、コンテンツの海外展開は、宣伝やローカライズにおける資金面での支援や規制緩和、人材育成など、政府のサポートも必要である。

ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
日本の魅力を海外に伝えるためには、何を伝えるかという中身の議論も大事だが、多様な情報にアクセスしやすい環境をどう整備するか、という視点が重要。ネット上の口コミ効果は大きく、人々は自分で情報を探し出す場合が多い。興味を持つきっかけをつくることが大切だ。英語をはじめ多言語での情報発信が不可欠だが、その内容が正確かつ適切に伝わるよう、編集等にもっと外国語ネイティブを関与させるべき。私が来日した1970年代と比べて、日本人は内向きになってしまった。自国に興味を持ってもらうには、自らが他国に興味を持つことも大事だ。

依田 巽(経団連産業競争力強化委員会エンターテイメント・コンテンツ産業部会長/ギャガ会長)
私が「コンテンツ」という言葉を使いはじめて15年がたつ。「韓流ブーム」を起こし、韓国製品のブランド力アップを成功させた韓国と比較すると周回遅れの感はあるものの、現在、日本でも政官民一体の取り組みが進みつつある。言語を超えて伝わりやすいコンテンツの特性を活かし、海外展開を進め、日本ブームを創出することで、日本の製品・サービスのブランド力を高め、インバウンドの拡大につなげたい。そのためには、コンテンツに精通したビジネス人材と著作権をめぐりグローバルなネットワークを持ち交渉力がある弁護士の育成が急務である。

高藤悦弘(経団連産業競争力強化委員会ジャパン・ブランド部会長/味の素取締役専務執行役員)
一口に「日本食」といっても、日本伝統の「わび・さび」を器の上に表現した懐石料理から、外国料理を日本風にアレンジしたラーメンまで、非常に幅が広い。その多様性こそが日本食の魅力であろう。「食」をコンテンツの1つとしてとらえ、海外で定期的にフェアを開催するなど、食品業界を挙げて発信に取り組んでいきたい。当社にとっての「ジャパン・ブランド」とは、品質の高さ、安心安全、おいしさへのこだわり、という考え方そのものである。この考え方は、国内外を問わず、当社の従業員全員に共有されている。

根本勝則(司会:経団連常務理事)

  • ■ 「ジャパン・ブランド」とは
  • 商社のネットワークを活かして、ジャパン・ブランド強化に貢献する
  • コンテンツの海外展開を進め、「日本ブーム」の創出を目指す
  • ネットで多様な情報発信を
  • 食に対する「こだわり」が、味の素のジャパン・ブランド
  • ネット時代の情報発信にあわせた制度改革が必要
  • ■ 成長戦略としてのクールジャパン政策への期待
  • 「コ・フェスタ」を世界的なイベントに育てたい
  • 「モノからコトへ」の時代、文化の力が果たす役割は大きい
  • 「食」をコンテンツの1つとしてアピールしていきたい
  • “口コミ”が最も効き目がある
  • 日本のコンテンツは「韓流」を超えられるか
  • ■ ジャパン・ブランドを担う人材、その育成・確保のあり方
  • 日本食の基礎が学べる養成機関を海外に
  • コンテンツに通じたビジネス人材、弁護士の育成が急務
  • 日本の英語教育は英語が苦手な子どもを増やしている
  • 人との触れ合いが目利き・耳利きを育てる

成長戦略の中核としてのクールジャパン戦略
 菅 義偉(内閣官房長官/衆議院議員)

  • あらためてクールジャパン戦略とは
  • クールジャパン戦略の進展
  • 2020年代の持続的成長の実現に向けて

世界に向けたジャパン・ブランドの発信力強化
 山本一太(自由民主党クールジャパン戦略推進特命委員長/参議院議員)

  • ジャパン・ブランドの力
  • 戦略的ブランド発信
  • 世界のブランド競争を勝ち抜く

国家ブランドに関する世界の動きと日本の課題
 金子将史(政策シンクタンクPHP総研首席研究員)

  • 国家ブランドの強化をどのように図るか
  • 強力な手段/機会となる観光とメガ・イベント
  • 2020年に向けて

日本コンテンツの魅力を世界に広めるVIPOの取り組み
 松谷孝征(映像産業振興機構(VIPO)理事長/手塚プロダクション社長)

