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月刊 経団連

月刊 経団連2019年4月号

特集 世界政治経済の展望と日本の針路

巻頭言

文理融合のすすめ(リベラルアーツとイノベーション)

斎藤 保 (経団連審議員会副議長/IHI会長)

日本のイノベーションを生み出す力が停滞しているといわれて久しい。2018年版の『科学技術白書』においても、イノベーションを生み出す基盤的な力が急激に弱まっていることが指摘されている。昨今の世界情勢を見ても、課題は多様化・複雑化しており、イノベーションに対する障壁がより高くなっていることは間違いないだろう。

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特集

世界政治経済の展望と日本の針路

今年3月、経団連では「Society 5.0 for SDGs」をテーマに掲げ、B20東京サミットを開催し、自由貿易やデジタル革新等に関するグローバルなルールづくりや世界経済の持続的かつ包摂的な発展に貢献する観点から、G20に対する提言を取りまとめ国内外に発信した。G20議長国を務めるわが国の国際的なリーダーシップが今まさに問われるなか、本座談会では、わが国を取り巻く国際環境を巨視的にとらえるとともに、日本の取るべき針路を展望すべく意見交換を行った。

座談会:世界政治経済の展望と日本の針路

  • 中村邦晴 (経団連審議員会副議長/住友商事会長)
  • 田中明彦 (政策研究大学院大学長)
  • 篠原弘道 (経団連審議員会副議長/日本電信電話会長)
  • 佐藤康博 (経団連審議員会副議長/みずほフィナンシャルグループ会長)

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中村邦晴(経団連審議員会副議長/住友商事会長)
経済界の最大の関心事は米中関係の推移だ。すでに米中摩擦の影響がさまざまなところで出てきており、世界経済が一気に冷え込む懸念もある。欧州では、Brexitに加え、ドイツ、フランスにおける政治の不安定化が気がかりだ。そうしたなか、経団連は今年1月に提言「新たな時代の通商政策の実現を求める」を公表し、WTO改革を進め、国際経済秩序の基盤として機能させることを提唱した。こうした国際経済秩序の構築においても、日本はリーダーシップを発揮しなければならない。

田中明彦(政策研究大学院大学長)
中国が経済大国として台頭する一方、先進国では、国内に格差問題を抱え、反グローバリゼーション、ポピュリズムの動きが出てきている。米中の2大国が「新冷戦」に突入するなか、日本には、今や世界の秩序構築において、そのビジョンを先導していく役割がある。自由主義・民主主義社会の繁栄を維持していくためにも、日本は各界、とりわけ視野の広い経営者の知恵を吸い上げ政策に活かすこと、特に研究開発・イノベーション創出に一層取り組む必要があり、それによって、日本の発言が世界のなかで信頼を得ることになる。

篠原弘道(経団連審議員会副議長/日本電信電話会長)
デジタル分野における覇権争いが始まるなか、日本は、米国のような巨大企業による寡占型でも、中国のような国家統制型でもない、自由で安全なデータ流通モデルを提唱すると同時に、データ利活用に関する具体的な取り組みを進めていかねばならない。また、サイバー攻撃が高度化・巧妙化するなかでは、「連携」が最も重要となる。産業界はもちろんのこと、官民、さらには国際的な連携を通じてセキュリティを確保するとともに、日本がアジア地域におけるサイバーセキュリティ対策をリードしていかなくてはならない。

佐藤康博(経団連審議員会副議長/みずほフィナンシャルグループ会長)
現在、世界で起きている変化は、100年、150年に1度の大きな変化だとみている。変化の背景には「格差問題」がある。資本主義がサステナブルなシステムであり続けるには、格差問題を解決しなければならない。米国で保護主義的なトランプ政権が誕生し、中国が覇権主義をあらわにするなか、日本には国際社会でリーダーシップを発揮していくことが期待されている。これまで日本企業が大切にしてきた価値観を「強み」とし、格差問題をはじめとする諸課題を克服していく姿を、世界に示していくべきだ。

久保田政一(司会:経団連事務総長)

