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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2012年10月4日 No.3103 高齢者施設・住宅の現状と今後の課題で説明を聞く -高齢社会対応部会

経団連は9月21日、東京・大手町の経団連会館で、都市・地域政策委員会・住宅政策委員会共管の高齢社会対応部会(渡邊大樹部会長)を開催した。今回は、高齢者住宅の開設支援コンサルティングを行うタムラプランニングアンドオペレーティングの田村明孝代表取締役から、高齢者施設・住宅の現状と今後の課題について説明を聞いた。

■ 現状と課題

政府の推計では1年間の死亡者数は年々増加し、2030年には全国で約165万人が亡くなる。看取りの場所としては、医療機関(89万人)、介護施設(9万人)、自宅(20万人)が大きく変動することなく推移するため、残りの47万人が問題になる。その実質的な受け皿が高齢者住宅である。しかし、高齢者人口3074万人に対する現在の供給数は、要介護者向けが143万7千戸(4.67%)、自立者向けが19万7千戸(0.64%)である。欧米では要介護者向け高齢者住宅の供給率が6%を超えており、これが日本の目指すべき一つの目安になる。

ところが、介護保険事業計画と実績を比較すると、第3期(2006~08年度)と第4期(2009~11年度)のいずれも5万戸の積み残しが生じており、第5期(2012~14年度)の数字はこれを反映していないため、行き場を失った人がそのままになっている。今後は、看取り場所の確保に加え、認知症高齢者の増加、介護職員の不足、75歳以上の要介護認定が約3割、一人暮らし世帯が約4割に達するという課題もある。団塊世代が75歳以上になる2025年に向けて、6%水準の供給には年間の新規開設が6万戸、施設を住宅並みの設備にする切り替えが4万戸必要になる。

■ 2025年のあるべき姿

こうしたなか、サービス付き高齢者向け住宅(サ付住)の供給数が急増しているものの、サービスが十分に供給されないサ付住の増加や、競争に晒されていないために評判の良くない既存の介護付き有料老人ホームでも入居率の上昇が生じている。今後は競争が活発になり、居住系での事業統合・M&Aの活発化や医療・介護サービスに加えて認知症ケアや看取り対応に対する評価の高まりを受け、住居形態が主流になると考えられる。

2025年に向けて、施設・居住系の統一化、サ付住並みの居住水準の確保、特別養護老人ホーム・老人保健施設・グループホーム・特定施設の統合による「高齢者特別住居」への一本化および入居資格の限定化を進めるべきである。ソフトとハードを分離することで、高齢者特別住居を所有するオーナーによる供給促進と、専門職種による介護サービスなどの提供オペレーターによる品質の担保が図られる。入居者が自らの意思で何をしたいかを決定し、周囲がそれをサポートする、施設ではない高齢者住宅を整備すべきである。

【産業政策本部】

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