  • 「コンテンツ」および「異業種×コンテンツ」の海外展開を推進するJ‐LOP事業
  • 「コ・フェスタ」を通し、コンテンツと親和性の高い産業にかかわるイベントを海外へ広く発信
  • 人材育成分野での海外展開支援

もうけてこそクールジャパン
 太田伸之(クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)社長)

  • 広範ゆえ難しい定義
  • 空中戦と地上戦
  • クールに売る

クールジャパン戦略と日本酒輸出振興の推進
 佐浦弘一(浦霞醸造元佐浦社長)

  • “國酒”の輸出促進に向けた政策支援
  • 海外における日本酒啓蒙の必要性と情報発信の重要性
  • 日本酒の振興が地域振興につながる

伝統的工芸品「DENSAN」~Japan Traditional Crafts~の海外販路開拓事業について
 安藤重良(伝統的工芸品産業振興協会代表理事)

  • 伝統的工芸品とは
  • 伝統的工芸品産業を取り巻く環境
  • 「DENSAN」 ~Japan Traditional Crafts~ 海外戦略における課題とブランド構築
  • 伝統的工芸品のブランドの推進と確立に向けて

伝統を新たな付加価値につなげるために
―国文学研究資料館の役割と可能性
 ロバート キャンベル(国文学研究資料館長)

  • 文学遺産を集約し共同利用というかたちで世界に開放
  • 近代化のなかでの日本語の刷新が過去・伝統からの断絶の壁に
  • 芝居の絵番付から時のかなたに広がる景色を見渡す

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一般記事

B7ローマ・サミットに参加して
 榊原定征(経団連会長)

  • 日本経済の現状や見通しをイタリア政府閣僚等に紹介
  • 通商やイノベーション・持続可能性等につき活発な議論を展開
  • イタリア首相・閣僚の基本的なメッセージ
  • カナダが主催する来年のB7サミットに向けて

経団連初となる女性エグゼクティブ米国ミッションを派遣
―女性活躍は Emerging Market/女性活躍推進を通じた市場の創出により日米経済関係に貢献
 吉田晴乃(経団連審議員会副議長・女性の活躍推進委員長/BTジャパン社長)

  • 米国へ日本のポジティブな変革を発信
  • ホワイトハウスとのパイプづくり
  • 成功体験を世界各国へ展開
  • 民間同士の交流によるビジネス機会の拡大

ポピュリズム時代のわが国経済外交のあり方を議論
―「経済外交シンポジウム」を外務省と共催
 大林剛郎(経団連経済外交委員長/大林組会長)
 片野坂真哉(経団連経済外交委員長/ANAホールディングス社長)

  • なぜ今経済外交が重要か
  • 主要国におけるポピュリズムの台頭
  • ポピュリズム時代の経済外交のあり方
  • 経済外交の推進に向けて

【提言】
廃棄物処理分野における情報の電子化の推進を提言

―本格的な循環型社会の構築に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/019.html
 木村 康(経団連副会長・環境安全委員長/JXTGホールディングス会長)

  • 背景と意義
  • 進めるべき電子化の内容
  • 今後の進め方

循環型社会の形成に向けた産業界の取り組み
―環境自主行動計画〔循環型社会形成編〕2016年度フォローアップ調査結果
http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/020.html
 山田政雄(経団連環境安全委員会廃棄物・リサイクル部会長/DOWAホールディングス社長)

  • 最終的に2015年度目標を8.4%ポイント上回り達成
  • 循環型社会形成に向けた環境整備が不可欠

生物多様性に関するアンケート結果が示すもの
http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/015.html
 石原 博(経団連自然保護協議会企画部会長/三井住友信託銀行経営企画部CSR推進室審議役)

  • 生物多様性主流化は道半ば
  • 生物多様性主流化の阻害要因
  • 経団連自然保護協議会の今後の活動

多彩な研修プログラムと価値ある情報提供で企業の成長をサポート
―経団連事業サービスの活動紹介
http://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/
 久保田政一(経団連事業サービス理事長)

  • 異業種交流を通じた人材育成
  • 経団連の政策・提言の周知
  • 企業の関心に沿った情報提供

連載

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