経団連は12月25日、東京・大手町の経団連会館で第1回審議員会を開催した(前号既報)。
冒頭あいさつした渡文明審議員会議長は、「わが国経済は、20年を超える停滞期にあり、日本が再生の道を進むためには、戦後の高度成長を前提にした規制や制度の枠組みを大きく変えていかなければならない」と指摘。戦後の枠組みの見直しのために特に重要と思われる課題として、「成長戦略の着実な実行」「エネルギー政策の再構築」「外需の獲得」の3点を挙げた。
続いてあいさつした米倉弘昌会長は、「今年は、わが国にとって内政・外交両面で大変厳しい1年だった」と総括し、「来年こそ、決断と実行により、世界から期待され、信頼される、活力あふれる新しい日本をつくり上げていくための第一歩を踏み出さねばならない」と訴えた。
来賓あいさつでは、翌日に首班指名・組閣を控えた安倍晋三自由民主党総裁が、「今回の総選挙で自民党は、強い経済を取り戻すことを約束し、国民の皆さまから信任をいただいた。その責任を果たせるよう、断固たる国家意思をもってデフレ脱却、円高是正、経済成長を達成する」と述べ、その達成に向けた3本柱は、(1)政府が日本銀行と政策協定を結んで2%のインフレ目標を設定し、伝統的手法にとらわれない金融政策を実行すること(2)公共投資により有効需要をつくり出すこと(3)ターゲットを明確にした成長戦略を実行すること――であると訴えた。
また、「人口が減少しているから経済成長は難しいと諦め、成長しようとするスピリッツを失った国に未来はない。日本は正しい決断を下して政策を実行していけば、必ず成長できる」と強調した。
「今後のわが国の外交戦略」
田中日本総研国際戦略研究所理事長が講演
続いて田中均日本総合研究所国際戦略研究所理事長が「今後のわが国の外交戦略」と題して講演した。概要は次のとおり。
中国は、この数年で、GDPで日本を追い越したが、10年経てば日本をはるかに凌駕する大国になるだろう。日本には戦略をもった外交が必要である。
日本が外交戦略を立案するうえで必要な手立ては四つある。一つ目は、内閣に外交戦略を立案する仕組みを構築することである。アメリカでは国家安全保障会議事務局がその機能を担っているが、日本でもプロフェッショナルの国家安全保障会議事務局をつくるべきである。二つ目は、政治と官僚が役割分担し、各国との間で十分信頼されるチャネルを確立することである。三つ目は、防衛費、政府開発援助や国際的な知的交流など戦略の手立てとなる予算を拡充することである。四つ目は、集団的自衛権の行使に関する憲法解釈を見直し、PKO活動等に制約がかからないようにすることである。
では日本がとるべき外交戦略は何か。特に東アジアで中国と建設的に向き合う戦略が必要である。その基本は分野ごと、機能ごとに組み合わせが異なる国々の枠組みを用いる「多層的機能主義」である。安全保障面では日米安保体制の強化、特に自衛隊の役割を拡大し、沖縄の基地負担の軽減につなげていかなければならない。また韓国、豪州、インド、インドネシア、ベトナムなどとの「戦略的パートナーシップ」を強化しなければならない。さらに、日米中の信頼醸成の枠組みを構築するとともに、中国との間では自然災害救援活動などを通じて信頼関係を醸成しなければならない。
経済分野では、東アジアを“面”としたマーケットとするため、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)や日中韓FTA交渉と同時並行でTPP(環太平洋経済連携協定)のルールづくりに参加する必要がある。エネルギー分野では、東アジア・サミットの場を活用して、エネルギーに関する地域協力のプロジェクトを進めることが求められる。
政治・安保と経済が密接に結び付いている今日、経済界は外交について積極的に発言してほしい。
【総務本部】