  • ■ わが国を取り巻く国際環境
  • 米中による「新冷戦」の時代に
  • 米中関係の推移が最大の関心事
  • 資本主義は「格差問題」を解決できるか
  • デジタル分野における覇権争いが始まっている
  • ■ 提言「新たな時代の通商政策の実現を求める」
  • WTO改革を進め、国際経済秩序の基盤として機能させる
  • データの活用は「自前主義からの脱却」が鍵
  • テクノロジー系企業の新規参入が進む金融業界
  • 自由と民主主義を守るためのイノベーション創出
  • ■ わが国が取るべき針路
  • 日本が世界の秩序構築を主導していく時代
  • 日本企業の価値観を世界に発信していくべき
  • 「自由で安全なデータ流通」を日本が提唱していくことが重要
  • 分断が進む世界で、高まる日本への期待

「時代性」の把握と日本の取るべき進路
 神保 謙(慶應義塾大学総合政策学部教授)

  • 「時代性」
    ~マクロトレンドを認識するフレーミング
  • 3つの視点
    ~政治経済のマクロトレンド

データ駆動社会の構築へ向けて
 土屋大洋(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)

  • ダボス会議での首相演説
  • サイバースペースの安定性
  • サイバー地政学
  • 日本が抱えるリスク

SDGsとエネルギー・環境イニシアティブ
 豊田正和(日本エネルギー経済研究所理事長)

  • 安定的かつ低廉な低またはゼロ・カーボン技術の開発が必要
  • 新エネルギー技術の新興国等への普及の重要性
  • 新興国等のエネルギー変革状況まで見据えた選択を

インフラ海外展開に関する政府の取り組みについて
 和泉洋人(内閣総理大臣補佐官)

  • 経協インフラ戦略会議の取り組み
  • インフラシステム輸出戦略の4本柱
  • パートナー国を巻き込んだ第三国市場の開拓と継続的な経営等への参画

2019年トランプ大統領の最優先課題
―再選のための公約実現
 渡部恒雄(笹川平和財団上席研究員)

  • トランプ大統領の再選に向けた戦略
  • メキシコ国境の壁建設、対中制裁はコア支持層へのアピールが狙い
  • 内政・外交とも「トランプ・ファースト」

中国の存在をどう見るか
―日本から見た21世紀の秩序問題
 川島 真(東京大学大学院総合文化研究科教授/21世紀政策研究所研究主幹)

  • 技術的優位を背景とした富の集中
  • 中国の既存秩序への対抗姿勢
  • 習政権の「新型国際関係」と米中関係

ロシアを取り巻く「内憂外患」
 廣瀬陽子(慶應義塾大学総合政策学部教授)

  • 明るい展望が見られない政治・経済情勢~支持率低下と経済低迷
  • 深まる国際的孤立、高まる米露間の緊張
  • 難題山積のシリア/ウクライナ/中国との関係

ISの消滅と中東複合危機:2019年春
 山内昌之(武蔵野大学特任教授/東京大学名誉教授)

  • 中東複合危機の新たな深化
  • ロシア・イランの中東再編戦略と米国の不連続な対応
  • シリア政局におけるISの解体達成

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一般記事

【提言】
AI活用戦略

―AI-Readyな社会の実現に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/013.html
 山西健一郎(経団連副会長、未来産業・技術委員長/三菱電機特別顧問)
 畑中好彦(経団連審議員会副議長、未来産業・技術委員長/アステラス製薬会長)
 小野寺 正(経団連未来産業・技術委員長/KDDI相談役)

  • 技術的な背景と日本の勝ち筋
  • AI活用原則
  • AI-Ready化ガイドライン
  • AI活用戦略フレームワーク

【提言】
Society 5.0実現に向けたベンチャー・エコシステムの進化

http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/012.html
 泉谷直木(経団連審議員会副議長、起業・中堅企業活性化委員長/アサヒグループホールディングス会長)
 根岸修史(経団連審議員会副議長、起業・中堅企業活性化委員長/積水化学工業相談役)
 立石文雄(経団連起業・中堅企業活性化委員長/オムロン会長)

  • Society 5.0に向けたスタートアップへの期待
  • 大企業におけるオープンイノベーションの定着・本格化
  • 大学・研究開発法人をコアとしたエコシステム形成
  • 政府・地方公共団体によるエコシステムの基盤強化
  • リスクマネー供給の拡大

連載

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