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月刊 経団連  巻頭言 コロナ禍を乗り越えて希望に満ちた1年に

中西 宏明 (なかにし ひろあき) 経団連会長

2020年、世界は新型コロナウイルス感染症の拡大という極めて大きな災禍に見舞われた。世界経済は景気後退に陥り、資本主義のもとで進行していた格差が浮き彫りとなった。我が国では政府・自治体の迅速な対応、国民・企業の協力により感染の爆発的な拡大は回避されたものの、日々の社会経済活動は大きな変化を余儀なくされている。

2021年をコロナ禍からの復活の年とするために、官民が力を合わせて、まずは感染拡大の防止と経済回復の両立に全力で取り組む必要がある。さらに、経団連は、昨年11月に公表した「。新成長戦略」を新たな行動指針としてSociety 5.0 for SDGsへの取り組みを加速し、サステイナブルな資本主義の確立を目指す。

そのカギとなるのは、デジタルトランスフォーメーション(DX)と規制・制度改革である。コロナ禍により、行政、医療、教育などの分野におけるデジタル化の遅れや一極集中による脆弱性が明らかになった。ポストコロナ時代に日本が生き残るためには、経済社会のあらゆる分野においてDXに集中的に投資するとともに、既存の規制・制度を抜本的に見直し、デジタル技術の開発・実装・普及を前提としたものに作り変える必要がある。地域経済の活性化も念頭に、例えば、オンライン診療・服薬指導の恒久化など非対面・非接触を可能とする技術・サービスの普及や、労働時間管理の弾力化のための規制改革が急がれる。

また、グリーン成長への取り組みも重要である。菅総理が英断を下された「2050年カーボンニュートラル」(CO2排出実質ゼロ)の実現に向けては、エネルギー・電力システムの次世代化を加速するとともに、革新的なイノベーションを不断に創出していく必要がある。経済界としても、「チャレンジ・ゼロ」の枠組み等を活用し、官民一体となって、その実現に一層果敢に挑戦していく。

コロナ禍を契機に世界が分断の傾向を一層強めている中、自由で開かれた国際経済秩序の再構築が不可欠である。経済安全保障の確保に留意しつつ、日本がリーダーシップを発揮出来るよう、各国・地域経済界や世界経済フォーラム(WEF)等との対話を通じて民間レベルの連携強化、機運醸成に努める。

2021年で東日本大震災から10年になる。東京オリンピック・パラリンピックが東北の再生・創生、そしてコロナ禍からの復活を確信させる、希望に満ちた大会となることを願っている。

本年も皆様のより一層のご支援、ご協力をお願い申し上げる。

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