経団連・経団連事業サービス主催、経営法曹会議協賛による「第109回経団連労働法フォーラム」が11、12の両日、都内のホテルで開催され、(前号既報)(1)裁判例を踏まえた労働時間管理の実務(1日目)(2)労働契約の終了をめぐる法律上の留意点(2日目)について報告・検討が行われた。
1日目の報告の概要は次のとおり。
■ 労働時間の把握義務および認定について
労働基準法において、労働時間、休日、深夜業等について規定が設けられていることや、過重労働による健康障害防止の観点から、使用者は、労働者の労働時間を適切に管理する責務を有している。また、労働時間把握の具体的方法として通達では使用者の現認やタイムカード・ICカード等の客観的記録が原則とされ、自己申告制が例外的に認められている。
賃金請求等の紛争が生じた場合、実労働時間が争点となる。裁判所は、労働者の実証のハードルを下げ、使用者側に積極的な反証を求める傾向があるとともに実労働時間の認定において、タイムカードの打刻やメール送信の時刻等の証拠を重視する。
■ 管理監督者性の判断
管理監督者とは、労働基準法第41条2号のとおり、重要な職務と責任を有し、労働時間等の法規制の枠をはめるのが適切でない立場にある者で、職務内容・責任権限、勤務態様、待遇に照らしたうえで、実態に基づいて判断される。最近の裁判例では、まず職務内容と責任権限が、管理監督者性を肯定するための必要条件であるとされ、そのなかでも、地位、経営事項の決定への関与の機会・程度、業務遂行・職務内容における権限・裁量等が大きな考慮要素とされる。
■ 労働時間管理の実務的留意点
労働時間の把握について、使用者は、労働者に正しく始終業時刻を記録するよう指導することや、在社時間と始終業時刻を比較し、乖離の有無およびその理由をチェックする等の実態調査を行うことが求められる。
また時間外労働をさせる場合、使用者が労働者の時間外労働を認識していた、あるいは認識できたことをもって、「黙示の指示」を肯定し、労働時間を認定する傾向にある。労働時間は使用者の指揮命令下で労務提供する時間であり、時間外労働は使用者が命じて行わせるものであることから、労働者に勝手に時間外労働をする権利はないことを認識させ、時間外労働等を自己決定させないことが必要である。
自主活動の取り扱いは、労働時間か否かの明確な線引きは困難であるため、業務との関連性・必要性を鑑みた対応が必要である。
■ 労働基準監督署への対応について
労働基準監督署に対応する際のポイントは、法違反があるか否かを見極めたうえ、法違反がなければ、時間をかけて対応し都道府県労働局(監督課の監察監督官)へ直接相談することもある。また是正勧告を受けた場合は、是正報告書を提出する前に労働基準監督署へ確認・相談することである。
<質疑応答>
参加者からの質問を受け、「会社の携帯電話を持たせても、常時連絡や命令ができなければ、事業場外みなし時間の対象となる」「就業場所から事務所への私用車での移動は、事務所が就業場所でなければ、労働時間と認定されない」等、実務的な対応策について弁護士らによる活発な討論が行われた。
【労働法制本部】