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月刊 経団連 座談会・対談 「環境統合型経営」で環境と成長の好循環を実現する

武内 和彦
地球環境戦略研究機関(IGES)理事長/中央環境審議会会長/東京大学未来ビジョン研究センター特任教授

二宮 雅也
経団連企業行動・SDGs委員長、経団連自然保護協議会会長
損害保険ジャパン日本興亜会長

秋池 玲子
ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター&シニア・パートナー

小堀 秀毅
経団連審議員会副議長、環境安全委員長
旭化成社長

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小堀 秀毅(経団連審議員会副議長、環境安全委員長/旭化成社長)
経団連が推進してきた自主行動計画は、企業自らが、技術動向等を総合的に勘案し、環境対策を立案・実施することで、CO2削減や産業廃棄物最終処分量の削減等の成果を挙げてきた。こうした従来の積み上げ型の取り組みに加え、脱炭素社会に向けてイノベーションのチャレンジを促し、国内外にアピールするのが、新たに打ち出した「チャレンジ・ゼロ」である。日本の経済界には優れた技術があるので、これを環境と成長の好循環に結び付けていくことが大切だろう。各社が環境配慮型のテクノロジー開発を続けながら、それぞれの「環境統合型経営」を発信し、刺激し合い、あるいは産学官も含めた協業を進めていくことで、持続可能な社会の実現にもつながっていく。そのベースになるのは人材であり、日本の教育のなかに、環境技術や環境に資する価値の提供の重要性を落とし込むとともに、企業においても人材育成を進めていくことが大切である。

秋池 玲子(ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター&シニア・パートナー)
環境問題への日本企業の取り組みは非常に進んでいると感じる。環境分野はまだ潜在的に機会のある領域で、日本企業が今後も一層力を発揮できる。しかし、国際規格や国際標準、またそれを評価するルールはヨーロッパ中心に形成され、日本は十分参画できておらず、日本企業の取り組みは十分に評価されない傾向にある。国際的な場で、日本の存在感をより高める必要がある。また、環境課題の解決に向けては、理想的なゴールを掲げることに加えて、事実を踏まえ、具体的な対策を考えていかなければならない。同時に、大きな目標で柔軟な発想を促すことも効果がある。加えて、イノベーションや「環境統合型経営」の推進には長期的な視点が欠かせない。論点や時間軸を分けて対応することが重要である。

二宮 雅也(経団連企業行動・SDGs委員長、経団連自然保護協議会会長/損害保険ジャパン日本興亜会長)
生物多様性のさらなる主流化に向けて、9年ぶりに改定した「経団連生物多様性宣言・行動指針」では、SDGsの複数ゴールの達成への貢献を意識し「自然共生社会の構築を通じた持続可能な社会の実現」を目指すことを掲げた。加えて、幅広い環境対策を企業経営の重要課題の1つに据えて事業活動を遂行する「環境統合型経営」の推進を打ち出し、「経営トップの責務」を強調する内容とした。また、環境課題の解決に向けたイノベーションを支えるべく、金融セクターとしては、投融資先の企業との対話を通じ効果的な対策を促すと同時に、企業の環境ビジネスにおけるリスクの担い手として役割を果たしていく。経団連では、GPIF、東京大学と連携して、企業にイノベーションに必要な資金が流れる仕組みの構築に取り組んでいる。

武内 和彦(地球環境戦略研究機関(IGES)理事長/中央環境審議会会長/東京大学未来ビジョン研究センター特任教授)
これからの10年が、人類社会が持続可能な社会に向かうか否かの大転換期となる。地球環境問題のすべてに共通するテーマが「トランスフォーマティブ・チェンジ」だ。ライフスタイルも含む社会システムそのものを大きく見直さないかぎり、この危機は乗り越えられない。そうしたなかで、経団連が推進している「自主行動計画」におけるプレッジ&レビュー方式や「環境統合型経営」は、国際社会の新たな潮流とも符合する概念だ。日本の経営トップも自らの言葉で取り組みを発信してほしい。イノベーションについては、博士人材の減少といった問題があるなか、基礎科学や人文・社会科学を重視することが、イノベーションのポテンシャルを高めることをよく理解すべきだ。

椋田 哲史(司会:経団連専務理事)

  • ■ 地球規模の環境課題に関する現状認識
  • 危機打開に必要な「トランスフォーマティブ・チェンジ」
  • グローバルな「環境と成長の好循環」の実現を今後も日本主導で
  • 生物多様性を含む環境問題はSDGs達成の根幹としてとらえるべき
  • 事実を踏まえた具体的な道筋とともに大きな目標で柔軟な発想も必要
  • ■ 経済界の主体的な行動の意義・期待
  • 経済界は自主行動計画等を通じて着実な成果を上げてきた
  • 脱炭素社会に向けた企業のイノベーションも後押し
  • 生物多様性の取り組みの主流化に向けて「経団連生物多様性宣言・行動指針」を改定
  • 日本の進んだ取り組みが評価されるよう、国際的な場での存在感を高める必要
  • 経団連の「自主行動計画」のプレッジ&レビュー方式が世界の潮流に
  • ■ 環境と成長の好循環の実現に向けたイノベーションの重要性
  • 環境問題の解決には技術と社会両面のイノベーションが必要
  • イノベーションには、長期の視点で取り組むことと「やめる」選択肢を持つことの両面が重要
  • 基礎科学がイノベーションのポテンシャルを高める
  • イノベーションに資金が流れる仕組みづくりを
  • ■ 「環境統合型経営」の課題と企業への期待
  • 経営トップの責務として「環境統合型経営」を推進すべき
  • SDGsの目標間のトレードオフを解消し、シナジーを最大化する取り組みが必要
  • レスポンシブル・ケア、CO2原料の製品開発で「環境統合型経営」を実践
  • 社会的価値の視点を企業経営に取り入れ長期の視点で考える

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