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月刊 経団連 巻頭言 サステナブルな未来のために

安永 竜夫 (やすなが たつお) 経団連副会長/三井物産社長

withコロナが常態化して早くも半年が過ぎた。これだけ海外出張のない期間を過ごすことは、会社生活で初めての経験であり、回遊魚がいけすに閉じ込められたのごとき感も強い。この間にも、自国第一主義の拡大、米中覇権争いの深刻化、経済活動低迷の長期化への懸念など、グローバルに不確実性が増している。

かかる状況でも、サステナビリティへの意識・関心の強まりは変わらぬ流れとして着目すべきと考える。特に、SDGsネイティブとも称されるミレニアル世代・Z世代が、2030年ごろには購買力・労働力・投資を支える中心的存在となることを踏まえると、この傾向はさらに加速していくと認識すべきであろう。

企業に対し社会的責任を求める声の高まりに先んじて、経営目標を社会のサステナビリティに合致させていかぬ限り、淘汰は必須である。先行きが不透明なwithコロナの時代であるからこそ、温暖化ガス排出削減などストレッチした数値目標を時間軸とともに掲げ、行動に移すことが重要となろう。

我が国は、国民の衛生観念の高さと3密回避策の徹底により、コロナ感染の抑制と経済活動の両立に向かい始めている。ヒト・カネの流れを再び日本に向け、持続的成長に繋げていくためにも、健康と安全および環境への目線をさらに高め、強みとしていくべきであろう。

他方、一段と厳しい経営環境に直面する中小企業への対応に加え、行政のデジタル化の遅れや医療・教育・労働法制など既存制度が抱える様々な課題もコロナにより浮き彫りとなった。デジタル庁による縦割り行政打破とデータ利活用に向けた規制改革への取り組みを期待するとともに、マイナンバーをあらゆる身分証明にひも付けていくことも必要となろう。そして、少子高齢化に起因する成長率低下と労働力不足に鑑み、地域行政のあり姿の見直しや国内企業の再編・統合の支援を図るとともに、海外の優秀人材を受け入れ、多様な価値観が共存する社会を育みながら、DX(デジタルトランスフォーメーション)と裁量型労働の適用範囲拡大、労働力の流動化を通じた日本経済の生産性向上に取り組むことが重要である。

サステナブルな未来をどのように紡いでいくか。官民双方の覚悟が問われている。

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