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月刊 経団連

月刊 経団連2018年2月号

特集 農業 先端・成長産業化の未来

巻頭言

学校スポーツと高齢者の活躍

岡本 毅 (経団連副会長/東京ガス会長)

少子高齢化の進展にいかに対応していくか、さまざまな議論が行われるなかで、高齢者に、より一層の活躍を求めるというのは必然的な流れだ。その際、まだまだ知力、気力、体力に溢れている高齢者に、生きがいがあり充実感に満ちた生活を送ってもらうという視点で考えることが大切だと思う。

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特集

農業 先端・成長産業化の未来

農業は今、大きく変わりつつある。農産物の生産から加工・流通、販売・輸出まで包含する「フードバリューチェーン」のもと、各分野で既存の枠にとどまらない挑戦が続いている。経済界・農業界の連携も進展著しく、企業の参入が加速するなか、ICTはもちろん、AI、ロボットといった先端技術の導入を積極的にリードしていく農業経営者の躍進も目覚ましい。政府も農林水産業の成長産業化を掲げ、こうした動きを後押ししている。その一方で、耕作放棄地の拡大、高齢化、担い手不足など、依然として課題も残っている。先端・成長産業化に向けた最前線の姿を浮き彫りにしつつ、イノベーションが開く農業の未来像を探る。

座談会:農業 先端・成長産業化の未来

  • 十倉雅和 (経団連副会長、農業活性化委員長/住友化学社長)
  • 小池 聡 (ベジタリア社長)
  • 別所智博 (農林水産省農林水産技術会議事務局長)
  • 佐藤康博 (経団連審議員会副議長、農業活性化委員長/みずほフィナンシャルグループ社長)
  • 嶋﨑秀樹 (トップリバー社長)
  • 青山浩子 (司会:21世紀政策研究所研究委員/農業ジャーナリスト)

PDF形式にて全文公開中

十倉雅和(経団連副会長、農業活性化委員長/住友化学社長)
農業の先端・成長産業化に向けて、経済界も最大限に貢献する決意である。経済界と農業界の連携はかつてなく深化している。経団連でも2016年には「連携プラットフォーム」を設立、企業のシーズと農業のニーズのマッチングを進めてきた。農業が産業として成り立つためには、競争、切磋琢磨できる事業環境が不可欠である。公益性と事業性の両立という、国連のSDGsや、Society 5.0とも共通するテーマに、農業はチャレンジしてほしい。

小池 聡(ベジタリア社長)
農場経営に新規参入、実践するなかで、前職のベンチャーキャピタリスト、IT企業経営の知見が農作物の生産現場で課題解決の糸口となり、最新植物科学とIoTセンサーなどのテクノロジーを活用した現在の事業(ビッグデータの解析、植物病院®)につながった。生産者と消費者をより結び付けたフードバリューチェーンのリデザインも必要。高齢化が進む農業で、ICTが当たり前のものとして受け入れられるには、インフラの整備が喫緊の課題である。今後、世界で人口増による食糧危機が懸念されるが、日本の農業、先端技術は、こうした地球規模の課題解決のソリューションを持っている。

別所智博(農林水産省農林水産技術会議事務局長)
日本の農業は今、転換期、チャンスの時代を迎えている。国内人口の減少、世界の食糧市場の拡大という状況下で、日本の農業が勝ち残るためには、国内市場への安定供給と海外市場でのシェア拡大の両立が重要な政策課題である。研究開発や社会実装を進めるうえで重要なポイントは、オープンイノベーションと出口戦略。作物の育成、収穫、流通、加工のバリューチェーン全体で活用できるデータ連携基盤を構築し、農業が総合性、持続可能性を高めることが、経済成長、さらには食料の安全保障につながる。

佐藤康博(経団連審議員会副議長、農業活性化委員長/みずほフィナンシャルグループ社長)
農業政策は、競争力強化、生産性向上に軸足を置いた「産業政策」へと変化しつつある。今後、日本の農業が輸出産業化していくためにはGAP認証の取得が鍵となる。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、その大きなチャンスである。また、農業の「データイノベーション」が進むなか、ITリテラシーと経営リテラシーを持った農業者の育成が急務であり、農業経営体のCFOとして金融業界の人材の活用が進むことを期待する。「面白くて儲かる農業」を打ち出すことが、農業の将来のために必要である。

