Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年5月16日 No.3130  「新型インフルエンザの特性および政府対策の現状」についての説明会を開催 -国民生活委員会

説明する新型インフルエンザ等
対策有識者会議の尾身会長

経団連の国民生活委員会(川合正矩共同委員長・木村惠司共同委員長)は4月26日、東京・大手町の経団連会館で新型インフルエンザ等対策有識者会議の尾身茂会長、内閣官房新型インフルエンザ等対策室の担当官を招き、説明会を開催した。同会合は、H7N9型鳥インフルエンザの中国での感染拡大を受け、新型インフルエンザの特性および政府対策の現状について理解を深めることを目的としたもの。

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はじめに、尾身氏から、「インフルエンザウイルスはA型、B型、C型があるが、そのうちA型のウイルスは、144種類の亜型が存在し、高病原性や低病原性のウイルスが存在するなど、その特性はさまざまである。また、A型は人間や豚、鳥といった人畜に共通する感染症であり、パンデミックへとつながる可能性があるため注意が必要なウイルスである」との認識が示された。

続いて、現在、ヒトへの感染が確認されているH7N9型鳥インフルエンザウイルスの特徴として(1)鳥の間での感染は低病原性であり、鳥が感染しても死ぬことはないため感染地域の特定が困難である(2)鳥からヒトへの感染では、これまで注目されていたH5N1型の高病原性ウイルスと比べるとヒトに感染しやすい可能性があり、報告された症例のうち感染しても無症状である不顕性感染が存在する可能性があるため、実際の感染者数は報告された発症者よりも多いと考えられる(3)ヒトからヒトへの持続的な感染は今のところ証拠がないの3点があげられる――との説明があった。また、「今回のH7N9型鳥インフルエンザウイルスは、09年に流行した豚由来の新型インフルエンザ(H1N1型)流行の時とは異なり、誰も免疫がないため、ヒトからヒトへの持続的な感染が起こった場合、09年の被害よりも影響が大きくなる可能性がある。また、台湾で発生した患者は、家禽類との接触はなかったと報告されており、ヒトからヒトへの限局的な感染が起こっている可能性も否定できない」との見解が示された。

最後に、「今回の感染は終息に向かう可能性もあるが、ヒトからヒトへの持続的な感染が起きる可能性もあり得るため、最悪の可能性も視野に入れて準備を行う必要がある」との考えが示された。

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意見交換では、「中国の駐在員に対して、現段階で何か準備しておくべきことはあるか」との質問に対し、「熱があった場合は、会社への報告とあわせて必ず大使館などに連絡し、専門家に診断してもらうよう徹底すべき」との見解が示された。

また、新型インフルエンザ等対策特別措置法に関する意見交換では、内閣官房から、「ワクチンは、ヒトからヒトへの持続的な感染に変異した場合に、ワクチン株を特定してから製造に着手する。09年に発生した新型インフルエンザの実績でも、発生からワクチン供給までには約半年かかった。ただし、わが国では、治療薬として国民の45%相当の十分な量の抗インフルエンザ薬を備蓄している。加えて、現在、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく『政府行動計画(案)』をパブリックコメントに付しており、新型インフルエンザ等が発生した場合に、病原性等に応じて実施される対策(施設閉鎖や外出自粛の要請など)の運用について記載している。今後、実際に発生した新型インフルエンザ等の実情を踏まえ、柔軟に対策を講じていく。また、政府行動計画は、最新の知見等を踏まえて適宜見直しを図っていく」との考えが示された。

【経済政策本部】