経団連(米倉弘昌会長)は18日、提言「企業間のBCP/BCM連携の強化に向けて」を公表した。同日、防災に関する委員会の橋本孝之共同委員長、柄澤康喜共同委員長が古屋圭司内閣府特命担当大臣(防災)を訪問し、提言を手交。防災・減災対策の一層の推進を求めた。
経団連では東日本大震災以降、2012年3月に提言「災害に強い経済社会の構築に向けて」、13年2月に提言「企業の事業活動の継続性強化に向けて」を取りまとめ、防災・減災にかかる検討を深め、会員企業や行政等、各方面へ積極的に働きかけてきた。このような取り組みを通じ、個別企業のBCP(事業継続計画・Business Continuity Plan)/BCM(事業継続マネジメント・Business Continuity Management)は一定の機能を発揮し、着実に進展している一方で、企業間の連携が必ずしも充分でないことが課題として浮き彫りとなった。今後首都直下地震や南海トラフ巨大地震等、広域かつ甚大な巨大災害の発生が予期されるなか、企業間のBCP/BCM連携を着実に進めることが重要となる。
そこで、今般、「サプライチェーンを構成する企業間」「地域内」「業界内」という三つのカテゴリーにおけるBCP/BCMの連携強化に焦点を当て、課題を整理したうえで、「企業・経済界に求められる取り組み」と「行政に求められる取り組み」の二つの観点から、それぞれの主体に求められる取り組みを示した。概要は次のとおり。
1.企業に求められる取り組み
(1)サプライチェーンを構成する企業間の連携
IT等を活用することにより、自社およびパートナーの情報を可視化することが重要である。また、災害時に優先して復旧すべき品目を明確化したうえで、取引先とも情報共有すること等も必要となる。(2)地域内連携
地域内連携を進めるため、地域協議会の活用や地区全体での共同訓練、自治体との連携協定の締結等が求められる。(3)業界内連携
業界内連携に向け、業界としてのBCP/BCMに関するガイドライン等の策定、合同訓練の実施、そして競争に直結しない部品等の標準化の検討等が求められる。
なお、提言では、三つのカテゴリーごとに、企業や団体の約50の先進的な取り組み事例を紹介している。各社・各業界において、これらの先進事例を参考に、すでに実施している取り組みを今一度見直し、事業活動の継続性強化に向けた連携の推進が期待される。
2.行政に求められる取り組み
(1)サプライチェーンを構成する企業間の連携への支援
サプライチェーンを構成する企業間連携を円滑に進めるためには、中小企業に対するBCP/BCMの策定支援や中小企業が取り組むべきBCP/BCMの基本要素の抽出が必要である。(2)地域内連携への支援
地域内連携では、自治体と企業との連携協定等の締結促進、備蓄倉庫や非常用電源の整備に対する支援等が求められる。(3)業界内連携への支援
業界としてのBCP/BCMの策定に際し、必要に応じて、政府等が関与・調整すること、競争に直結しない部品等について共通規格化を推進すること等が期待される。(4)各種連携にかかわる横断的な支援
国民全体への防災教育・啓発を含めたリスクコミュニケーションの徹底、防災・減災にかかる各種法規制の緩和、政府・自治体の有する防災・減災にかかる情報のオープン・データ化の推進、わが国の防災技術・ノウハウを国際社会に発信し、官民一体で海外に提供すること等が求められる。
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企業間のBCP/BCM連携の強化は、防災・減災対策にとどまらず、わが国経済社会の競争力強化にも資する。こうした認識のもと、経団連は引き続き、企業間連携による事業活動の継続性強化の取り組みを積極的に推進していく。その一環として、経団連の「企業行動憲章」ならびに「実行の手引き」の見直しの際に、防災・減災への積極的な取り組みを追加する予定である。
【政治社会本部】