文理融合のすすめ(リベラルアーツとイノベーション)
日本のイノベーションを生み出す力が停滞しているといわれて久しい。2018年版の『科学技術白書』においても、イノベーションを生み出す基盤的な力が急激に弱まっていることが指摘されている。昨今の世界情勢を見ても、課題は多様化・複雑化しており、イノベーションに対する障壁がより高くなっていることは間違いないだろう。
日本のイノベーションを生み出す力が停滞しているといわれて久しい。2018年版の『科学技術白書』においても、イノベーションを生み出す基盤的な力が急激に弱まっていることが指摘されている。昨今の世界情勢を見ても、課題は多様化・複雑化しており、イノベーションに対する障壁がより高くなっていることは間違いないだろう。
今年3月、経団連では「Society 5.0 for SDGs」をテーマに掲げ、B20東京サミットを開催し、自由貿易やデジタル革新等に関するグローバルなルールづくりや世界経済の持続的かつ包摂的な発展に貢献する観点から、G20に対する提言を取りまとめ国内外に発信した。G20議長国を務めるわが国の国際的なリーダーシップが今まさに問われるなか、本座談会では、わが国を取り巻く国際環境を巨視的にとらえるとともに、日本の取るべき針路を展望すべく意見交換を行った。
中村邦晴(経団連審議員会副議長/住友商事会長)
経済界の最大の関心事は米中関係の推移だ。すでに米中摩擦の影響がさまざまなところで出てきており、世界経済が一気に冷え込む懸念もある。欧州では、Brexitに加え、ドイツ、フランスにおける政治の不安定化が気がかりだ。そうしたなか、経団連は今年1月に提言「新たな時代の通商政策の実現を求める」を公表し、WTO改革を進め、国際経済秩序の基盤として機能させることを提唱した。こうした国際経済秩序の構築においても、日本はリーダーシップを発揮しなければならない。
田中明彦(政策研究大学院大学長)
中国が経済大国として台頭する一方、先進国では、国内に格差問題を抱え、反グローバリゼーション、ポピュリズムの動きが出てきている。米中の2大国が「新冷戦」に突入するなか、日本には、今や世界の秩序構築において、そのビジョンを先導していく役割がある。自由主義・民主主義社会の繁栄を維持していくためにも、日本は各界、とりわけ視野の広い経営者の知恵を吸い上げ政策に活かすこと、特に研究開発・イノベーション創出に一層取り組む必要があり、それによって、日本の発言が世界のなかで信頼を得ることになる。
篠原弘道(経団連審議員会副議長/日本電信電話会長)
デジタル分野における覇権争いが始まるなか、日本は、米国のような巨大企業による寡占型でも、中国のような国家統制型でもない、自由で安全なデータ流通モデルを提唱すると同時に、データ利活用に関する具体的な取り組みを進めていかねばならない。また、サイバー攻撃が高度化・巧妙化するなかでは、「連携」が最も重要となる。産業界はもちろんのこと、官民、さらには国際的な連携を通じてセキュリティを確保するとともに、日本がアジア地域におけるサイバーセキュリティ対策をリードしていかなくてはならない。
佐藤康博(経団連審議員会副議長/みずほフィナンシャルグループ会長)
現在、世界で起きている変化は、100年、150年に1度の大きな変化だとみている。変化の背景には「格差問題」がある。資本主義がサステナブルなシステムであり続けるには、格差問題を解決しなければならない。米国で保護主義的なトランプ政権が誕生し、中国が覇権主義をあらわにするなか、日本には国際社会でリーダーシップを発揮していくことが期待されている。これまで日本企業が大切にしてきた価値観を「強み」とし、格差問題をはじめとする諸課題を克服していく姿を、世界に示していくべきだ。
久保田政一(司会:経団連事務総長)
「時代性」の把握と日本の取るべき進路
神保 謙(慶應義塾大学総合政策学部教授)
データ駆動社会の構築へ向けて
土屋大洋(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
SDGsとエネルギー・環境イニシアティブ
豊田正和(日本エネルギー経済研究所理事長)
インフラ海外展開に関する政府の取り組みについて
和泉洋人(内閣総理大臣補佐官)
2019年トランプ大統領の最優先課題
―再選のための公約実現
渡部恒雄(笹川平和財団上席研究員)
中国の存在をどう見るか
―日本から見た21世紀の秩序問題
川島 真(東京大学大学院総合文化研究科教授/21世紀政策研究所研究主幹)
ロシアを取り巻く「内憂外患」
廣瀬陽子(慶應義塾大学総合政策学部教授)
ISの消滅と中東複合危機:2019年春
山内昌之(武蔵野大学特任教授/東京大学名誉教授)
【提言】
AI活用戦略
―AI-Readyな社会の実現に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/013.html
山西健一郎(経団連副会長、未来産業・技術委員長/三菱電機特別顧問)
畑中好彦(経団連審議員会副議長、未来産業・技術委員長/アステラス製薬会長)
小野寺 正(経団連未来産業・技術委員長/KDDI相談役)
【提言】
Society 5.0実現に向けたベンチャー・エコシステムの進化
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/012.html
泉谷直木(経団連審議員会副議長、起業・中堅企業活性化委員長/アサヒグループホールディングス会長)
根岸修史(経団連審議員会副議長、起業・中堅企業活性化委員長/積水化学工業相談役)
立石文雄(経団連起業・中堅企業活性化委員長/オムロン会長)
あの時、あの言葉
トンネルを抜ければ、景色は変わる
浅野邦子(箔一会長)
Essay「時の調べ」
地球の歴史と博物館の未来
芝原暁彦(地球科学可視化技術研究所CEO)