嶋﨑秀樹(トップリバー社長)
「農業100年の計は人材育成にあり」というのが、私の持論である。当社は「儲かる農業」を標榜し、農業の組織化・大規模化を進めるとともに、若手農業経営者の育成にも努めてきた。農業を持続可能な産業とするためには、経営感覚を持った農業者の育成が不可欠である。データをきちんと活用するためには、意欲のある農業経営者にITリテラシーを身に付けてもらう仕組みを考えるべき。企業で蓄積された人材育成のノウハウを活用するなど、経済界と農業界の人材交流も、積極的に行っていきたい。

青山浩子(司会:21世紀政策研究所研究委員/農業ジャーナリスト)

  • ■ フードバリューチェーンの動き
  • ベンチャーキャピタリストから農業へ
  • 農業100年の計は人材育成にあり
  • 深化する経済界と農業界の連携
  • 農業に参入する法人、若手就農者が増えている
  • 世界市場で勝ち残れる農業を目指す
  • ■ イノベーションが開く先端農業の姿
  • Society 5.0における農林水産分野の役割
  • デジタル分野・バイオ分野の革新的技術を活用せよ
  • 農作物の「カスタマイズ化」が進む
  • ■ 現場への実装可能性、農業に与えるインパクト
  • フードバリューチェーンの「リデザイン」が必要
  • 意欲のある農家に対するピンポイント支援が必要
  • ■ 実現に向けた取り組み、経済界・農業界の役割
  • 経済界の人材育成ノウハウを農業界へ
  • 「面白くて儲かる農業」を打ち出せ
  • 農業の持続可能性は食料安保につながる
  • 農業は「公益性と事業性の両立」にチャレンジせよ
  • 日本の農業は地球規模の課題に取り組んでいる

深化する経済界との接点
―JA全農の連携強化に向けた取り組み
 神出元一(全国農業協同組合連合会(JA全農)代表理事理事長)

  • 最も深刻な「人手不足」という問題への踏み込んだ対応
  • 新たな事業領域への挑戦と経済界とのアライアンス
  • 経済界と築く日本農業の未来

深化する農業界との接点
 篠原弘道(日本電信電話副社長)

  • 農業分野の課題とNTTグループの取り組み
  • パートナーとの連携で新たな価値の創出

農業の研究開発分野における連携の重要性について
 塩谷和正(農業・食品産業技術総合研究機構理事(連携担当))

  • 日本の農業は変革期を迎えている
  • 自前主義には限界がある
  • 研究シーズを充実させるための連携
  • 新たな知見を取り入れるための連携
  • 研究成果を社会実装するための連携

ロボット技術が変える農業
 野口 伸(北海道大学大学院農学研究院教授)

  • 遠隔監視型のロボット農機が作業効率化の鍵
  • マルチロボットの台数調整と融通で大規模化に対応
  • スマートロボットの課題はセンサー技術
  • ロボット技術の発展で農家の仕事の質が変わる

農業データ連携基盤の構築・稼働で農業が変わる
 神成淳司(慶應義塾大学環境情報学部准教授)

  • データ活用型農業推進のための基盤構築~3つの機能を実装
  • 国際的に競合するさまざまなプラットフォーム型サービス

先端科学技術による農業の生産性革命と関連ビジネスの発展
―「AOIプロジェクト」の取り組み
 難波喬司(静岡県副知事)

  • 農食健・農商工・産学官金連携による科学技術・産業振興拠点「AOI―PARC」の設立
  • 先端科学技術による農業の生産性革命の必要性
  • 「AOI―PARC」の施設
  • 産学官金連携プラットフォーム「AOIフォーラム」
  • 静岡県から世界の人々の健康寿命の延伸と幸せの増深への貢献

農業の建設的パートナーとしてのニュージーランド
 マイク・ピーターセン(ニュージーランド農業貿易特使)

  • 農業をめぐる世界的潮流と可能性
  • 進化するニュージーランド農業と日本との協力

フードバリューチェーンを通じた日中農業協力のあり方を議論
―第4回日中農業交流・協力シンポジウムを四川省・眉山市で開催
 片野坂真哉(経団連審議員会副議長、経済外交委員長/ANAホールディングス社長)

