経団連は12月12日、東京・大手町の経団連会館で中堅・中小企業委員会(高原豪久委員長)を開催した。当日は東京大学大学院情報学環の佐藤博樹教授から、中堅・中小企業が女性の活躍推進を図っていくうえでの課題や留意点について聞いた。佐藤教授の講演の概要は次のとおり。
■ ワーク・ライフ・バランスと雇用機会均等の関係
女性の定着率と管理職の数は、ワーク・ライフ・バランス(WLB)支援と均等支援施策の充実度合いに影響を受ける。例えば、WLB施策は充実しているものの均等施策が不十分な企業は、継続就労がしやすいため、定着率は高くなる。しかし、男女で職域が分離され、女性は補助的な業務を担うことが多くなり、結果的に女性の管理職が育たない。他方で、WLB支援は不十分だが均等施策が充実している企業では、職域分離がなく、女性の管理職比率は高いが、男性と同じように働ける人しか活躍できないため、女性の定着率は低くなる。
女性の管理職を増やす方法としては中途採用もあるが、社内育成を前提とした場合、課長就任までに一定の勤続年数と求められる能力要件の獲得が必要なことを踏まえれば、就業継続のための両立支援と能力開発機会の提供を含めた均等施策の同時推進が不可欠となる。
その際、両立支援に関しては、過度に「制度」に依存すると、かえって均等を疎外する要因になりかねないことに留意が必要である。普通に働ける環境の整備が重要であり、法定どおりの制度でも十分といえる。
■ 女性管理職拡大のために取り組むべき事項
まず、自社の現状把握が求められる。女性管理職が増えない要因が両立支援と均等支援のどちらにあり、どの段階(採用段階、初任配属先、入社15年目等)で問題が発生しているのかを明確にする必要がある。具体的には、採用における応募、第一次選考、内定などの各段階での男女構成の隔たりの有無や、初任配属先での能力開発機会の均等の実現状況、課長になる直前の資格や役職に到達するまでに経験する業務に男女差があるかなどを確認し、明らかとなった問題を一つ一つ解決していくことが求められる。
また、キャリア形成の観点からは、特に初任配属先における、直属上司による男女差のない能力開発機会の提供と成功体験の付与が重要となることから、ライン管理職のマネジメント能力の向上が課題となる。
【産業政策本部、労働政策本部】