1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2014年1月9日 No.3161
  5. 「成長への道」テーマに説明を聞く

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2014年1月9日 No.3161 「成長への道」テーマに説明を聞く -早稲田大学商学学術院の谷内教授から/経済政策委員会

経団連の経済政策委員会(岡本圀衞委員長、上釜健宏共同委員長)は12月20日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、早稲田大学商学学術院の谷内満教授から「成長への道」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

1.経済成長と成長政策

日本は今後、急速な高齢化の進行とともに、生産年齢人口が大幅に減少する。そのなかで高齢者を支えるためにはより高い所得が必要となるが、日本は欧米の先進国と比較して成長率と生産性で見劣りしている。

経済成長理論によれば、長期成長の決定要因は生産性と資本と労働である。したがって、成長政策はサプライサイドに働きかける必要がある。日本の経済活動の中心は民間企業であり、その創意工夫と競争が生産性と資本の量・質の向上をもたらす。規制緩和を中心とした成長政策を通じて、民間企業の活発な活動を促進することが重要である。

2.農業と雇用における規制緩和

世界のどこでも規制・保護に守られた産業は衰退する。日本の農業はそれに当たり、株式会社の参入規制をはじめとするさまざまな規制・保護が存在する。しかし、もともと日本の農業は潜在力を持つ分野である。農業生産法人の要件緩和など大胆な規制改革で、農業が再生する可能性は高い。また、TPP(環太平洋経済連携協定)が成立すれば、農業改革の起爆剤となるだろう。

労働市場も規制が強い分野である。日本は欧米諸国と比較して、企業の業績不振による解雇を厳しく規制している点が特徴だ。産業・企業には浮き沈みがある以上、それに伴って雇用も移動する必要がある。弾力的な労働市場を創造できれば、さまざまな働き方が可能となる。高齢者や女性の労働参加率を押し上げることなどを通じて、長期成長の引き上げに貢献するだろう。

超高齢化社会において労働力を増やすには、上記の政策に加え、生涯現役社会をつくることが欠かせない。そのためには、年金支給開始年齢を70歳まで引き上げるとともに、定年制を廃止し、年齢にかかわりなく働き続ける仕組みを整備することが必要となる。定年がなくなれば、年功序列賃金が弱まり、労働市場は一層弾力的になるだろう。

3.法人税減税の効果

法人税減税も企業の活発な活動を促進するうえで、重要な選択肢となる。法人税と成長の関係に関する複数の研究によれば、法人税率の負担軽減は投資、生産性、起業活動を高め、その結果成長を促進する。法人税減税には、大企業や金持ち優遇という声もある。しかし、成長が高まれば長期的に賃金も増加し、また株投資をしていない人も間接的に株を保有しているので、減税の効果は幅広く国民に裨益することに留意すべきだ。

【経済政策本部】

「2014年1月9日 No.3161」一覧はこちら