  • シンポジウムにおける主な議論
    ~「天府の国」におけるフードバリューチェーンの現状
  • 日本のコールドチェーンに対する期待と日中主導による基準づくり
  • 主な成果と今後の取り組み

農業者・研究者・企業の連携加速に向けて
―農業技術革新・連携フォーラム
 髙橋勝俊(経団連農業活性化委員会企画部会長/アサヒグループホールディングス専務取締役兼専務執行役員)

  • 高まる三者連携への期待
  • 連携の深化に向けて

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一般記事

経済交流を通じて日中関係の強化につなげる
―合同訪中代表団の派遣ならびに「日中企業家及び元政府高官対話」の開催
 榊原定征(経団連会長)

  • 李克強総理と会談~合同訪中代表団
  • 日中企業家及び元政府高官対話

【提言】
Society 5.0を実現するデータ活用推進戦略

http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/104.html
 中西宏明(経団連副会長、情報通信委員長/日立製作所会長)
 遠藤信博(経団連審議員会副議長、情報通信委員長/日本電気会長)
 金子眞吾(経団連情報通信委員長/凸版印刷社長)

  • データ活用によって実現する社会
  • データ活用の推進に向けた4つの要件

【提言】
Society 5.0実現に向けたサイバーセキュリティの強化を求める

http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/103.html
 中西宏明(経団連副会長、情報通信委員長/日立製作所会長)
 遠藤信博(経団連審議員会副議長、情報通信委員長/日本電気会長)
 金子眞吾(経団連情報通信委員長/凸版印刷社長)

  • 価値創造のためのサイバーセキュリティ
  • 自助・共助・公助・国際連携
  • 施策の一体化と技術進歩への対応
  • 経団連アクションプラン

【提言】
女性の活躍を通じた経済成長を加速し世界をリード

―「女性活躍の次なるステージに向けた提言 ~攻めのウーマノミクスで未来を切り拓く」
http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/102.html
 吉田晴乃(経団連審議員会副議長、女性の活躍推進委員長/BTジャパン社長)
 柄澤康喜(経団連女性の活躍推進委員長/三井住友海上火災保険会長)

  • Society 5.0における女性の活躍とSDGs
  • 「攻めのウーマノミクス」の5つのイニシアティブ(提言)
  • 経団連会員企業における女性の活躍推進の状況

日越経済協力のさらなる発展に向けてベトナムミッションを派遣
―官民要人との懇談および日越共同イニシアティブ第6フェーズ最終評価会合を開催
 中村邦晴(経団連審議員会副議長、日本ベトナム経済委員長/住友商事社長)
 市川秀夫(経団連日本ベトナム経済委員長/昭和電工会長)

  • ハノイ(12月7日、8日)
  • ハナム省(12月9日)

日露ウィン・ウィンビジネスの拡大と深化に向けて
―5年ぶりとなる日本ロシア経済合同会議をモスクワで開催
 朝田照男(経団連日本ロシア経済委員長/丸紅会長)

  • ロシア経済の近代化に向けた日露協力のあり方
  • 優先分野における協力と極東をゲートウエーとした日露ビジネスの発展
  • 大きな成果のあった今次合同会議・表敬と今後の取り組み

連載

  • HITACHI × Society 5.0 → SDGs
    -Society 5.0の実現に向けて~社会イノベーション事業の推進
     日立製作所

    • 安全・安心・快適な社会に向けた新たな価値創造を
    • デジタルソリューションの適用を通じた価値創出基盤「Lumada」
    • 顧客協創で課題抽出、アイデア創出、仮説検証へ
      ~将来ビジョン共有に向けたさまざまな取り組み
  • これからのヘルスケア (4)
    経営戦略としての投資型医療 -医療費負担から健康への投資へ
    (ミナケア)

  • 経営者のひととき
    小さなグリーンベイの街に思いを馳せて
    杉山博孝(三菱地所会長)

  • Essay「時の調べ」
    カムチャツキーの夏
    渡辺憲司(自由学園最高学部長)

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