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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2013年5月23日 No.3131 提言「職務発明の法人帰属をあらためて求める」を公表 -職務発明制度見直しの必要性などを指摘

経団連は14日、提言「職務発明の法人帰属をあらためて求める」を公表した。提言は、政府が6月に取りまとめる成長戦略の策定を視野に、現在、民間企業の研究開発投資に対する制約となっている職務発明制度について、見直しの必要性と法人帰属化の重要性を指摘したもの。なお、政府が近く取りまとめる「知的財産政策ビジョン」では、法人帰属が今後の方向性の一つとして示される見通しである。提言の概要は次のとおり。

1.わが国の職務発明制度の現状

職務発明については、特許を受ける権利を原始的に企業に帰属させる、いわゆる法人帰属としている国が大半である。また、発明に関し、従業者への報酬を法的に義務付けている場合でも、あらかじめ契約等で定めている報奨を支払う程度にとどまるため、企業にとっての予見可能性は確保されている。

一方、わが国では、職務発明にかかる特許を受ける権利は原始的に従業者に帰属し、企業に譲渡される。その際、従業者は事業化によって生じた利益まで勘案した特許権の財産的な価値を「相当の対価」として企業に請求することができる。さらに、この「相当の対価」の妥当性については裁判所で争える。企業が長期にわたってリスクを抱えることとなるこうした制度は、国際競争上も不利であり、海外企業とのオープンイノベーションや事業再編等を行う際の支障となっている。

2.わが国職務発明制度の改正の方向性

職務発明は、従業者が企業の有する設備や情報を活用し、職務として行った業務の結果発生するものである。さらに事業化に至るまでは、発明者以外の他の従業者の貢献が不可欠である。こうしたなか、発明者のみが「対価」を請求できる現在の枠組みは、従業者間の不公平感の醸成にもつながりかねない。

そこでわれわれは、わが国の職務発明を法人帰属とすることを提案している。法人帰属化により、発明者への「対価」の支払いは法的義務ではなくなるが、企業にとって極めて重要な意味を有する職務発明の奨励に引き続き努めることは当然であり、むしろ企業が自らの創意工夫によって、発明者を含めたすべての従業者のインセンティブ施策を充実させる契機となる。

なお、職務発明規定を廃止し、米国のように、雇用契約に規定する報酬のみ認める制度とすべきとの主張もあるが、職務の内容、報酬や職務発明にかかる権利の帰属等が雇用契約のなかで明確となっている米国とわが国の状況は異なっており、こうした契約を個々の従業者と取り交わすことは容易でない。

3.職務発明の法人帰属への改正を成長戦略に

産業競争力強化に向けて、わが国企業がイノベーションのフロントランナーとなるためには、世界最高水準のビジネス環境整備が必要である。そのための重要な制度改革の一つとして、成長戦略に職務発明の法人帰属化を盛り込むことを強く求めるとともに、従業者のモチベーション向上に資する施策についても検討を深めていく。

【産業技術本部】

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